代替プロテイン

イスラエル発のChunk Foods、代替ステーキ肉で米国小売市場に参入

 

ホールカットの代替ステーキ肉を開発するイスラエル企業Chunk Foodsが、アメリカの小売進出を発表した

Chunk Foodsは、ロサンゼルスとニューヨークの独立系小売店に同社の4製品を導入する予定だ。今後はより多くの自然食品店やオーガニック食品店での販売やオンライン販売も計画されている

Chunk Foodsの代替ステーキ肉は、培養大豆タンパク質(脱脂大豆粉、大豆タンパク質単離物、グルテン)、水、ココナッツオイル、天然香料、ビート由来着色料、塩など少ない原材料を使用して作られている

同社の代替ステーキ肉は現在、カリフォルニア州のビーガンレストランThe Butcher’s Daughter、ペンジルベニア州のホテルHotel Fauchère、ニューヨーク州のレストランThyme Rooftop Grille、フロリダ州のアメリカンレストラン1000 NORTH、オレゴン州のコーヒーショップGreen Salmon Coffee Companyなど、全米の多くのレストラン・ホテルなどで提供されている

Chunk Foodsの導入状況(2024年10月30日時点) 出典:Chunk Foods

AgFunderの報道によるとスペイン、メキシコのレストランや、メキシコの一部小売店でも導入されているようだ。

今回小売導入が発表されたのは下記4製品

  • Steaks」:代替ステーキ2枚入り。約227gで希望小売価格は9.99ドル(約1530円)。
  • Steakhouse Cut」:約170gで希望小売価格は7.49ドル(約1140円)。
  • Slab」:約283gで希望小売価格は9.99ドル(約1530円)。
  • Pulled」:炒め物やサンドイッチ、サラダのトッピングとしても使えるプラントベースのプルドミート。約227gで希望小売価格は6.99ドル(約1070円)。

AgFunderの報道によると、レストランやホテルへ導入後、解約率はほぼゼロという高いリピート率を誇っているという。外食産業で高評価を得たことで、小売導入が進んだと思われる。

出典:Chunk Foods

大豆を使用した代替肉では大豆由来の異風味が問題とされる。Chunk Foodsの場合、大豆粉末を食品グレードの微生物で発酵させる独自の固体発酵プロセスにより、豆由来の風味を弱め、肉の風味をもたらしているという。

Chunk Foodsは自社プロセスについて公表していない。同社の出願特許によると、微生物としてAspergillus OryzaeAspergillus SojaeRhizopus OligosporusRhizopus OryzaeNeurospora Cressa(特許記載ママ:正しくはNeurospora Crassa)などが例として挙げられており、タンパク質繊維の表面に微生物を撒いて発酵反応を行わせているようである。

出典:WO2024/038375 A1(Protein-based meat analogs and methods of manufacture thereof)

特許によると具体的には、タンパク質繊維に微生物を撒いたものを束ねて束状にし、発酵ケースに入れて発酵させる。ケースから発酵物を取り出し、微生物を不活化し、脂肪や着色料、香料を含んだ液体を添加した後、最終形態にあわせてカットしている(上記フロー図)。

このプロセスが実際の製品に使用されているかは定かではないが、上記プロセスは、日本企業Agro Ludensの開発した米タンパク質に麹菌を撒いて固体培養するプロセスや、スイスの代替肉企業Planted特許出願しているプロセスなどと共通点があり、植物タンパク質と菌類を組み合わせた固体発酵による代替肉開発の動きが今後さらに広がっていく可能性がある。

 

参考記事

Chunk Foods Arrives in US Retail for 1st Time, Sets Prices Similar to Animal-Based Counterparts

Chunk Foods makes US retail debut with plant-based steaks

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Chunk Foods

 

関連記事

  1. 【現地レポ】Quornのマイコプロテインを食べてみた@シンガポー…
  2. 代替肉ビヨンドミートが初の海外工場となる中国生産施設をオープン
  3. SavorEatがパーソナライズ化された3Dプリント植物肉バーガ…
  4. カナダのTerra Bioindustries、ビール粕由来のタ…
  5. 世界初|スペインの乳製品メーカー、細胞農業による乳製品開発を支援…
  6. 米Matrix F.T.が独自マイクロキャリアで作成した培養鶏肉…
  7. ひよこ豆由来のタンパク質を開発するInnovoProが約3億円を…
  8. 独Nosh Biofoodsが赤身肉のようなマイコプロテインの開…

おすすめ記事

規格外・余剰農産物のB2B販売プラットフォームを提供するFull Harvestが約26億円を調達

規格外・余剰の農産物をB2Bで販売するプラットフォームを構築するFull Har…

xRoboticsのピザロボットがピザ店での試験運用を完了、800の予約注文を受注

ピザロボットを開発するxRobotics(エックスロボティクス)が、オックスフォ…

【創業者インタビュー】精密発酵でヒト母乳タンパク質を開発するPFx Biotech|健康と栄養に役立つ高価値タンパク質の創出

2022年に設立されたポルトガル企業PFx Biotechは、精密発酵によりラク…

精密発酵で天然着色料を開発するPhytolonがギンコ・バイオワークスと提携

サステイナブルな食用色素を開発するイスラエル企業Phytolonが、バイオテクノ…

植物の葉緑体を活用して成長因子を開発するBright Biotechが約4億円を調達

分子農業で培養肉用の成長因子を開発する英Bright Biotechはシードラウ…

【現地レポ】精密発酵CDMOのScaleUp Bioが最初のクライアント企業を発表、食品特化の施設でスケールアップを支援

食品に特化した精密発酵・液中発酵施設を開設して、スタートアップ企業の支援を目指す…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/22 15:42時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/23 01:51時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/22 05:38時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(08/22 21:45時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/22 13:40時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/23 00:56時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP