この記事では、培養肉開発に取り組む国内外のベンチャー企業20社を紹介する。
培養肉とは、牛、豚、魚などの細胞を動物の体の外で培養して開発された、本物と同じ肉のことをいう。
Table of Contents
▶家畜培養肉に取り組むスタートアップ企業14社
モサミート
世界で初めて培養肉ハンバーガーを開発した培養肉のパイオニア。
2013年に1個3500万円のバーガーで話題を呼んだ。
ウシ胎児血清(FBS)除去に成功し、培地の大幅コストダウンに成功。9月に調達した資金は、工場拡大、生産ライン拡大、開発チーム拡充にあてる予定。
国 | オランダ |
最新の資金調達 | 2020年9月
5500万ユーロを調達 シリーズBラウンド |
総調達額 | 6450万ユーロ |
メンフィスミーツ(Memphis Meats)
2015年創業したアメリカのスタートアップ。
2016年に培養ミートボール、2017年に培養チキンを細胞ベースから製造に成功。培養シーフードも手掛け、製品のラインナップが充実している。
モサミートよりも早く生産コスト削減に成功した。
米食肉大手タイソン・フーズ、ソフトバンクグループ、カーギルなど名だたる企業から資金調達を受けている注目の培養肉企業。
国 | アメリカ |
最新の資金調達 | 2020年1月
約16億ドルを調達 シリーズBラウンド |
総調達額 | 約18億ドル |
Meatable
設立当初からFBSを使用しない手法で培養肉開発に注力するスタートアップ。
Meatableは「多能性幹細胞」を使う。多能性幹細胞とは、体を構成するほとんどすべての細胞に分化できる幹細胞のことを指す。これに対し、神経から取り出した幹細胞は神経系の細胞に分化するなど、ある程度分化できる方向性が定まっている幹細胞もある(体性幹細胞という)。
多能性幹細胞ならあらゆる組織に分化させることができるので、多様性に長けているほか、ほかの幹細胞より分化スピードが2~2.5倍速い特徴を持つ。
そのため、開発スピードの速さで優位性があり、2020年夏に培養ポークの試作品発表をすると報じられていたが、この記事を書いている時点で情報をまだ確認できていない。
Meatableは特許を取得した技術で、動物に痛みを感じさせずに細胞を採取している。生きた動物から組織検体を採取する代わりに、Meatableは生まれたばかりの子牛のへその緒から血液を採取するため、開発に介在する動物は最小限だ。
2025年までに数トン規模の生産規模を持つ工場を建設する予定。
国 | オランダ |
最新の資金調達 | 2019年12月
700万ドルを調達 シードラウンド |
総調達額 | 1350万ドル |
スーパーミート(Supermeat)
培養チキンに特化したイスラエルのスタートアップ。鶏の幹細胞をバイオリアクターで増殖させて製造する。
工場の隣に、培養肉メニューの試食に特化したレストランThe Chikenを設置し、培養肉の製造プロセスを見える化。クリーン性をアピールするとともに、開発段階から顧客の声を集める独自のマーケティング戦略を展開している。
1~2年以内にレストランでの販売、5年後に量産化を目指している。2015年に設立。
国 | イスラエル |
最新の資金調達 | 2018年1月
400万ドルを調達 シードラウンド |
総調達額 | 420万ドル |
ミ―トテック(Meat-Tech)
3Dプリンティング技術を活用する培養肉スタートアップ。
2020年8月にカルパッチョ様のラボ産ステーキの製造に成功。
幹細胞から培養した筋肉細胞と脂肪細胞をバイオインクとして、バイオ3Dプリンターで積層させることで、本物の肉のような複雑な形状を再現している。
国 | イスラエル |
最新の資金調達 | 2019年10月
700万シェケル(約2億円)を調達 シードラウンド |
総調達額 | 700万シェケル(約2億円) |
▼関連記事
HigherSteaks
細胞ベースの豚バラやベーコンを開発するイギリスの培養肉スタートアップ。
2017年に設立。豚バラとベーコンの開発に要する時間は約1ヶ月。幹細胞を培地で培養する。
豚バラの50%は培養肉、50%はプラントベース、ベーコンの場合は70%は培養肉、30%はプラントベースとなっている。
国 | イギリス |
最新の資金調達 | 2019年2月
15000ユーロを調達 |
総調達額 | 15000ユーロ |
Mission Barns
アメリカ・カリフォルニアの人工ベーコンのスタートアップ。豚の脂肪細胞をバイオリアクターで培養して開発する。
ポーク性ベーコンのほか、豚由来の油も開発している。
国 | アメリカ |
最新の資金調達 | 2019年10月
調達額は非公開 |
総調達額 | 350万ドル |
インテグリカルチャー
高コストな血清成分と成長因子を外部からもってくるのではなく、内部で生産するバイオリアクタ「CulNet System」を開発することでコストダウンを可能にした。
2020年7月にはシンガポールのShiok Meats社と共同でエビ細胞培養肉の開発を開始。この共同開発でも自社の血清成分を使わないバイオリアクターを活用している。2022年の培養エビ肉の商品化を目指している。
11月には宇宙という極限環境における「サステイナブルな食生産」「食のQOL」に挑戦するプロジェクトを始動。宇宙用調味料「スペースソルト(食べられる細胞培養液)」「スペースソルト・ゼリーピクルス(宇宙でも食べられる)」を提供するクラウドファンディングを実施している。
国 | 日本 |
最新の資金調達 | 2020年5月
8億円 シリーズAラウンド |
総調達額 | 11億円 |
日清食品
日清が取り組むのは、最も高度な技術を要する培養ステーキ肉。
単に牛の筋細胞を培養するのではなく、独自の積層方法を編み出し、本物の筋肉の立体構造の再現に取り組む。
2024年中に縦横7センチ、厚さ2センチのステーキ肉を生産する基盤技術を確立したい考え。2019年に1cm×0.8cm×0.7cmのサイコロステーキ状の作製に成功している。
国 | 日本 |
最新の資金調達 | ― |
総調達額 | ― |
Innocent Meat
https://www.innocent-meat.com/
ドイツ発の培養肉スタートアップ。
動物細胞をバイオリアクターで植物ベースの細胞培地を使って増殖する。現在は研究開発のフェーズで、第1の試作品開発に取り組んでいる。
国 | ドイツ |
最新の資金調達 | ― |
総調達額 | ― |
Aleph Farms
ウシから採取した細胞から培養肉を開発するスタートアップ。
2020年10月に宇宙で培養肉を生産する計画「Alepha Zero」を発表。宇宙で得られたノウハウをもとに地球の極地でも高品質な牛肉を「生産」できる世界を目指している。
国 | イスラエル |
最新の資金調達 | 2019年5月
1200万ドル シリーズAラウンド |
総調達額 | 1440万ドル |
Balletic Foods
サンフランシスコ発のスタートアップ。
2017年にシードラウンドで調達しているが、調達額は非公開。
ホームページに情報はほぼなし。
国 | アメリカ |
最新の資金調達 | 2017年
シードラウンド 調達額は非公開 |
総調達額 | 不明 |
BioBQ
ラボ産のブリスケットとジャーキーに取り組むテキサス発のBioBQは、開発を加速させるために出資者を探しているフェーズ。
アメリカ国立科学財団(NSF)のプログラムに申請しており、NSFから資金調達できれば2021年に研究施設を持つ予定。それより早く資金を調達できれば、今年中に研究施設開設に踏み切ると構え。
課題はFBSを使わない安価な培地を見つけること。
国 | アメリカ |
最新の資金調達 | 未実施 |
総調達額 | 未実施 |
Biotech Foods
https://www.biotech-foods.com/
家禽と豚をターゲットにするスペインの培養肉スタートアップ。
Ethicameatというブランドで、本物の肉と価格面で競合できる培養肉をリリースする予定。現在、量産化・規制クリアに向けて取り組んでいる。
国 | スペイン |
最新の資金調達 | 2020年8月
190万ユーロを調達 グラント |
総調達額 | 430万ユーロ |
▶培養材料に取り組むスタートアップ企業3社
ORF Genetics
培養肉の課題の1つ、生産コスト削減に寄与する成長因子を開発するスタートアップ。
幹細胞の増殖と分化をコントロールする役割を持つ高コストな成長因子に代わる、大麦由来の成長因子MESOkineの開発に成功。
牛、豚、鳥用に開発したMESOkineの試験を2021年後半に開始する予定。競合他社と比較して、50%~60%のコストダウンにつながり、今後5年にはさらにコストダウンすると予想される。
国 | アイスランド |
最新の資金調達 | 2013年3月
1250万ISK(約950万円) グラント |
総調達額 | 2億1060万ISK(約1億6千万円) |
Future Fields
培養チキンの独自ブランドを目指していたが、450gあたり約32万円というコスト高のため方向性をシフト。
有用で安価な細胞増殖用培地を開発している。
国 | カナダ |
最新の資金調達 | 2020年4月
12万5000ドルを調達 シードラウンド |
総調達額 | 12万5000ドル |
biftek.co
従来のFBSに変わる培地を開発。
国 | アメリカ・トルコ |
最新の資金調達 | 2020年8月
40万ドルを調達 シードラウンド |
総調達額 | 40万ドル |
▶水産物に特化した培養肉スタートアップ企業3社
BlueNalu
カリフォルニアを拠点とする、さまざまな海産物を開発するスタートアップ。
2020年6月にはそれまでの生産スペースの6倍になる約3530㎡の生産設備の賃貸契約を締結した。この施設には、BlueNaluのキッチンやデモスペースも設けられている。
8月には年間1800万ポンドの海産物を生産する量産化5年計画を発表した。
国 | アメリカ |
最新の資金調達 | 2020年4月
25万ドル グラント |
総調達額 | 2480万ドル |
Finless Foods
サンフランシスコ発の魚を細胞から培養して本物の魚肉を作るスタートアップ。製造手法はメンフィスミーツなど他社と同じだが、魚に焦点をあてている。
国 | アメリカ |
最新の資金調達 | 2020年8月
非公開額 シリーズAラウンド |
総調達額 | 350万ドル |
Wild Type
https://www.wildtypefoods.com/
2016年に設立されたサンフランシスを拠点とするスタートアップ。
魚を細胞から培養して本物の魚肉を開発。現在は寿司にできるサーモンの試作品を開発中。寿司屋や小売へ展開する予定。
国 | アメリカ |
最新の資金調達 | 2019年10月
1250万ドル シリーズAラウンド |
総調達額 | 1600万ドル |
▼代替魚のほかのスタートアップはこちらから▼
※アイキャッチ画像の出典:IDTechEX