代替プロテイン

銀行による資金回収で窮地:菌糸体代替肉の代表企業Meati、400万ドルで売却申請

2025年5月8日:更新

米コロラド州の菌糸体由来代替肉スタートアップMeati Foodsが、わずか400万ドル(約5.7億円)で新会社Meati Holdings(詳細は不明)への売却を裁判所に申し立てたことが明らかになった

コロラド州の地方裁判所に提出されたこの申請は、同社の深刻な資金難を背景としたもので、2022年7月に6億5,000万ドル(約935億円)と評価されていた企業が、3年弱で160分の1以下の価格で売却申請されるという衝撃的な展開となっている。

Meati、銀行に預金の大半を回収され資金ショート

出典:Meati Foods

2025年2月、銀行はMeatiの財務コベナンツ(*)違反を理由に、同社口座から預金の約3分の2を回収した(コべナンツとは融資などで、契約書に記載する債務者側の義務・制限など特約条項を指す)。

Meatiは期日通りに支払いを行っていたが、銀行との融資契約で定められていた『売上高』や『売上総利益』に関する指標を満たせなかったため、テクニカル・デフォルトと見なされたことが原因だった。報道では、今年1月の時点では、回収はしないと銀行が保証していたが、状況は一変した。

この予期せぬ資金喪失により、Meatiは運転資金を失い、事業継続が困難となった。

この事態を受けて、同社はアメリカの「労働者調整・再訓練予告法(WARN)」に基づき、全従業員150名に対して3月、「解雇の可能性がある」と通知。通知では、コロラド州ソーントンの製造施設を5月6日に閉鎖し、CEOを含めた同拠点に所属する全職種を恒久的に削減する方針が明記されていた。

アメリカでは、100名以上の従業員(パートタイムを除く)を抱える事業主は、大量解雇・工場閉鎖を行う場合、60日前に書面による通知が義務付けられている

今月5日にはAgFunderが、Meatiによるつなぎ資金の確保を報じたものの、翌6日には、BusinessDenが400万ドルでの売却計画を報じ、コロラド州の地方裁判所に資産売却の承認を正式に申し立てたことが明らかになった。8日時点で、全従業員が解雇されたとの公式発表は出ていない。

Meatiの急転を時系列で追う

出典:Meati Foods

時期 主要イベント ポイント
2022年7月 シリーズCで1.5億ドル(当時約199億円)調達、企業評価6.5億ドル 投資家にはChipotle Mexican GrillのVCなどが参加
2024年5月 シリーズC1ラウンドで1億ドル(当時約155億円)を調達クランチベースによると調達総額は3億7,450万ドル(当時約583億円) 業界逆風でも大型調達を達成
2025年2月 銀行が預金の約2/3を回収(キャッシュスウィープ) 財務指標を下回り契約違反扱いに
2025年5月 CEOが資産を弁護士に譲渡し、400万ドルでの売却を申請 「Meati Holdings」への売却を届け出

Meatiが売却の申し立てを裁判所に行ったのは、コロラド州では資産売却の最終承認権をコロラド州の地方裁判所が握るからである(Assignment for Benefit of Creditors,p2)。

売却が承認されれば、新法人Meati Holdingsが事業やブランド、設備を引き継ぎ、事業継続の道が残される。一方、不承認となれば、清算される可能性が高い。Meatiはまた、売却完了前でも、新会社が会社を経営できるよう裁判所に申し立てている。

投資熱の高まりと、マイコプロテイン数社で見られる経営不振

出典:Meati Foods

Meatiは菌糸体を用いた代替肉を開発し、ステーキ、チキンカツ、朝食用パティ製品などの複数の自社ブランド製品をアメリカのスーパーマーケットで展開してきた。ホールフーズなど大手小売店にも並び、製品のリピート率は60%と一定の評価を受けていた

しかし、今回の事例は、商品の牽引力があっても資本と金融リスク管理により、経営が傾く危うさを示している。とりわけ、培養肉分野が投資減速するなか、バイオマス発酵分野は復調の兆しを見せており、2024年には欧州の関連企業が1億1,900万ユーロ(約193億円)を調達している。その中でもMeatiの失速は、業界に衝撃的な出来事となった。

しかも、経営難に陥っているのはMeatiだけではない。

Quornブランドの親会社Monde Nissinは今年2月、2024年決算で8000万~1億ポンド(約153億円~191億円)の減損損失を計上する見通しであると発表した

昨年にはスウェーデンのMycorenaが財政難により倒産し、ベルギー企業Naplasol買収された。また、菌糸体由来チーズを開発するベルギーのBolder Foodsも、今月に入り資金調達難により事業継続が難しくなったことを発表している。

 

※本記事は Green Queen(2025年5月7日付)および AgFunder(2025年5月5日付)の報道を参考にしつつ、WARN通知や業界データなど追加調査のうえ、独自に執筆したものです。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Meati Foods

 

関連記事

  1. 精密発酵:8ヵ月にわたる企業・政府動向の全記録【Foovo独自調…
  2. 二酸化炭素を使用して代替脂肪を開発するスウェーデンのGreen-…
  3. Imagindairyがイスラエルで精密発酵ホエイの認可を取得 …
  4. 香港の代替肉企業グリーンマンデーが植物ベースの代替魚に参入!
  5. 米イート・ジャスト、植物性チキン「Just Meat」を全米のウ…
  6. スウェーデン企業Mycorenaが世界初となる菌類由来の代替油脂…
  7. 分子農業企業Moolec Scienceが豚タンパク質を作る大豆…
  8. JBS子会社のBioTech Foods、スペインで南欧最大の培…

おすすめ記事

デンマークのTempty Foodsがマイコプロテインをレストランに導入

2024年6月27日情報を追記デンマークのマイコプロテイン企業Tempt…

ÄIO、酵母由来の食品用風味油脂の工業生産に向けエストニア政府から約2.2億円を獲得

出典:ÄIO林業廃棄物などから代替油脂を開発するエストニアのÄIOは先月18日、エストニア・ビジ…

Vivici、欧州企業で初となる精密発酵タンパク質のGRAS自己認証ステータスを発表、年内にアメリカで発売へ

オランダの精密発酵企業Viviciが、精密発酵由来ホエイタンパク質についてGRA…

昆虫で食品廃棄物をアップサイクルするLIVIN Farmsが約8.5億円を調達

代替タンパク質の1つとして昆虫タンパク質生産に取り組むオーストリア企業LIVIN…

規格外・余剰農産物のB2B販売プラットフォームを提供するFull Harvestが約26億円を調達

規格外・余剰の農産物をB2Bで販売するプラットフォームを構築するFull Har…

TurtleTreeが精密発酵によるアニマルフリーなラクトフェリンを発表、年内に市販化へ

TurtleTreeは今月、世界初となる精密発酵によるウシラクトフェリンを試食イ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP