代替プロテイン

仏Nutriearth、ミールワーム由来ビタミンD3の商用工場をフランスで開設|輸入依存からの脱却へ

出典:Nutriearth

2025年11月4日更新

フランスのNutriearthは先月28日、ミールワーム由来の天然ビタミンD3を製造する商用生産施設をフランス、カルヴァンで開設したことを発表した

同社によると、ビタミンD3の供給の大部分は中国とインドに依存している。工場開設により、中国・インドに依存する世界供給構造からの脱却が可能になる。

EUで新規食品として認められた食用ミールワーム粉末

出典:Nutriearth

同工場は745万ユーロ(約13億円)の資金調達を経て建設されたもので、研究開発、品質管理、製造を一体化した医薬品グレードの施設となる。施設はクリーンルーム仕様で設計され、オイル状の「Nutra-oil」と粉末状の「N-utra」2形態のビタミンD製品を製造する。

Foovoに送付されたプレスリリースによると、Nutriearthは、Tenebrio molitorという数千年にわたり消費された歴史のある食用ミールワームを活用し、ビタミンD3素材を開発。

ビタミンDが豊富なサプリメント用素材の「Nutra-oil」は、すでに北米での使用が認められており、欧州では2026年の承認を見込む。パン、パスタ、クッキー、栄養バーなどに配合できる粉末の「N-utra」はすでに、EUで新規食品として承認されている。

欧州委員会は今年1月、紫外線処理したTenebrio molitor粉末N-utra」を新規食品として承認。2月10日に発効した。これにより、2025年2月10日から5年間、他社がNutriearthの提出データに依拠せず独自データで認可を得る場合を除けば、Nutriearthのデータには保護が適用され、実質的に先行的な販売上の独占権が保証されることを意味する。

出典:Nutriearth

同社は、ミールワーム粉末に含まれるビタミンD3前駆体に特定の光を照射することで、人体でのビタミンD合成過程を模倣した“バイオミメティック”な方法でビタミンD3へと変換する。化学抽出や溶媒を使用せずに吸収性に優れたビタミンD3を得られるという。

Nutriearthによると、同社製品はラノリン(羊の毛から取れる脂)由来の3倍、地衣類由来の2倍の吸収効率を示すという。

環境面のメリットもある。独立機関のライフサイクルアセスメント(LCA)によると、ラノリン由来のビタミンD3に比べ温室効果ガス排出量を76.8%削減し、環境負荷を8分の1に抑えられるという。地域生産によって輸送に伴うエネルギーやコストを抑え、地政学的なサプライチェーン上のリスク低減にも寄与する。

Nutriearthは、ヒト向けの栄養・健康市場、ペットフードや飼料、機能性食品など世界市場にも供給を広げることを計画している。カルヴァン工場の生産能力は、5000万人分のビタミンD3需要をまかなう規模に相当するという。

世界的な不足が指摘されるビタミンD

出典:Nutriearth

プラントベース食品や発酵由来タンパク質のように、動物原料を使わない食品が増えるなかで、ビタミンDの確保は栄養設計上の盲点になる可能性がある。

ビタミンDは日光に当たることで体内でも合成されるが、現代人は屋内生活が多く、ビタミンDの世界的な不足が指摘されている

文献によると、ベジタリアン、ヴィーガン、雑食の子ども集団いずれにおいても、ビタミンD摂取量が不足している可能性が指摘され、特にヴィーガンの子どもではサプリメントが推奨されている。ビタミンDは骨の健康に重要なほか、その不足が2型糖尿病の発症メカニズムにも影響することが報告されている

植物やキノコに多いのはD2で、D3は主に魚油やラノリンなどに動物に由来するものが多い。環境負荷を抑え、吸収性を高めたミールワーム由来のビタミンD3素材は、プラントベース食品の栄養面の強化および普及の促進において重要な選択肢になりうる。

 

※本記事は、Foovoに送付されたプレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Nutriearth

 

関連記事

  1. 【参加レポート】第34回食品開発展2023年10月@東京
  2. ドイツ政府、精密発酵・細胞性食品の商用化を後押し|2027年にイ…
  3. 2024年1月_Foovoセミナー動画・資料(精密発酵・植物分子…
  4. オーストラリアのCauldron Fermが約9.3億円を調達、…
  5. 仏培養肉のVital Meatがイギリスで新規食品の承認申請を実…
  6. Change Foodsが約13億円を調達、精密発酵の市場投入を…
  7. 細胞性魚脂肪のImpacFatが日本に拠点設置|2026年に化粧…
  8. 培養肉企業メンフィス・ミーツが社名をUPSIDE Foodsに変…

おすすめ記事

21st.BIO、精密発酵β-ラクトグロブリンでGRAS取得|技術ライセンス型分業モデルの狙いを聞く【インタビュー】

Henrik Geertz-Hansen氏 Foovo(佐藤あゆみ)撮影精密発酵の商用化は、消費…

菌糸体で代替ステーキ肉を開発する英Adamo Foodsが約2.7億円を調達

菌糸体から代替肉を作るイギリスのスタートアップ企業Adamo Foodsは先月、…

1時間に350杯のカクテルを作るバーテンダーロボット「Backbar One」

今まで様々な特徴を持つバーテンダーロボットが発売されてきたが、今回取り上げるアメ…

イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが約184億円を調達

アメリカ企業イート・ジャストの培養肉部門GOOD Meatが1億7000万ドル(…

マイコプロテインの英ENOUGHが年産1万トンの工場をオランダに建設、年内上市を計画

マイコプロテインを使った代替タンパク質を製造するイギリスのENOUGH(旧称3F…

熟成で味を強化、培養条件で“味”をデザイン──東大、「狙った味」を持つ培養肉開発に前進

培養ステーキ肉の開発を行う東京大学竹内昌治研究室は、培養肉の味を構成する鍵となる…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP