代替プロテイン

イート・ジャストがシンガポールにアジア初の生産拠点を建設、培養肉の協業も

 

植物性代替卵のイート・ジャストがアジア進出拡大に乗り出した。

投資機関Proterraから1億ドル(約100億円)の出資を受け、アジア初となる生産工場をシンガポールに建設する。

Proterraから出資される1億ドルのうち、2000万ドルをシンガポールの工場建設に割りあてる。

この工場から生産されるプロテインは数千トン規模となる予定。同社の生産拠点はほかに北アメリカ、ドイツにあり、シンガポール工場は3か所目の生産拠点となる。シンガポールでは最大規模の工場となり、高まる植物性卵の需要にこたえる。

出典:イート・ジャスト

今回の工場建設はシンガポール経済開発庁(EDB)の支援も受けている。

イート・ジャストのアジアにおける販売パートナーには、韓国のSPC Samlip、タイのBetagroに加えて、中国の未公表のパートナーがいる。アリババ傘下のTmallやJD.comではすでにJust Eggが販売されており、9月には上海に同社主力品ジャスト・エッグの調理法を学ぶ料理スタジオをオープンしている。

これまでに販売した植物性代替食品は卵6000万個分に相当。これによって、83億リットルの水、8.7トンの二酸化炭素、1400万㎡の土地を節約したという。

イート・ジャスト公式サイトより引用、追記

 

培養肉の量産化までは15年以上を想定

今回のProterraとの提携発表では、イート・ジャストとProterraが培養肉の開発でも協業を進めることが明らかになった

イート・ジャストは、同じタイミングでアジア進出加速の施策を打ち出したインポッシブルフーズと比較して、培養肉市場に対して対照的な姿勢を示している。

インポッシブルフーズは培養肉市場には参入しないと断言しているが、イート・ジャストのCEOジョッシュ・テトリック(Josh Tetrick)氏は、SKS2020で培養肉について問われた際、コストダウンと量産化までに「15年以上」と回答している。

Josh Tetrick 出典:イート・ジャスト

同社は開発を4フェーズに分け、今年または来年には試作品を開発し、特定のレストランでリリースしたいと表明している。これを実現するには、試作品の開発から承認までが必要となる。

植物性プロテイン市場の競争は激化している。香港で販路を拡大するオムニポークのグリーンマンデー、香港・シンガポールの小売に進出したインポッシブル、インド発の代替卵スタートアップEvo Foods、植物性羊肉を開発するBlack Sheep Foods、そしてイート・ジャスト。培養肉がスーパーに登場するのはまだ先のこと。それまでは植物性代替食品の開発に期待したい。

イート・ジャストは2011年にサンフランシスコに設立されたフードテックのスタートアップ。米国に次いで中国市場に進出し、2019年5月には中国でジャストエッグの販売を開始した。これまでに調達した資金はCrunchbaseによると総額2億2千万ドル(約230億円)とされているが、イート・ジャストのグローバルコミュニケーション部Andrew Noyesは3億ドル以上と明かしている。

 

2020/10/23追記:

培養肉の15年は開発ではなく量産化までを含めた時間でした。クランチベースの情報をもとに資金調達総額を記載しておりましたが、イート・ジャストが公表している数値と相違がありました。不正確な情報がありましたので、お詫びして訂正いたします。

 

参考記事

Eat Just and Impossible Foods Both Made Major Expansions to Asia This Week

Eat Just & Proterra Asia Partner on JUST Egg Protein Facility & Expansion

Eat Just’s Josh Tetrick on the 4 Phases of Bringing Cell-Based Meat to the Masses

crunchbase.com/organization/just-inc

Eat-just-partners-with-proterra-to-launch-a-new-subsidiary-in-asia

 

 

アイキャッチ画像の出典:イート・ジャスト

 

関連記事

  1. 細胞培養で母乳を開発するTurtleTreeがラクトフェリン粉末…
  2. ダノンが細胞培養母乳を開発するイスラエル企業Wilkに出資
  3. ユニリーバが精密発酵によるアイスクリーム発売計画を発表
  4. 精密発酵でカカオバターを開発する米Seminal Bioscie…
  5. ビールの醸造で発生する廃棄大麦をアップサイクルするReGrain…
  6. 培養うなぎセミナー動画(北里大学・池田大介先生)|2023年9月…
  7. MISOLA FOODS、日本初のオーツミルク専門メーカーとして…
  8. 代替脂肪セミナー動画-2022年9月開催-

おすすめ記事

イギリス政府、代替タンパク質センターNAPICに約28億円を投資|植物性、培養肉、藻類、昆虫まで多様なタンパク質を支援

イギリス政府は先月、植物性タンパク質、培養肉、藻類、昆虫、発酵食品など代替タンパ…

TurtleTree、自社ブランドで精密発酵ラクトフェリンを発売|自社ブランド製品化の動きから見える資金調達ニーズ

TurtleTreeの精密発酵ラクトフェリンを使用したサプリメントがアメリカで発…

精密発酵でアニマルフリーなチーズを開発する独Formoが約55億円を調達

微生物発酵でアニマルフリーなチーズを開発するドイツ企業FormoがシリーズAで5…

【現地レポ】カナダのNew School Foods、ホールカットの植物サーモンを米国で2024年に発売へ

カナダ、トロコンを拠点とするNew School Foodsはホールカットの植物…

米Superbrewed Food、腸内細菌由来のタンパク質について米国GRAS認証を取得

アメリカ、デラウェア州を拠点とするSuperbrewed Foodは先月、腸内細…

Alt Farmは3Dプリンターで作った植物代替和牛で2023年の上市を計画

香港科技大学からうまれたAlt Farmは3Dプリンター技術の活用を進める会社で…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(08/01 15:30時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(08/01 01:36時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(08/01 05:29時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/31 21:35時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(08/01 13:34時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(08/01 00:42時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP