スウェーデン企業Melt&Marbleは今月、精密発酵による代替脂肪の発酵プロセスを1万リットル以上にまでスケールアップし、デモ運転で大量の脂肪生産に成功したと発表した。
バイオリアクターの容量を10倍以上に拡張しても、バイオプロセスの性能が維持され、プロセスの拡張性・堅牢性が実証されたと同社は述べている。
Melt&Marbleは今年7月、昨年欧州イノベーション会議(EIC)が発表したアクセラレータープログラムにおいて、969社の応募の中から厳しい選考を経て選ばれた68社の1社となった。
EUからの276万ユーロ(約4億3,800万円)の助成金を得て、代替肉用の代替脂肪「MeatyMarble」に加え、乳製品やベーカリー向けの代替乳脂肪「DairyMarble」の商用化を加速させる計画を進めている。最初の製品は「MeatyMarble」となる予定で、2025年にアメリカでの市場投入を目指している。
Melt&Marble、精密発酵脂肪のデモ生産に成功
2014年に設立されたMelt&Marbleは、肉や乳製品においてジューシーさや風味など重要な働きをする脂肪を、より持続可能かつ美味しく再現することに取り組んできた。
同社は酵母細胞の代謝を工学的に制御し、酵母が天然の糖を脂肪に変換することを可能にしている。さらに、特殊な酵素を使用して鎖の長さや飽和度など、脂肪の構造と特性を指定することで、特定の用途に合わせた脂肪のカスタマイズ、新しい特性を持つ脂肪の設計などが可能になるとしている。
2022年5月、Melt&Marbleは牛脂の特性を備えた精密発酵脂肪の試作品を発表した。
今年3月にはパイロットスケールのバイオリアクターを備えたヨーテボリの新本社へ移転し、代替肉用に動物油脂の特性を再現した固体脂肪のプロセスを立方メートル単位(1立方メートルは1,000L)にスケールアップすることに成功した。
この時の発表では、年内に1回あたり数百kgの脂肪生産が可能になり、2025年にはアメリカ市場進出を見据え、1回あたり数トンにスケールアップする可能性があるとしていた。今回の発表は、3月時点の10倍以上の規模でも、バイオプロセスの性能を維持できたことを意味しており、アメリカでの市場投入に向けてさらに前進したことになる。
微生物を使用した脂肪・油脂開発の広がり
Melt&Marbleの他にも、微生物を活用して脂肪を開発する企業は増えている。
以下のスライドでは、酵母や藻類など微生物を活用して脂肪を開発する企業をまとめている。
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アイキャッチ画像の出典:Melt&Marble