3Dプリンター

オーストリアのRevo Foods、世界最大の食品向け3Dプリンティング工場を開設|新製品のマイコプロテイン由来サーモンを発売

 

3Dプリンターで代替シーフードを開発するオーストリア企業Revo Foodsは1日、オーストリア、ウィーンに世界最大の食品向け3Dプリンティング工場を開設したと発表した

TASTE FACTORY」と呼ばれる同工場では、Revo Foodsが自社開発した3D構造化技術を活用し、「革新的な食感と新機能を備えた」3Dプリント食品が製造される。

本格稼働すると、月に60トンの生産が可能となり、「3Dプリンター技術を大規模に適用した世界初の工場」だと同社は述べている。

出典:Revo Foods

マイコプロテインをベースとした新製品の3Dプリンター製サーモン「THE FILET – Inspired by Salmon」がここで製造される最初の製品となり、今月よりオーストリアのスーパーマーケットREWEの500店舗以上販売される

Revo Foodsのオンラインショップで欧州全土に向けて販売され、11月からはスーパーマーケットINTERSPARでも取扱いが開始される

今回の発表は、今年5月に3Dプリンター技術とマイコプロテインを使用した代替タコ製品「The Kraken」を限定販売したニュースに続くものになる。

Revo Foods、食品向け3Dプリンティング工場を開設

出典:Revo Foods

2020年に当時、Legendary Vishとして事業を開始したRevo Foods(設立は2021年)は、3Dプリンティング技術により食品生産の変革に取り組んできた。

同社は昨年9月、3Dプリンティング技術とマイコプロテインを使用した第一世代の「THE FILET」を発売今回発表された製品は、マイコプロテインを使用した第二世代の製品になるという

製品中のマイコプロテインは32.8%で、大豆タンパク質、菜種タンパク質、ジャガイモタンパク質、キャノーラ油、微細藻類由来のDHA・EPAなどを含み、赤色を出す着色料にはβカロテンを使用している

100g、3.99ユーロ(約650円)で販売されている。

出典:Revo Foods

Revo Foodsが開発した3D構造化技術により、脂肪、タンパク質など2つの異なる材料を正確に組み合わせて、複雑な形状にしている。

従来の工業生産では、高温と高圧を伴うことが多く、最終製品の栄養成分に悪影響を及ぼしていた。これに対しRevo Foodsは、低温・低圧という、より穏やかな生産条件で作動する技術を開発したことで、より多くの微量栄養素を保持することが可能となったとしている。

Revo FoodsのCEO(最高経営責任者)Robin Simsa氏は、3D構造化技術により、「菌糸体などのシンプルだが栄養豊富な原料を使用して、全く新しい食感を作り出し、より魅力的な製品を作ることができます」と述べている。

昨年販売された第一世代の「THE FILET」は、スウェーデン企業Mycorena(倒産申請し、8月にNaplasolに買収された)のマイコプロテイン「Promyc」を3Dプリント用に最適化したものだった。今回の第二世代についてはプレスリリースで言及されていないが、Mycorenaとの共同研究の成果によるものだと考えられる。

次はパーソナライズ化された栄養イノベーション

出典:Revo Foods

今後の計画として、Revo Foods は2025年に発売予定の新製品の開発で大手食品メーカーと協業していることを明かしている。これには、消費者の個々のニーズを満たすパーソナライズ化された栄養分野でのイノベーションも含んでいるという。

同社のフードテック部門長のNiccolo Galizzi氏は、「3D構造化技術を使用することで、好みに応じて製品を設計できる可能性があります」と述べており、Revo Foodsは次のステップとして、環境問題への対応を超え、カスタマイズされた食品ソリューションを提供することで、食品業界に変革をもたらすことを目指している。

 

参考記事

World’s Largest 3D Food-Printing Facility opened in Vienna by Revo Foods

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Revo Foods

 

関連記事

  1. ドイツのThe Cultivated B、EFSAに向けた培養ソ…
  2. Biftekがシンガポールの培養肉企業へ最初の増殖培地サンプルを…
  3. 6つの豆タンパク質から代替魚を開発する米Good Catch、カ…
  4. New Cultureが世界で初めて精密発酵カゼインでGRAS自…
  5. 培養油脂のPeace of Meatと英ENOUGH、マイコプロ…
  6. 中国のJoes Future Foodが豚の培養脂肪のパイロット…
  7. 菌糸体由来肉のMeati Foodsが全米で販売開始、Sprou…
  8. 【創業者インタビュー】精密発酵でヒト母乳タンパク質を開発するPF…

おすすめ記事

【現地レポ】Perfect Dayの精密発酵乳タンパク質を使用したアイスクリーム実食レビュー@シンガポール

シンガポールでは2022年8月より、Coolhausブランドというアニマルフリー…

果物の廃棄物を活用して精密発酵脂肪を開発するZayt Bioscience

精密発酵で持続可能な脂肪を開発する企業が増えている。精密発酵により食品、脂肪、他…

Steakholder Foodsが台湾進出に向け、台湾の工業技術研究院と提携

独自の3Dプリンターで植物由来や細胞由来の代替肉・代替魚を開発するイスラエル企業…

分子農業スタートアップMiruku創業者に聞く「ベニバナによる乳製品生産の再構築」

植物を「ミニ工場」として特定成分を作る分子農業が注目されている。代替タン…

ブラジル初の培養脂肪企業Cellva Ingredientsが約2億円を調達

南米初の培養脂肪企業Cellva Ingredientsがシードラウンドで650…

材料毎に投入タイミングを制御するスマート調理ロボットOliver

ほかの料理の準備で焼きすぎてしまったり、ゆですぎてしまったり、料理には失敗がつき…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(04/18 15:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/19 00:47時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/19 04:45時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/18 21:00時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/18 13:05時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/19 00:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP