3Dプリンター

イスラエルAleph Farmsが宇宙で培養ステーキ肉を作る「Aleph Zero」計画を始動

イスラエルのフードテック企業Aleph Farms(アレフ・ファームズ)が宇宙で培養肉を生産する計画を発表した。

「Alepha Zero」と名付けたこの計画は、地球外の極限環境でも肉を製造する新たな方法の探索を目的とする。

同社の細胞生物学、組織工学、食品科学のノウハウを駆使して、火星や月に「BioFarms」を建設し、最終的に宇宙で得られた知見を地球で活用することを目指す

現在は同社技術を月または火星に実装するために、テック企業、宇宙機関といった長期に協業できる提携先を探している。複数機関と協議中で、まだ確定していないという。

Alepha Zeroによって将来恩恵を受けるのは、宇宙飛行士だけではない。地球上に暮らす我々にも関係する。

というのも、宇宙で肉を製造できるならば、それは予測不能な気候変動や天然資源の有無に関係なく、新鮮な肉を地球のどこでも作れるようになることを意味するからだ。

共同創業者のDidier Toubiaは「サハラ砂漠や南極大陸などの僻地でも、誰もが、いつでも、どこでも条件なしで高品質な栄養を手に入れられる」ことを理念としている。

出典:Aleph Farms

Aleph Farmsによると、宇宙での製造は、培養肉製造工程の限界突破につながるものだという。

Didier Toubiaは、宇宙での試みを、F1のテスト走行に例える。培養肉の製造にとっては宇宙がF1だ。資源のない、地球から離れた極限環境で培養肉を製造できるなら、地球上の過酷な環境で暮らす人々の助けになる。

実のところ、Aleph Farmsは 2019年に宇宙でのステーキ肉製造に成功している。

ロシアの3D・バイオプリンティング・ソリューションの3Dプリンターを使って、培養した牛の細胞から筋肉組織を製造することに微小重力下で成功した。

同社は2021年にパイロット生産のためのBioFarmsを地球に建設したいとしている。宇宙でのBioFarms建設時期については未定で、コロニー次第だという。

Aleph Farmsは2017年に設立されたイスラエルのスタートアップ。2019年にシリーズAラウンドで1200万ドル(約12億5千万円)を調達している。これまでの調達額は総額1440万ドル(約15億円)。

 

参考記事

Israeli startup Aleph Farms cooks up plan to grow cultured steaks on Mars

Aleph Farms’ “Aleph Zero” Program Aims to Grow Cell-Based Steaks in Space

Aleph Farms Launches ‘Aleph Zero’ Program to Grow Steaks in Space

Crunchbase.com/organization/aleph-farms

アイキャッチ画像の出典:Aleph Farms

 

関連記事

  1. 「細胞培養の救世主」、クラウドで培養を受託する米企業Cultur…
  2. 一正蒲鉾がインテグリカルチャー、マルハニチロと培養魚肉の共同研究…
  3. 培養マグロを開発するWanda Fishが約10億円を調達
  4. 培養肉企業のパイオニア、モサミートがオランダに培養肉工場を開設
  5. 培養フォアグラを開発する仏Gourmey、EUで初めて培養肉の承…
  6. アレフ・ファームズ、シンガポール・イスラエルでの合意で培養肉の生…
  7. TissenBioFarmが韓国初の細胞農業支援センターで10K…
  8. 古細菌の力で二酸化炭素をタンパク質に変換|オーストリア企業Ark…

おすすめ記事

CO₂を使用した脂肪開発の動向|米Savorのバター発売とGreen-Onの大手提携事例

二酸化炭素、水素、酸素、熱を使用して、動植物を介さず脂肪を合成する独自技術を確立…

ベルがパーフェクトデイと提携、精密発酵タンパク質の代替チーズを来月発売

Kiri(キリ)やBoursin(ブルサン)などで有名なチーズ大手ベルグループの…

Fooditive、リンゴと梨をアップサイクルした植物性甘味料を米国市場向けに発表

オランダのスタートアップ企業Fooditiveは今月、植物成分を使用した甘味料「…

全卵タイプの植物性代替卵を開発するYo Egg、アメリカで小売進出を実現

植物性の全卵製品を開発するイスラエル企業Yo Eggが今年3月、アメリカで小売進…

ショウジョウバエで成長因子を開発し、培養肉のコスト削減に挑むFuture Fields

安価な成長因子を開発するカナダのFuture Fieldsは、これまで技術の詳細…

代替油脂の米Lypidが台湾大手コーヒーチェーンと提携、500店舗に導入

植物由来の代替油脂を開発する米Lypidが、台湾大手コーヒーチェーンのLouis…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

リアルセミナー@東京のお知らせ【2025/6/18】

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/29 15:12時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/30 01:07時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(05/30 05:05時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(05/29 21:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(05/30 13:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(05/30 00:19時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP