代替プロテイン

欧州大手小売のREWEグループ、欧州の業界団体「Food Fermentation Europe」に加盟──FFE初の小売会員として代替タンパク質推進へ

 

発酵由来食品・原料に焦点をあてた業界団体Food Fermentation Europe(FFE)に、小売業者として初めてREWEグループの加盟が発表された

FFEは精密発酵バイオマス発酵を含む発酵由来食品・原料の認知度を高め、規制・政策の枠組みを推進するために2023年春に設立された。欧州における発酵産業の活気あるエコシステムを推進することを目的としている。

FFEには初期メンバーの精密発酵企業5社FormoBetter DairyImagindairyOnego BioThose Vegan Cowboys)に、その後、ドイツの大手チーズ企業Hochland Group、酵母由来クリームを開発するCosaic(旧称Cultivated Biosciences)、精密発酵企業Standing OvationVivici、バイオマス発酵のMICRO Harvestなど参画している。

今回のREWEの参画は、欧州大手の小売企業として初であり、同社が発酵タンパク質を今後の代替タンパク質供給の手段として重視している姿勢がうかがえる。

出典:Food Fermentation Europe

FFEのプレスリリースによると、REWEは「タンパク質戦略」を通じて、植物由来を含む代替タンパク質の供給と需要を推進しており、気候変動対策や食の多様性などの促進に取り組んでいる。食品発酵技術については、「拡張可能で、環境に優しいタンパク質ソリューションの開発に不可欠な技術」として位置づけている。

REWEグループの広報部長Emilie Bourgoin氏は、FFEへの加盟を通じ、パートナー企業と連携してアーリーステージにおける技術開発の支援、EUの政策・規制に関する議論にも関与していく考えを示している。

REWEが策定を進める「包括的タンパク質戦略」

出典:Formo

REWEグループは欧州21ヵ国に展開し、その傘下のREWEはドイツ国内でスーパーやコンビニなど3800を超える店舗を展開する。

欧州のフードテック関連ニュースで頻繁に登場する企業であり、昨年4月、2,700点以上のビーガン商品を取り扱うビーガン専門のスーパーマーケットをドイツに開設した

これまでFoovoで紹介した、海藻・植物由来の代替ツナ、3Dプリンタ・マイコプロテインによる代替サーモン代替チョコ、麹菌由来のクリームチーズなど多くの製品を導入している。

今回のREWEグループFFE参画は、同社が策定中の「包括的タンパク質戦略holistic protein strategy)」と密接に結びついている可能性が高い。

REWEは、持続可能な食料供給体制の構築において代替タンパク質を主要分野の1つと位置付けている。2025年5月に発表したプレスリリースでは、多くの製品で完全な植物由来原料への移行を進めていることに言及。またドイツ政府に対して、国家タンパク質計画の策定や新規食品の承認手続きの簡略化を求めるなど、政策面からの環境整備にも積極的に関与している。

このプレスリリースの中で「発酵」という言葉は登場しないものの、今回のFFE加盟を含めた一連の動きは、発酵タンパク質を含む次世代タンパク質技術の社会実装にREWEが本気で取り組む姿勢を示すものといえる。

欧州では乳タンパク質、ヘムなど一部の精密発酵企業が当局に申請しており、プロセスの最終段階にある企業もあるものの、精密発酵タンパク質はまだ認可されていない。精密発酵タンパク質が欧州で認可される日が訪れたとき、REWEはバイオマス発酵製品とともに、それらの製品を店頭に並べ、次世代タンパク質の普及を後押しする存在になるだろう。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:REWE

 

関連記事

  1. ゲイツ氏、ベゾス氏が支援するNature’s Fyn…
  2. Future Fieldsが約15億円を調達、ショウジョウバエで…
  3. UPSIDE Foodsが米レストランで培養鶏肉の販売を実現
  4. イスラエルのImagindairy、アニマルフリーな精密発酵乳タ…
  5. オーストラリアのVowが約67億円を調達、来年始めにシンガポール…
  6. 熟成で味を強化、培養条件で“味”をデザイン──東大、「狙った味」…
  7. チェコの培養肉企業Mewery、チェコ政府から約3200万円の助…
  8. イスラエルの微細藻類スタートアップBrevel、シードラウンド拡…

おすすめ記事

イギリス政府が持続可能な代替タンパク質の開発に約25億円を出資

英国研究・イノベーション機構(UKRI)の一部であるバイオテクノロジー・生物科学…

Yコンビネーターが支援する米培養肉企業Orbillion Bioは高級肉開発で差別化を図る

培養肉スタートアップ企業Orbillion BioがYコンビネーターのWinte…

米Mission Barns、米国で世界初の培養脂肪の販売認可を取得|小売・レストランで販売へ

出典:Mission Barns米Mission Barnsが、アメリカで培養脂肪の販売認可を取…

ビーガンペットフードのWild Earthが約25億円を調達、来年に細胞培養ペットフード発売へ

ビーガンペットフードを販売する米Wild Earthが、シリーズAで2300万ド…

植物分子農業のKinish、年内に米由来の植物性アイスクリームの発売へ|第6回細胞農業会議レポート

第6回細胞農業会議で講演するKinish創業者兼CEOの橋詰寛也氏植物分子農業スタートアップのK…

カカオフリーチョコを開発する英Win-Win、シリーズAで約6億円を調達──ベーカリー原料大手のMartin Braunと提携、欧州展開を加速へ

出典:Martin Braun-Gruppe米やイナゴマメを原料にカカオフリーの代替チョコレート…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/18 16:15時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/19 02:55時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/19 06:24時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/18 22:16時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/18 14:16時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(11/19 01:34時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP