英国食品基準庁(FSA)は今月10日、培養肉など細胞性食品の安全性を確保しつつ、イノベーションを促進するための、2年間の規制プログラムを開始した。
このプログラムはイギリス政府のサンドボックス基金の支援を受けており、安全性とイノベーションのバランスを取りながら、細胞性食品に関する規制を明確にすることを目指している。
Hoxton Farms、BlueNalu、Mosa Meat、Gourmey、Roslin Technologies、Uncommon Bio、Vital Meat、Vowの8社が同プログラムに参画することが発表された。
ロンドンのキックオフイベントに参加したMosa Meatのマーク・ポスト教授は、「政府資金による共同プログラムに参加する数少ない企業の1つになれたことを光栄に思います。これはまさに、2013年にここロンドンで世界初の培養肉バーガーを発表したときに思い描いていた官民パートナーシップです」と述べている。
イギリス当局、8社と共に培養肉の規制プログラムを始動

出典:FSA
今後2年間にわたり、科学者・規制専門家チームは、アカデミア、培養肉企業、業界団体と協力し、細胞性食品の製造方法や科学的エビデンスを収集する。これらの科学的エビデンスは、細胞性食品をどのように規制するか、検討するために活用される。

出典:FSA
FSAはまた、科学的エビデンスをもとに、細胞性食品の申請をより効率的に評価するほか、企業への明確なガイダンスを提供し、細胞性食品が市場に出る前に解決すべき質問に回答するとしている。
FSAは今後2年間で、2つの細胞性食品について、安全性評価を完了することを約束している。
FSAの最高技術アドバイザーであるRobin May教授は、「安全なイノベーション」がこのプログラムの核心だと強調し、「消費者の安全を優先し、細胞性食品など新規食品の安全性を確保することで、革新的な分野の成長を支援することができます」と述べている。
「黎明期の業界に必要なステップ」

培養肉の申請・承認状況 Foovo調査により作成(2025年3月17日時点)
今回の規制サンドボックスプログラムには、欧州企業6社、オーストラリア企業1社(Vow)、アメリカ企業1社(BlueNalu)が参画する。
昨年、EU、イギリスを含む5市場で申請を完了した培養フォアグラを開発するGourmeyは、このプログラムについて、当局による規制策定と製品の安全性確保に役立つものだと評価している。
昨年シンガポールで試食会を開催したフランスのVital Meatは、「このプログラムに参加することは責任を伴うものです。他の企業がイノベーションを進め、規制プロセスをより迅速に進められるよう、機密性の高いインサイトも含めた知見を共有していきます」述べ、黎明期にあるこの業界を形作るために必要なステップだとコメントしている。
今月27日に東京で開催されるCMS Japanに登壇予定のHoxton Farmsは、「これは当社にとって、培養脂肪の市場投入に一歩近づくことを意味します」と評価している。
Foovoの調査では、イギリスで培養肉申請を行った企業ではアレフ・ファームズ、Vital Meat、Gourmey、Ivy Farmが確認されている。
最近の報告では、培養肉企業への投資は、2021年にピークに達した後、2023年に激減し、2024年も低調を維持したものの、安定化の兆しを見せているという。
先日には、米Mission Barnsが世界で初めて培養脂肪についてFDAの安全性審査をクリアした。今回のイギリス当局による規制サンドボックスプログラムの始動も、業界にとって重要な前進となり、FSAが今後2年間で安全性評価を完了するとしている2製品の動向に注目が集まる。
参考記事
FSA launches pioneering regulatory programme for cell-cultivated products
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アイキャッチ画像の出典:Mosa Meat