アップサイクル

廃棄カリフラワー由来の植物アイスクリーム|EatKindaがニュージーランドを一時撤退してアメリカ市場参入を目指す理由

 

ニュージーランド発のスタートアップEatKindaは、見た目が悪かったり、サイズが規格外だったりすることで流通に乗らない「未利用カリフラワー」に着目し、それを原料とした植物性アイスクリームを開発した。

「世界初」とされるこの取り組みは、食品廃棄の削減と美味しさの両立を目指すもので、2021年にJenni Matheson氏Mrinali Kumar氏によって創業された。

EatKindaのアイスは、ストロベリーチョコレートチョコミントの3種類。いずれの製品もカリフラワーを13%使用し、その他にはエンドウ豆、ココナッツオイル、サトウキビ由来の砂糖などを使用している。

ニュージーランドで通年生産されるカリフラワーのフードロスを活用した持続可能な取り組みであり、2022年には、310個分に相当する468kgのカリフラワー廃棄物を再利用することに成功した

2023年には地元ピザチェーン「Hell Pizza」や、大手スーパーマーケット「Woolworths」での取り扱いが始まり、国内での販路を順調に拡大していた。しかし同社は先日、アメリカ市場参入に向け、ニュージーランド市場から一時撤退する決断を下した

順調に展開していたニュージーランド市場からなぜ撤退するのか。共同創業者の2人はインスタライブで先日、アメリカ進出を決めた理由を語った

ニュージーランドではスケールの壁に直面

出典:Eatkinda

ニュージーランド市場で製品の味は高く評価されたものの、人口約500万人という小規模な市場ではブランドのスケールに限界があったという。

Kumar氏は「店舗数が増えるにつれて、その成長をサポートできる製造業者を見つけることができませんでした」と述べ、マスマーケットの価格設定を可能にする方法でスケールアップできなかったことに触れた。

製造は手作業が中心で、創業者2人が長距離移動を伴う作業に従事する必要があり、時間的・金銭的コストの負担が大きかった。

一方で、EatKindaの製品動画はSNSで540万回以上再生され、特にアメリカから多くの関心が寄せられた。数千人がニュースレターに登録し、「アメリカ市場に可能性がある」と確信。

共同創業者の2人はロサンゼルスを訪問。製造・物流など、サプライチェーンを構築するためにパートナー候補と多数面会し、アメリカ市場での事業展開に向けた準備を進めた。

Kumar氏は、「今はニュージーランド市場から一歩引き、リソースを温存しながら、アメリカでのチャンスに全力を注ぐべき時だと判断しました。この決断が、私たちがグローバルブランドになるための土台を築いてくれました」と語る。

アレルゲンフリーの植物アイスで商機を狙う

出典:EatKinda

EatKindaが注目するもう一つの理由が、アメリカにおけるアレルゲン対応製品の少なさだ。アメリカでは4人に1人が何らかの食物アレルギーを持っており、食品の成分表示を確認する消費者が多いことに気づいたという。

EatKindaの製品は、乳製品・大豆・ナッツ・小麦を含まないレシピで設計されており、幅広い層に受け入れられるポテンシャルを持つとKumar氏は考えている。

また、植物性アイスの多くが「柔らかさ」を出すために大量の砂糖を使用していることに言及。

「結果として通常の乳製品アイスよりも健康的とは言えない製品が多いです」と語り、EatKindaは、クリーンラベルかつクリーミーで美味しいアイスを目指して開発していることを強調した。

糖質オフ商品の展開も今後の視野に入れているが、まずは「おいしさ」にこだわった製品で、アメリカ市場への定着を狙う。ニュージーランド市場からの撤退は一時的なもので、将来的には再び地元市場への再参入も視野に入れているという

 

参考記事

EatKinda インスタライブ動画

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:EatKinda

 

関連記事

  1. イギリスのマクドナルドがマックプラントを導入、2022年に全国導…
  2. スイスの研究チームが研究室で細胞培養によるチョコレートを開発
  3. 発酵技術で代替シーフードに挑むAqua Cultured Foo…
  4. パーフェクトデイ、精密発酵の「biology-as-a-serv…
  5. スピルリナ由来の代替肉、スナックバーを開発するインド企業Naka…
  6. ドイツのThe Cultivated B、EFSAに向けた培養ソ…
  7. 代替マグロ開発中の米フードテックKuleana、年内に全米へ代替…
  8. 日本のDAIZエンジニアリング、新大豆タンパク質を2025年に欧…

おすすめ記事

動物肉と同等価格の植物肉が生産可能な自動化技術をシアトルの企業が開発

シアトルに拠点を置く植物肉のスタートアップ企業Rebellyous Foodsは…

微生物・空気・電気からタンパク質を生産するソーラーフーズ、年内に工場着工、2023年前半に商用生産へ

空気と微生物と電気を使ってタンパク質を生産するフィンランドのSolar Food…

Apeel Sciences、鮮度を保てるプラスチックフリーなキュウリ、ウォルマートで販売開始|食品ロス問題の解決に

食品ロス問題に取り組む米スタートアップのApeel Sciencesは、Houwelingグループと…

Forsea Foods、培養うなぎの開発で細胞密度3億個/mL超を達成

今年は培養うなぎで大きな進展が相次いだ1年になった。8月、北里大学の池田…

植物性の全卵を開発するYo Eggが米国進出を実現、ビーガン落とし卵をレストランで発売

イスラエルの代替卵企業Yo Eggが今月、アメリカ進出を実現した。ひよこ…

牛を使わずにモッツアレラチーズを開発する米New Cultureが約28億円を調達

アニマルフリーなモッツアレラチーズを開発する米New CultureはシリーズA…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

次回Foovoセミナーのご案内

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(04/07 14:56時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/08 00:43時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/07 04:41時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/07 20:56時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/07 13:02時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/07 23:59時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP