イスラエルの微細藻類スタートアップSimpliigoodは22日、スピルリナを原料とするビーガンスモークサーモンの商用生産へ移行したと発表した。
商用生産への移行により、原料「Simplii Texture」の年間生産能力は数百トン規模に達し、スモークサーモンの需要増に対応できる見込みだ。
「Simplii Texture」はEFSA(欧州食品安全機関)により新規食品に該当しないと判断された。現在、ドイツ、イタリア、スイス、オランダ、イスラエルの食品メーカー数社とパイロット試験を実施しており、最初の製品はプライベートブランド製品として、6か月以内に小売店に並ぶ予定だという。
プレスリリースでは販売地域は明記されていないが、Simpliigoodのリンクトイン投稿では、欧州での初期展開を示唆している。
タンパク質含有量70%に進化 ─ スピルリナ含有率も調整可能

出典:SimpliiGood
SimpliiGoodは2022年4月、スピルリナを使用したクリーンラベルのビーガンスモークサーモンを発表。主成分としてスピルリナだけを使用し、外見、色、食感、風味を再現したもので、当時の製品のタンパク質含有量は40%。
今回発表されたビーガンスモーク製品のタンパク質含有量は最大70%。スピルリナの含有量は要望に応じて、製品全体の40%から100%に調整できるという。
昨年、2025年にビーガンサーモンを市場投入すると発表したとおり、上市のカウントダウンが始まった。
SimpliiGoodはアメリカで2024年夏、CPG製品としてスピルリナ製品を発売した。スピルリナを使用した代替スモークサーモンでは現在、FDA認可のプロセスを進めており、グローバル展開を視野にいれている。
3Dプリンター・押出成形不要なシンプルな製造プロセス

出典:SimpliiGood
製造は二段階の独自技術で構成される。
第一に、脱色プロセスでスピルリナから緑色のクロロフィル成分を分離する。除去されるクロロフィルには抗酸化物質や微量栄養素が豊富に含まれているため、サプリメントや天然着色料に活用する。
代替スモークサーモンの本物らしい色合いは、スピルリナに含まれる残りのカロテノイドによるものとなる。
第二に、残りの原料を高含水のまま成形するテクスチャリング技術で、このプロセスにより、滑らかでありながら繊維質の構造を持つ代替品が得られ、スモークサーモン特有の自然な光沢感を再現している。
Simpliigoodの親会社AlgaeCore TechnologiesでCTO兼共同創業者を務めるBaruch Dach氏は、製造工程では3Dプリンターや押出成形機などの設備は不要だとコメント。
「新鮮な未乾燥スピルリナと少量の天然原料を組み合わせ、パスタローラーのような機械に通すことで、スピルリナ由来のスモークサーモンをシンプルな工程で製造しています」と述べている。
AlgaeCore の施設は今後数ヵ月以内に、「Simplii Texture」を数十トン製造する準備が整っているという。「Simplii Texture」1 kgから、3〜4 kgの代替スモークサーモンを加工できる。
SimpliiGoodはスモークサーモンにとどまらず、これまでにスピルリナを活用した代替チキンナゲットやソーセージの試作も進めており、詳細は過去記事で紹介している。
微細藻類活用が広がる代替食品市場

出典:Sophie’s BioNutrients
微細藻類を活用した食品開発は、SimpliiGoodのスモークサーモンのほかにも、ユニークな事例が確認されている。
フランスのAlgama Foodsは、微細藻類由来の代替卵原料「Tamalga」を開発し、ケーキ、ワッフル、焼き菓子などでの商用化を進めている。今月にはPATICEOが同成分を使用した植物性マドレーヌを発売するなど、市場投入が進んでいる。
4月に約37億円を調達したイスラエルのBrevelは、糖と光を組み合わせた発酵技術により、白色でニュートラルな風味の微細藻類タンパク質を開発している。今年2月には、イスラエルの大手飲料メーカーCBC Groupと協力し、微細藻類由来のタンパク質・油脂を含む機能性ドリンクや代替乳製品を開発すると発表した。
2023年にはSophie’s BioNutrientsがオランダの研究機関との協力により、クロレラ由来の乳白色アイスクリームを開発した。
※本記事は、プレスリリースおよびFoovo独自の追加調査に基づいて執筆しています。出典が必要な箇所には、すべて適切なリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Simpliigood