代替プロテイン

イスラエルのEver After Foodsがビューラーと提携、培養肉の大量生産を加速

 

イスラエルの培養肉企業Ever After Foodsは今月、培養肉の大量生産に向け、食品加工設備の世界的大手であるスイスのBühler(ビューラー)との提携を発表した

二社は、既存技術の10分の1の規模で商用生産が可能な培養肉生産システムの導入を目指す。

ビューラーは昨年12月、ミグロ、ジボダンと共同で、細胞農業食品のスケールアップを支援するThe Cultured Hubスイスに開設している。今回のEver After Foodsとの提携も、培養肉の大量生産を現実のものとするための具体的な取り組みの一つといえる。

Ever After Foodsが培養肉の大量生産に向けてBühlerと提携

出典:Ever After Foods

Ever After FoodsのCEO(最高経営責任者)であるEyal Rosenthal氏は、「培養肉業界は、製薬ベースの技術から脱却し、食品生産に特化したソリューションを採用する必要があります」と述べ、ビューラーとの戦略的提携は、培養肉生産者や食品企業に、製品を市場に投入するためのスケーラブルで効率的な技術を提供する重要なステップだと強調している。

Ever After Foodsは、親会社Pluriの技術を活用して培養肉の商業化を進めている

同社独自の技術プラットフォームは、細胞の自然な環境を模倣するように設計された3D細胞増殖環境で構成され、バッチ間の一貫性を保ちながら、コスト効率よく培養肉の大量生産を可能にするという

2023年3月の時点で、わずか35リットルのバイオリアクターで10キログラム以上の培養肉を生産できると発表していた

また、Green queenの報道によると、従来の20,000リットルのバイオリアクターが必要とされる生産量を、Ever After Foods のシステムでは2,000リットル未満の設備で達成可能だという。

さらにEver After Foodsは、業界パートナーと協力して、牛肉鶏肉アヒル魚の細胞から筋肉組織と脂肪組織を自然に生成する技術の実証に成功したとプレスリリースで述べている。

培養肉企業と大手企業の提携

出典:The Cultured Hub

培養肉企業がスケールアップに向けて大手企業と連携する事例は昨年以降、複数確認されている。

昨年9月、イスラエルの培養肉企業Believer MeatsGEA提携した。GEAはBeliever Meatsに対し、高い細胞密度と収量を実現するよう特別に設計された独自バイオリアクターを開発し、運用を開始する。

イスラエルのアレフ・ファームズAleph Farms)は昨年3月、とBBGIFermbox Bioの協力により、タイに培養肉工場を建設する計画を発表した。同社は同年12月、タイで培養肉の承認申請を提出した

今年になりEUスイスに新規申請を提出したオランダのモサミートは昨年5月、欧州最大の家禽メーカーの1つであるPHWグループから出資を受けたPHWグループは2022年にイスラエルの培養肉企業スーパーミートと基本合意書(MOU)を締結している

こうした事例に続き、Ever After Foodsとビューラーの提携もまた、培養肉の実用化と大量生産を可能にする重要な一歩となるだろう。

 

参考記事(プレスリリース)

Ever After Foods and Bühler Collaborate to Scale Cultivated Meat Production and Distribution

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Ever After Foods

 

関連記事

  1. イスラエル政府が培養肉コンソーシアムに約23億円の助成金を提供
  2. シェイクシャックが初のヴィーガン(ビーガン)バーガーをロンドンで…
  3. パーフェクトデイが約390億円を調達、今秋にアニマルフリーなクリ…
  4. 米Superbrewed Food、腸内細菌由来のタンパク質につ…
  5. 培養肉スーパーミートと欧州大手養鶏企業PHW、培養肉の欧州導入で…
  6. 世界初!米Biomilqが細胞培養でヒトの母乳を体外で作製するこ…
  7. マイコプロテイン企業Mycorenaが正式な倒産申請を発表、新た…
  8. Quornの親会社Marlow Foods、マイコプロテインを他…

おすすめ記事

Upside Foodsが業界史上最大の約510億円を調達、年内の培養肉市販化を目指してスケールアップを加速

アメリカの培養肉企業Upside Foods(アップサイド・フーズ)がシリーズC…

オーストラリアのVow、南半球最大の培養肉工場をオープン

オーストラリアの培養肉スタートアップVowは、年間30トンの培養肉を生産できる同…

培養魚のB2B製造ソリューションの提供を目指すUmami Bioworks、年内にシンガポールで申請へ【創業者インタビュー】

世界のシーフード消費が増えるなか、絶滅の危機に瀕している魚種を細胞培養により開発…

「ニッポンの魚ビジネスEXPO 2025」2月18日開催|業界の枠を超え、魚ビジネスの可能性を広げる

本記事は、Foovoがメディアスポンサーを務める「魚ビジネスEXPO 2025」の紹介記事です。…

イスラエル発のChunk Foods、代替ステーキ肉で米国小売市場に参入

ホールカットの代替ステーキ肉を開発するイスラエル企業Chunk Foodsが、ア…

Wilkが細胞培養による乳脂肪を使用したヨーグルト開発に成功

細胞培養によりヒト、動物の乳成分を開発するイスラエル企業Wilk(ウィルク)は、…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/16 15:53時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/17 02:15時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/17 05:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/16 21:54時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/16 13:52時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/17 01:11時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP