出典:RespectFarms
オランダのRespectFarmsは今月22日、オランダ・南ホラント州の農場に培養肉を生産する細胞性食品の設備を導入したことを発表した。
今後数週間でユニットを稼働させ、2026年春には細胞性食品の生産を直接見学できる体験センターを農場に開設する予定だ。
農家が細胞から直接肉を作り、既存の農業運営に細胞性食品の生産を統合するというRespectFarmsの構想が一歩、具体化に向けて前進した。
世界初の「培養肉農場」がオランダで誕生

培養肉ユニットを運搬している様子 出典:RespectFarms
RespectFarmsは、細胞性食品のうち“肉”に当たる培養肉を、農場で分散生産する仕組みづくりに取り組む。
同社は、既存の畜産・酪農農場に培養肉ユニットを組み込み、農家自身が「細胞から肉を作る」分散型モデルを実装しようとするオランダ発スタートアップ。大規模工場で集中生産するのではなく、農場単位でスケールアウトする仕組みのシステムインテグレーターを担う。
1950年代に細胞培養による食肉生産を提唱し、「培養肉のゴッドファーザー」と呼ばれるWillem van Eelen氏の娘であるIra van Eelen氏(共同創業者)らが中心となり、農家の新たな収益源と地域に根ざした食料生産の確立を目指している。
農場に細胞性食品の設備が導入されるのはこれが世界初。

培養肉ユニットを設置している様子 出典:RespectFarms
RespectFarmsが設計した「培養肉農場」は、Corné van Leeuwen氏の既存の酪農施設に設置される。また、同氏はEIP-Agriと南ホラント州の資金提供を受けており、培養肉生産のために農業資金を獲得した世界初の農家となる。
同氏は「これは、新しい収入モデルが既存の事業と両立できるかどうかを見極めるチャンスです。農場で培養肉をつくるという発想は、さまざまな点で理にかなっています。挑戦しなければ、機会を逃すことになるでしょう」とプレスリリースで述べている。
今年9月には、「培養肉農場」の建設に向けて、RespectFarmsなど7者から構成されるコンソーシアム「CRAFT」が結成された。その第一歩が今回の発表である。
これは、世界的な課題を小さく分解し、既存農業に落とし込むことで参入農家を増やし、分散型かつスケールアウトによって解決を図る取り組みだ。
共同創業者のRalf Becks氏は「RespectFarmsは、世界の課題を農場サイズにまで落とし込んでいるのです。そしてこのモデルが機能すれば、世界へ広げてより大きなインパクトを生み出せます」と述べ、こうした取り組みを“技術”として世界に展開し、世界各地で農家を主体とした地域密着型の持続可能な食肉生産の実現を目指している。
農家との共存を目指す国内外のスタートアップの動き

設置された培養肉ユニット 出典:RespectFarms
細胞性食品の工場では、イスラエルのBeliever Meatsが今年7月、米ノースカロライナ州ウィルソンで年産12,000トンの世界最大級工場の建設完了を発表した。世界各地でもスタートアップの細胞性食品工場が誕生している。
しかし、Believer Meatsのケースでは建設開始から完成まで約3年半を要し、多大な設備投資と時間を要する点が課題となる。一方で、RespectFarmsの取り組みは、培養肉を既存産業の「脅威」ではなく「補完」するソリューションとして提示するものであり、世界各地に早期に広がる可能性を秘めている。
ドイツのMEATOSYSや日本のダイバースファームも、農家が培養肉生産に関わり、既存の畜産業と共存する未来を描く。
MEATOSYSは、農家の土地で細胞性食品の生産に直接携われるコンテナ型システムを開発しており、2028年に最初のコンテナ導入を目指している。ダイバースファームは、牧場の中に培養肉工場のある世界を構想し、各農家が自らのブランド鶏を培養肉として生産できる仕組みづくりを目指している。

出典:RespectFarms
EUではヒト向けの細胞性食品の販売はまだ認められていないが、オランダでは2023年に限られた条件下で認可前の試食が可能になり、これまでにモサミートやMeatableが試食を実現している。培養肉発祥の地・オランダで、農家を主体とした新たな食肉生産の挑戦が始まりつつある。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
関連記事
アイキャッチ画像の出典:RespectFarms




















































