青果物の鮮度を伸ばす冷蔵庫を開発していた米Tomorrowが、2025年4月23日に事業の終了を発表した。
同社は冷蔵庫内部の環境を調整し、野菜や果物の鮮度を保持できる「Tomorrow Fridge」を開発していた。
「Tomorrow Fridge」はリーフ野菜などの鮮度を15日間保持できるほか、アプリと連携させることで、ユーザーが外出先からでも冷蔵庫内の在庫状況を確認できる機能を備えるなど、冷蔵庫そのものがフードロス削減を促すインフラとして設計されていた。
2025年夏の予約注文開始を目指していたが、最終的に製品の市場投入を断念する判断に至った。
Foovoに送られた創業者兼CEOのAndrew Kinzer氏によるメッセージでは、同社がこれまで、消費者ニーズの調査や試作、科学的な検証、製造戦略、製品化計画に莫大な時間を投じてきたことが明かされている。
Kinzer氏は、家庭レベルの課題、特に食品廃棄物や健康的な食生活といった問題に取り組みたいと考え、Tomorrowを立ち上げた。
同氏は、「冷蔵庫は単なる家電ではなく、健康的な食生活や時間の節約を支援するアシスタントになり得る」と信じ、次世代の冷蔵庫「Tomorrow Fridge」があらゆる家庭に普及する未来を思い描いていた。
「消費者向けハードウェアはもともと非常に難しく、賞味期限の延長には科学的な飛躍も求められました。失敗する可能性もあるとは理解していましたが、それでも挑戦したこと自体を誇りに思えると信じていました」と語る。
しかしKinzer氏は、「残念ながら、今は消費者向けハードウェア企業を立ち上げるには厳しい時期です。特に、市場投入までに多額の資金を要する事業にとってはなおさらです。現在の資金調達と製造を取り巻く環境は、この10年で最も困難な状況のひとつとなっています」と述べ、資金面で事業継続が難しくなった実情を明かしている。

出典:Tomorrow
この言葉からは、優れた構想と技術があっても、それを形にするにはタイミングが極めて不利だったことがにじみ出ている。Kinzer氏は、変動する関税もリスクを高めたとし、「すべてはタイミング次第だった」と振り返っている。
今回の事業閉鎖は、消費者向けハードウェアで自社開発・自社販売モデルを採る企業にとっては、初期投資の大きさが事業継続の大きな壁となっていることを改めて示している。
2023年のフードロス企業を取り巻く投資状況をまとめたReFEDの報告によると、食品廃棄の予防分野においては、賞味期限の延長や、小売業者を支援する予測技術・動的価格設定といったソリューションに資金が集中した。
Tomorrowも賞味期限延長の分野に該当するが、ReFEDは、製品の味や品質に影響を与えない自然由来のソリューションに特に関心が集まっているとし、物理的製品を新たに開発・展開するTomorrowのようなハードウェア系スタートアップにとっては、資金獲得が難しい環境であることが示唆されている。
Kinzer氏は、「顧客やパートナー、アドバイザーから寄せられたフィードバックは、この製品の必要性を改めて感じさせるものでした。このビジョンが実現しないというのは非常に辛いことです」と述べたうえで、「本当に後悔するのは、挑戦して失敗したことではなく、挑戦すらしなかったことです」と締めくくった。
※本記事は、Kinzer氏の公開コメントおよびFoovo宛に送付されたメッセージをもとに、Foovoが独自に執筆したものです。
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アイキャッチ画像の出典:Tomorrow