出典:アブダビ投資庁(ADIO)
アブダビ農業・食品安全局(ADAFSA)は先月25日、アブダビ品質・適合評議会(QCC)およびアブダビ投資庁(ADIO)と連携し、新規食品の規制枠組みの構築に向けた取り組みを開始したと発表した。
手続きを簡素化し、市場投入を促進するため、新規食品の登録要件・ハラール認証・製造および輸入許可を単一の窓口に統合する。また、技術的および規制上のガイドラインを策定し、承認済み食品の国家データベース整備も進める。新規食品には、細胞性食品(培養肉など)や精密発酵食品などが含まれる。
アブダビは、アラブ首長国連邦(UAE)を構成する首長国の一つであり、UAEの首都でもある。
これまでに精密発酵のChange Foods、細胞性鶏肉のBeliever Meatsなどが工場や拠点の設立を視野にアブダビとの連携を進めている。先月には精密発酵のThe EVERY Company、Viviciが400万リットルの生産施設建設でADIOと提携を締結した。
今回の取り組みは、アブダビを食品イノベーションの中心地として位置付け、世界をリードする存在へと押し上げる狙いがある。枠組み構築により、今後さらに精密発酵や細胞性食品企業の誘致が進むとみられる。
新制度は、UAEやGCC(湾岸協力会議)、EU、シンガポール、アメリカなどの国際的ベストプラクティスに沿って設計され、登録期間は6~9ヵ月分、短縮される見込み。ハラール認証制度は、マレーシアやインドネシアを含めた国際基準に沿うものに改定するとしている。
UAEは「国家食料安全保障戦略 2051」を掲げ、2051年までに国際食料安全保障指針(Global Food Security Index)で世界1位を目指している。2022年時点でUAEは113国中23位(日本は6位)となっている。
同戦略では、近代技術を活かした持続可能な食料生産を基盤とした国家システムの開発、現地生産の強化、食料源の多様化に向けた国際的パートナーシップの構築、栄養改善に貢献する法律・政策の施行などが重点目標に掲げており、今回の動きは同戦略の実行を具体的に示すものといえる。
また、UAEの首長国の一つであるドバイでは2021年にフードテックバレーが設置された。

細胞性食品の認可・申請状況(2025年10月31日時点) Foovo調査により作成
アメリカやシンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、EU、イギリスなどでは、細胞性食品や精密発酵食品の申請事例が増えている(上記参照)。一方、日本では細胞性食品に関する法整備がまだ整っていないが、消費者庁は2024年11月より調査部会で安全性項目の審議を開始した。
夏頃の公表が予定されていたガイドライン中間案はまだ発表されていないが、直近では9月末に5回目の審議会が開催され、議論が進められている。
また、フードテック官民協議会の細胞農業ワーキングチームは2025年8月、「培養」ではなく基本名称を「細胞性食品」とする方針を公表し、呼称の統一による消費者理解の促進を進めている。
細胞農業研究機構(JACA)は今年5月、制度整備の議論を後押しすべく、専門的知見を横断的に整理した「専門家案」を消費者庁に提出した。JACAは今月13-14日に、レギュラトリーサイエンスを含めた細胞性食品の国際カンファレンスを都内で開催する。
法制度はまだ未整備な一方、日本進出を目指す海外企業の動きが増え、国内流通に向けた実務対応の必要性が高まりつつある。
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※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:アブダビ投資庁(ADIO)






















































