マイコプロテインを開発する米The Better Meat Co.が今月12日、アメリカ食品医薬品局(FDA)から同社マイコプロテイン「Rhiza」に対し「異議なし」のレターを受領し、GRAS認証を取得したことを発表した。
これは、FDAが審査した結果、「Rhiza」には安全性の問題がないと判断されたことを意味する。同社はこれまでGRAS自己認証を宣言し、一部レストランなどで自社マイコプロテインを提供してきたが、FDAからのお墨付きとなるGRAS認証を取得したことで市場投入をさらに加速していくと予想される。
同社共同創業者のPaul Shapiro氏によると、同社マイコプロテインは、動物肉や家禽製品にブレンドして使用する成分としてUSDA(アメリカ農務省)から初めて適切かつ安全だと認めたものだという。
Foovoの認識では、The Better Meat Co.はマイコプロテインでGRAS認証を取得した4社目の企業となる。
The Better Meat Co.がGRAS認証を取得
The Better Meat Co.のマイコプロテイン「Rhiza」は、食肉、家禽類、魚介類、および代替品としての食肉、家禽類、魚介類、乳製品にタンパク質源・原料として最大90%使用することを想定している。
GRAS通知(GRN 1117)によると、代替肉の使用では、「Rhiza」を30-90%の範囲で使用することが推奨されている。動物肉を部分的に置き換えることを目的とする肉増量剤( meat extenders)として使用する場合は、10-50%の範囲で使用することが推奨されている(GRAS 1117 p15)。
「Rhiza」はミルク、チーズ、クリームチーズ、コーヒークリーマー、ヨーグルトなど代替乳製品としても使用でき、この場合は最大15%での使用が推奨されている(GRAS 1117 p18)。
同社は「Rhiza」について、タンパク質単離物ではなく全バイオマス成分のため、大豆、小麦、エンドウ豆などを使用した植物肉とは一線を画しているとGRASの中で述べている(GRAS 1117 p15)。
「Rhiza」は100g中タンパク質を45.27g、カルシウムを57.2mg含み、体内での消化・利用のしやすさを示すPDCAAS(たんぱく質消化性補正アミノ酸スコア)は0.91と、カゼイン、ホエイ、卵などに近い数値となる(GRAS 1117 p9,11)。
植物タンパク質からマイコプロテインへ
The Better Meat Co.は「クリーンミート」の著者で知られるPaul Shapiro氏が2018年に設立したスタートアップ。初期では植物タンパク質を開発していたが、その後、Neurospora crassaを使用したマイコプロテイン「Rhiza」の開発へとシフトした。
Perdue FarmsがThe Better Meat Co.の植物タンパク質を肉増量剤として使用したハイブリッド製品は、現在も7,000箇所のスーパーで販売されている。
植物タンパク質と比較して、「Rhiza」の提供はまだ限定的といえる。
「Rhiza」は現在、カリフォルニア州サクラメントのプラントベースレストランBuddha Belly Burgerで代替ステーキとして提供されている。
2022年9月にはリンクトイン本社で代替フォアグラ、代替ターキーハムを1週間限定で提供。同年12月にも、カリフォルニア州の高級フランス料理店RÊVE Bistroで代替フォアグラを期間限定で提供した。
The Better Meat Co.は2021年から約3年、同じくNeurospora crassaを使用する米Meatiから企業秘密盗用の疑いで特許訴訟を起こされていたが、今年6月にThe Better Meat Co.の主張がほぼ認められる形で終結した。
企業活動の妨げとなる訴訟の終結、先月には全体で30%以上のコスト削減を発表したこと、今回のGRAS認証取得により、今後さらに市場投入を進めていくだろう。
米国におけるマイコプロテイン企業・販売認可状況まとめ
Foovoの調査では、マイコプロテイン・菌糸体バイオマスの開発に取り組む企業は国内外で55社確認されており、近年、企業数が急増している。
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アイキャッチ画像の出典:The Better Meat Co.