オーストラリア企業Vowがシンガポール食品庁(SFA)から培養肉の販売認可を得たことで、今月12日から27日までシンガポールのレストラン「MORI」で、Vowの培養ウズラ肉を使用したフルコース料理が提供されている。
この度、ついに培養肉を食べることができたのでその感想をお届けする。
シンガポールで培養ウズラ肉を実食
レストラン「MORI」は、チャイナタウン近くに位置するMandala Clubの3階にあった。エレベーターに乗ると、壁に「Forged Parfait」の広告が目に入ってきて、いよいよかとドキドキしてくる。
「MORI」はこじんまりした空間で、U字型のカウンターにネームプレートが並んでいる。入口ではVowのスタッフが迎えてくれ、開始までの間、談話しながら過ごした。
提供されたのは、お任せの7つのメニューからなるコース料理。このうち、4つのメニューに、培養ウズラ肉をムース状にした「Forged Parfait」が使用されていたので、順に紹介する。
1品目の培養ウズラ料理は、「Forged Parfait」を最中で挟んだもの。最中とセットで食べるものだが、「Forged Parfait」だけを味わえるように、シェフがスプーンにムースを添えてくれた。
「Forged Parfait」は培養ウズラ肉と共に、バターなどで仕上げたムースで、独特の程よい臭みのある香りがする。ウズラ肉はこんな香りがするのかと思いながら口にすると、これまた独特の香りが口の中に広がった。ウズラ肉を食べたことはないが、とにかく美味しかった。
2品目は、カンノーロに「Forged Parfait」が包まれたもの。カンノーロとは筒状の菓子で、イタリア発祥の菓子だということを後で知る。甘いカンノーロの中に「Forged Parfait」が詰まっていて、不思議なことに合う。キャビアもいただいた。
3品目は、パン、和牛の上に「Forged Parfait」を添えた和牛サンド。
一緒に食べるのがもったいなくてムースだけ食べようとすると、崩れてしまうそうだったので、一緒に食べてみた。「Forged Parfait」が良いアクセントになっていた。
4品目は、クリームブリュレを思わせるForged Brûlée。これを一番楽しみにしていた。
次の料理を提供する間、カウンターからシェフが準備する様子を眺めることができる。丸い器に砂糖をのせたものが並べられていた。クリームブリュレのように、表面は砂糖を焦がすらしい。見た目だけでなく、砂糖まで同じなのかと思ってみていると、VowのシェフAdem Kurcan氏が実に鮮やかにバーナーで表面を焦がしていく。
あっという間に、プレスリリースで見たForged Brûléeが自分の目の前に置かれた。
砂糖と培養ウズラ肉、果たして合うのだろうか?とスプーンで表面を割って食べてみると、違和感のなさに驚いた。クリームブリュレは甘さがうるすぎるのかもしれないと思った。ブリュレはこの組み合わせの方がいいのかもしれない。見事な調和だった。「Forged Parfait」が一番気に入った。
新しい食体験
今回のフルコースメニューで使用された培養ウズラ肉は、すべて「Forged Parfait」を使用していた。構造化された肉ではなく、ムース状の製品だ。
Vowは「Forged Parfait」について、「濃厚な旨味と重さを感じさせない、とろけるような食感」と表現している。Vowの表現する通りだと思った。
Vowのメニューをいただきながら、培養肉の普及を進めるうえで、Vowのやり方はさまざまな点で巧みだと思った。培養ウズラ肉は普段食べないので、食べながら既存肉と比較することはない。珍しく、新しい食体験は新鮮な体験になる。ムース状で提供することで、構造化された肉を作る課題も回避できる。
今回食べたVowの培養ウズラは、オーストラリアで製造されたもの。シンガポールで今後、新しい2製品で認可を取得する予定だという。今後、ウズラ肉以外も食べられる機会が増えるだろう。オーストラリアで承認プロセスが進行中だが、香港でも認可を目指していることを教えてもらった。
「Forged Parfait」は今月27日までシンガポールで提供される(予約サイト)。
最後に:
一人で参加したが、隣の人や他の参加者と話したり、スタッフが話しかけてくれたり、終始、アットホームな雰囲気の中、人生初の培養肉をいただくことができ、とても楽しい体験だった。
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アイキャッチ画像:Foovo(佐藤)撮影