代替プロテイン

仏Gourmey、培養肉の生産コストを1kgあたり約1200円と第三者機関が検証

2025年6月9日:更新

培養フォアグラを開発するフランス企業Gourmeyは先月、コンサルティング企業Arthur D. Littleによる技術経済性分析(※)を通じ、同社の培養肉生産プラットフォームが「拡張可能かつ経済的に成立しうる」との第三者評価を受けたことを発表した

プレスリリースによると、生産コストは1kgあたり7ユーロ約1155円)(3.4ドル/ポンド)とされ、これは公表された中で最も低い数値とされる。

昨年には、イスラエルのBeliever Meatsも、50,000Lバイオリアクターの想定で50%のハイブリッド培養鶏肉を6.2ドル/ポンドで生産できる可能性を示した。

これら一連の報告は、培養肉の生産コストが実用レベルに近づきつつあることを裏付けるものであり、商業化に向けた重要な進展といえる。

厳しい投資環境下で、培養肉が実用レベルに前進

出典:Gourmey

Gourmeyは昨年7月、EU当局に培養フォアグラの承認申請を提出。EUにおいて、培養肉の承認申請を最初に提出した企業となった。EUのほかにも、シンガポール、スイス、イギリス、アメリカでも申請を完了している

プレスリリースによると、Gourmeyのプラットフォームは、5,000L規模のバイオリアクターを基盤とし、バイオ医薬技術に依存せず、食品グレードのコスト効率的な手法で設計されている。未分化な細胞バイオマスを活用した懸濁培養による連続生産を特徴とし、グローバル展開が可能な「アセットライト」型の生産モデルを構築している。

Arthur D. Littleによると、6基の5,000Lバイオリアクター年間1,700トンを生産可能で、設備投資は1拠点あたり3,500万ユーロ(約57億円)未満となる。培地には成長因子やウシ胎児血清(FBS)を使用せず、コストは1Lあたり0. 2ユーロ。足場やマイクロキャリアも不要としている。

同社の培養フォアグラはすでに、高価格帯の外食サービスや流通パートナーから高い関心を受けており、計画生産能力を上回る需要が見込まれているという。

CEOのNicolas Morin-Forest氏は「培養肉業界は、約束よりも証拠が重要になる段階に達しました。今回の独立した検証は、議論を現実的な運用へと前進させるのに役立ちます」とプレスリリースで述べている。

先月には、米WildTypeが世界で初めて培養シーフードの販売認可をアメリカで取得し、すでにレストランでの提供を開始するなど、認可を巡る動きも加速している。今年3月には、オーストラリアでVow培養ウズラの安全性が認められ、残るは大臣会合による承認を待つ段階となる。年内にはアメリカで培養脂肪初上市にも期待が集まる

一方で、GFI(Good Food Institute)によると、2024年における培養肉業界への投資額は過去5年で最も低い水準落ち込んだ。こうした投資環境のもとで、Gourmeyが構築するアセットライトな生産モデルは、資金制約下でもスケールアップが可能であることを示す事例といえる。

今後の注目点は、同社が申請を完了している複数地域のうち、どこで最初に認可を取得するかだ。これまでにヒト向け食品として上市された鶏肉ウズラ肉サーモンに続き、世界初となる培養フォアグラの市場投入が期待される。

 

(*)技術経済性分析とは、ある技術を導入したプロジェクトの事業採算性評価、事業期間を通したキャッシュフロー調査、複数の技術オプションやスケールを変えた場合の経済性比較など、技術導入による事業者の経済的メリットを明らかにする目的で行われる分析をいう。出典:技術経済性分析に関する最近の動向と課題

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Gourmey

 

関連記事

  1. 精密発酵でカゼインを開発するタイのMuu、来年の商用生産を目指す…
  2. Space Fが韓国初の培養鶏肉と牛肉、そして培養豚肉プロトタイ…
  3. フードロス削減×栄養インスタント食品、イスラエル企業Aninaが…
  4. 植物性の液状卵を開発するスペインのUOBO、代替油脂のCubiq…
  5. 米The EVERY Company、代替肉への精密発酵タンパク…
  6. ミツバチを使わない「本物のハチミツ」を開発する米MeliBio
  7. Oshiのホールカットの植物サーモン、ニューヨークで発売
  8. デンマークのTempty Foodsがマイコプロテインをレストラ…

おすすめ記事

MicroSaltは通常の半分量で、同じ塩味を実現する画期的な塩「MicroSalt®」を開発

アメリカ人は1日平均3.4gの塩分を摂取しているといわれる。これはFDA…

「麹菌で日本発のマイコプロテインブランドをつくる」|筑波大学・萩原大祐准教授の挑戦【インタビュー】

萩原大祐准教授(左)と麹菌マイコプロテインによる試作品筑波大学生命環境系の萩…

アレフ・ファームズが培養肉のパイロット生産施設を今夏にオープン、宇宙プロジェクトも始動

イスラエルの培養肉企業アレフ・ファームズは、イスラエル、レホボトに本社を移転した…

原材料と市場投入で見る代替チョコレート・代替カカオの現在地|18社の動向を俯瞰【Foovo独自レポート】

昨年、西アフリカでは干ばつや病害の影響でカカオ豆の収穫量が大幅に減少し、世界的な…

マイコプロテインを開発するフィンランド企業Eniferが約19億円を調達、2025年末までの商用工場建設を目指す

食品・飼料用の代替タンパク質源としてマイコプロテインを開発するフィンランド企業E…

最短30秒で調理する自律調理ロボットを開発したRoboEatz、1台目をラトビアに設置予定

カナダ、米国、ラトビアに拠点を置くRoboEatzは、自社の調理ロボットを「世界…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

培養魚企業レポート予約注文受付中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(06/29 15:25時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(06/29 01:23時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/29 05:19時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/29 21:27時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(06/29 13:27時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(06/29 00:31時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP