アップサイクル

捨てるはずのコーヒーかすでキノコ栽培|ヘルシンキノコが提案する気軽なサステナブルへの第一歩

 

コーヒー愛好家として、日々発生するコーヒーかすを有効活用できればと考えていた。

1日に飲むコーヒー量は最大5杯程度が良いとされているが、コーヒーかすは通常廃棄されて埋立地に送られる。その際、分解過程で二酸化炭素の約28倍の温室効果を持つメタンが生成されるため、環境への負荷が問題視されている。

今月12日に東京で開催された「Future Food Connect 2024」で、ヘルシンキノコプロジェクトを統括する宮垣真由子氏が、コーヒーかすを活用してキノコを栽培するキットを紹介した。このキットはカフェや家庭でも手軽にコーヒーかすをアップサイクルできるツールとなる。

このキノコ栽培キットを開発したのは、2016年にフィンランドで設立されたHelsieni(ヘルシエニ)。

Helsieniは、コーヒーかすに豊富に含まれるセルロースがキノコの栄養源になることに着目。さらに、コーヒーかすは熱湯を通すことで消毒された状態であり、湿度も十分に保たれているため、キノコ栽培に適した土壌環境となる。

出典:ヘルシンキノコ

使用するコーヒーかすは12時間未満の湿った状態のモノを使用。キットの中にはフィルター付きのままコーヒーかすを入れられる。5日間ほどでコーヒーの粉が白い菌糸で覆われる。このタイミングで新たなコーヒーかすを追加する

宮垣氏によると、1回の収穫までに約30杯分のコーヒーかすを活用できるという。公式サイトによると、キノコが成長すると、栽培キットの穴からキノコが生えてくる。ヒラタケは5~7日ほどで収穫できるという。

HelsieniはフィンランドでB2CおよびD2Cの栽培キットを販売し、B2Bの都市ファームを稼働している。販売されている栽培キットは複数種あり、都市ファームは地元の食品産業と連携したキノコ栽培を実現している。

宮垣真由子氏 出典:Future Food Connect 2024

2019年に日本市場向けのプロジェクト「ヘルシンキノコ」が始動、昨年日本市場に進出した。宮垣氏は、今年度中に日本支社の設立を予定していると述べた。

このプロジェクトの対象は、コーヒーかすを有効活用したい個人、都市部でガーデニングを楽しむ愛好家、さらには北欧文化に関心のある層となる。

ヘルシンキノコはすでに日本国内のカフェ6店舗やオフィス2箇所に導入され、販売数も順調に伸ばしている。今後は、B2C向けの容器付きの栽培キットや、B2B向けの大容量キットの製作を進める。長期的には都市ファームを稼働させ、飲食店からコーヒーかすを回収してキノコを栽培し、それをレストランに提供する循環型経済の構築を目指している。

出典:ヘルシンキノコ Instagram

宮垣氏によると、日本国内で廃棄されるコーヒーかす量は年約84万トンに上り、その処理費用は毎年約258億円にも及ぶという。ヘルシンキノコの栽培キットは、これまで捨てるしかなかったコーヒーかすに新たな価値を見出し、個人でも家庭で気軽にキノコを栽培できる商品となっている。

今後、ヘルシンキノコは日本国内での事業展開を加速させるため、ポップアップイベントへの出展機会を探っている。使用済みのプラスチック容器を提供してくれるパートナーを募集しており、これにより廃棄物をさらに削減し、持続可能な事業運営を目指している。

現在、キットに使用する菌糸はフィンランドから輸送されているが、今後は国内のキノコ農家と連携し、よりローカライズした栽培キットの提供を目指している。

コーヒーかすをアップサイクルする例としては、コーヒー副産物からファウンデーション、マスカラなどパーソナルケア製品向け原料を開発・販売するKaffe Buenoがある。同社は現在、主にパーソナルケ業界に焦点をあてているが、将来的には人間・動物の栄養分野にも焦点をあてていく予定である

 

ヘルシンキノコ公式サイトhttps://www.helsieni.fi/en/helsinkinoko/

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:ヘルシンキノコ

 

関連記事

  1. 二酸化炭素、電気から乳タンパク質の生成へ|ソーラーフーズの新たな…
  2. 【参加レポート】第34回食品開発展2023年10月@東京
  3. 米NovoNutrients、牛タンパク質と同品質のCO2由来タ…
  4. 高級培養肉Orbillion Bioが日本初登壇|Food-Te…
  5. オランダ小売大手Albert Heijn、植物性タンパク質47%…
  6. 【現地レポ】シンガポール・スーパーマーケットでの精密発酵食品の販…
  7. 精密発酵レポート好評販売中(2022年版)
  8. フランスのVital Meat、初の培養肉試食会をシンガポールで…

おすすめ記事

カーギルがマイコプロテインの英ENOUGHと販売契約を締結

カーギルは今月、マイコプロテインを開発する英ENOUGHとの提携拡大を発表した。…

培養ロブスターを開発する米Cultured Decadenceが約1億7000万円を調達、州政府による細胞農業企業への初出資

細胞農業スタートアップのCultured Decadenceがプレシードで160…

イスラエルの培養肉企業Steakholder Foods、バイオ3Dプリンターの商用化に向けて加速

イスラエルの培養肉企業Steakholder Foods(旧称MeaTech)は…

酵母クリームのCultivated Biosciences、2025年の米国進出に向けて約7.3億円を調達

代替乳製品の食感を改善するために酵母由来の脂肪成分を開発するスイス企業Culti…

中国代替肉企業Hey MaetがプレシリーズAで数百万ドルを資金調達

コロナ後に誕生した中国発の代替肉スタートアップ企業Hey Maetが再び資金調達…

中国企業HaoFoodのピーナッツを原料とする代替肉が上海レストランで販売開始

上海を拠点とする代替鶏肉スタートアップHaoFoodが上海のレストランと代替肉の…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/14 15:36時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/14 01:44時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/14 05:35時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/13 21:39時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/14 13:38時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/14 00:49時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP