出典:Clever Carnivore
イリノイ州シカゴを拠点とするClever Carnivoreは6月25日、培養豚肉生産に関し、培地・細胞株・工場設計における成果を発表した。
プレスリリースによると、同社の食品グレード培地コストは過去2年間にわたり0.07ドル(約10円)/L以下を維持している。現在はシカゴのパイロット施設において500Lのバイオリアクター2基を稼働(今後3期目を追加予定)させているが、将来的に数千L規模へスケールアップした際には、さらなるコスト削減が見込まれるという。
また、非遺伝子組換えの「高増殖性豚細胞株」も樹立しており、接着培養において14時間未満で倍加する性能を有する。これは「数年前まで科学的に到達不可能と考えられていた限界を押し広げるものであり、高収率の培養肉生産を可能にする」としている。

出典:Clever Carnivore
工場設計においては、本格稼働下で初年度からの黒字化を見込むデモ施設を450万ドル(約6.4億円)未満で建設可能と試算。鋼材メーカーと連携し、低価格な大型バイオリアクターの設計に注力することで、プラント規模での設備投資(CapEx)の抑制を図っている。
Clever Carnivoreは、「培養肉を技術的に実現可能にし、コスト効率よく大量生産できる」ことを証明することを使命に掲げている。これらの成果は、2021年の設立以降に調達した総額900万ドル(約13億円)という限られた資金の中で達成されたものであり、同社は「多くの競合他社が投じる資金の一部に過ぎない」と強調している。
現在はアメリカ食品医薬品局(FDA)への申請準備を進めるとともに、ブラートヴルスト、ソーセージ、ホットドッグ、ミートボールなど多様な豚肉製品を開発している。
AgFunderの報道によると、100%植物性製品と、Clever Carnivoreの培養豚肉と植物肉をブレンドした製品との試食では、後者に対する肯定的な評価が得られているという。
培養豚ひき肉での上市を目指すスタートアップ

出典:Clever Carnivore
同社が豚ひき肉製品から開発に着手した理由として、ベンチャーキャピタルからの出資を受ける企業にとって、次の資金調達まで2~4年という限られた猶予しかない中で、早期の収益化を期待できる製品として豚ひき肉が適していたことをAgFunderに述べている。
Clever Carnivoreは、高価格帯での提供ではなく、家庭で手軽に食べられる価格での提供を目指しており、「現在の技術と製品設計により、従来製品と同等の価格で販売される見込み」だとプレスリリースで述べている。
世界的に培養肉業界への投資が3年連続で減速する中、限られた資本で着実に商業化に向けた前進を見せる同社の動向には、今後も注目が集まるだろう。
”豚脂肪”では今年3月に米Mission BarnsがFDAの安全性審査をクリアし、現在最終承認を待つ状態にある一方で、”豚肉”を対象とした培養肉の認可事例はまだない。
ソーセージなど加工用の培養豚ひき肉の開発では、オランダのMeatableが昨年、EU初の培養肉試食会をオランダで開催し、今年後半にはTruMeatと連携して、シンガポールで工場建設を開始することを計画している。
同社は2022年から培養ハイブリッド肉製品の導入に向けて現地パートナーとの連携を進めてきた。2024年後半にシンガポールでの提供を目指していたが、まだ実現していないものの、培養豚肉で現状、上市に近いプレーヤーだ。
米Fork & Goodも昨年、試食会を開催し、ニュージャージー州にパイロット工場を有する。
オーストラリアのMagic Valleyは今年、オーストラリア政府から助成金を獲得し、先月にはオーストラリアで政府高官らを対象に試食会を開催し、培養豚肉・羊肉のミートボールを提供した。
対照的に、米New Age Eats(旧New Age Meats)は資金難から2023年に事業を停止し、Foovoの調査では、培養豚ひき肉スタートアップ初の撤退例となった。
豚ひき肉を足がかりにする各社の動向を見ると、低CapExで早期収益化の道筋を示せるか否かが、継続か閉鎖かを分ける重要な分岐点になりつつある。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Clever Carnivore