代替プロテイン

オーストラリアのAll G、中国本土で精密発酵ウシラクトフェリンの認可を取得

2024年11月26日、All Gより得られた回答を追記しました。

 

オーストラリアのAll G(旧称All G Foods)は25日、中国で精密発酵によるウシラクトフェリンの認可を取得したことを発表した

今回の認可は中国本土であるとAll Gは、Foovoに回答した。精密発酵ウシラクトフェリンが中国で認められるのはこれが初。

Inside FMCGが第一報を報じた。

All G、中国本土で精密発酵ウシラクトフェリンの認可を取得

出典:All G

All Gは精密発酵でカゼイン、ラクトフェリンを開発している。ラクトフェリンではウシ、ヒト両方の開発を手掛けており、2025年にウシラクトフェリン、2026年にヒトラクトフェリンの上市を目指している

創業者のJan Pacas氏は会社ブログで、「最初に市場に出すことよりも、長期的な視点を大切にしています。高品質なラクトフェリン、カゼインの開発には、時間と労力が必要であることを理解しており、その実現に全力を尽くしています」と述べ、消費者が満足する食感、風味、香り、機能性を備えた製品の開発に妥協なく取り組む姿勢を示している

酵母など微生物を「ミニ工場」として、動物に頼らずタンパク質など特定成分を生産する手法を精密発酵という。All Gのバイオプロセスでは10日間で、微生物が目的のタンパク質を分泌する。

精密発酵技術は、糖尿病治療薬ヒトインスリンの製造に1970年代後半から使われており、ヒトインスリンは1982年にアメリカで商用化された。精密発酵はまた、チーズを作るために必要な酵素であるキモシンの生成にも利用されている身近な技術だ

Foovoに送られたプレスリリースによると、ラクトフェリンは牛乳に含まれる主要なタンパク質だが、牛乳には少量しか含まれていない。ヒトの母乳にははるかに多く含まれており、免疫機能のサポート、腸機能の向上、鉄分の吸収促進、抗菌作用や抗炎症作用など、重要な役割を果たしている。

現在、ラクトフェリンの生産量は限られ、1kgあたり800ドルで販売されている。精密発酵で効率よくラクトフェリンを生成できれば、北米・アジアを中心に成長を続けるラクトフェリン市場の需要を満たすことができる。

同社は中国での認可取得により「10億人に次世代の栄養を届けるという目標に一歩近づきました」とコメントしている

精密発酵タンパク質ではアメリカ・シンガポールを目標とする国が多い。All Gはシンガポール、アメリカ、オーストラリア市場も目指しているとFoovoに述べた。

中国での認可を優先させた背景には、中国が巨大なラクトフェリン市場であること、中国・シンガポールはアメリカ・日本よりも母乳育児率大幅に低いことなどが関係しているかもしれない。

同じく精密発酵でウシラクトフェリンを開発するTurtleTreeは昨年11月、精密発酵ウシラクトフェリン「LF+」についてアメリカでGRAS自己認証を取得した。同社は最近、シンガポールのMAD Coffeeと提携し、2025年に「LF+」使用のコーヒーの上市を目指している

 

参考記事

Sydney startup All G cleared to sell fermented lactoferrin – without using cows

All GがFoovoに送付したプレスリリース

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:All G

 

関連記事

  1. 英培養肉企業Ivy Farmとバイオテック企業BSF Enter…
  2. 細胞培養によるカキを開発するアメリカ企業Pearlita Foo…
  3. イスラエルの培養肉Future Meatが世界初の培養肉生産施設…
  4. ファーストフードチェーンChipotleが代替油脂を開発する米Z…
  5. ビヨンドミートが中国で豚ひき肉Beyond Porkを期間限定で…
  6. 代替卵のイート・ジャストがアフリカ市場へ進出
  7. シンガポールの研究チームがウナギ細胞株と植物血清の開発に成功
  8. チリのNotCoが米国進出、全米のホールフーズで代替ミルクの販売…

おすすめ記事

イスラエル発のChunk Foods、代替ステーキ肉で米国小売市場に参入

ホールカットの代替ステーキ肉を開発するイスラエル企業Chunk Foodsが、ア…

マメ科植物の種子から植物性ホイップクリームを開発するANDFOODSが約4億円を調達

ニュージーランドのフードテック企業ANDFOODSは、マメ科植物の種子からアニマ…

韓国・慶尚北道、韓国初の培養肉研究センターの設立へ—2027年完成予定

2025年3月22日更新:当初の記事で培養肉が実際に提供された地域に”香港”が抜けておりましたので追…

機械学習でフードロス削減に取り組むFloWasteが約1億2400万円を調達

フードロス削減に取り組むFloWasteがシードラウンドで110万ドル(約1億2…

機械学習でタンパク質収量を増やす英Eden Bioが約1.6億円を調達、精密発酵の課題解決へ

機械学習を使用してタンパク質収量を増加させるイギリスのバイオテック企業Eden …

スピルリナ由来の代替スモークサーモンを開発するSimpliiGood

2024年8月13日修正・追記スピルリナを活用して代替タンパク質を開発す…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(04/18 15:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/19 00:47時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/19 04:45時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/18 21:00時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/18 13:05時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/19 00:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP