代替プロテイン

EU、代替肉表示で動物名など31語の使用制限で暫定合意|強硬案から妥協するも、細胞性食品は制限対象

Foovo(佐藤)撮影/2024年10月・オランダ

欧州連合(EU)が代替肉の表示制限を強める動きを見せている。

EU理事会は3月5日、欧州議会との協議で代替肉の表示制限に関する暫定合意に達したと発表。これにより、植物性食品および培養肉など細胞性食品では、「beef」「pork」「chicken」「steak」「bacon」「liver」「chop」「wing」など、動物名や部位等に関する31語が使えなくなる見通しとなる。

これらの用語は肉製品のみに限定され、植物性食品だけでなく、細胞性食品でも使用は認められない。一方、「burger」「sausage」プレスリリースで挙げられた禁止対象に含まれていない

今回の暫定合意は、禁止用語の「線引き」が行われた形といえる。消費者になじみのある「バーガー」や「ソーセージ」のような表現は維持される一方で、動物そのものや部位を想起させる名称は制限される方向となった。代替肉業界にとっては、商品カテゴリを示す言葉は一部残しつつも、「ステーキ」「サーロイン」といった、肉らしさを打ち出したネーミングの使用は難しくなる。

しかし、筆者が欧州の一部の国のスーパーで見た売り場では、すでに「Vegan」表示や棚分けが進んでおり、植物性食品を本物の動物肉と取り違える場面は想定しにくかった。今回の暫定合意は、誤認防止の必要性に疑問を感じさせるもので、名称制限は企業に不要な負担を強いる可能性がある。

特定の代替肉ブランドに特化した棚 Foovo(佐藤)撮影/2024年8月・フィンランド

一方、今回の暫定合意の内容は、代替肉企業にとっては逆風であることに違いはないが、「不幸中の幸い」ともいえる。ここに至るまでの議論はさらに踏み込んだものだったからだ。

背景には、食品のサプライチェーンにおける農家の地位向上を重視する政治的な流れがある。

近年、EUの農家が直面してきたリスクの増大やコスト上昇などの課題を受け、欧州委員会は2024年12月に農産物の共通市場機構(CMO)規則の一部改正を提案した

2025年10月に提案された修正案113は、そのCMO規則改正案をめぐって欧州議会が採択した交渉方針であり、今回の暫定合意は、その後の協議を経て表示制限の対象が絞り込まれた結果といえる。

修正案113では、「burger」「sausage」「hamburger」まで使用の禁止を提案するという、より広い(厳しい)制限案が示されていた

今回の暫定合意は、当時の強硬案と比較すると、ある程度妥協されたものといえる。EUは、「バーガー」「ソーセージ」という代替食品の一般的な呼称までは禁止せず、動物種や部位に近い表現を禁止対象とした。しかし「ステーキ」「チキン」「ベーコン」などの表示禁止で企業が受ける負担は大きい。

欧州議会はプレスリリースで今回の暫定合意について、「『肉』という名称の保護に関して、本合意は畜産農家にとってまぎれもない成功です。畜産農家の労働の価値を認め、独自のノウハウの結晶である彼らの製品を不当な競争から保護するものです」と述べている。

一方で、欧州消費者団体BEUCは今月5日、今回の暫定合意について「企業に対する規則を複雑にするのではなく、政策立案者は、明確な情報と信頼できるラベルでパッケージを分かりやすくすることで、実際の情報格差を埋めることに重点を置くべきだ」と批判した

暫定合意の採択・発効には、理事会と議会の承認を得る必要があるが、EUが代替タンパク質の表示をめぐり、より厳格なルール形成へ進んでいることは明らかだ。

ProVeg Internationalによると、施行後には企業が在庫を処理し新規則へ適応できるよう、3年間の移行期間が設けられる見通しとなる。技術的詳細は今月13日に最終化される予定で、その後、農業・漁業理事会による正式な採択を経て、欧州議会本会議で最終投票が行われる予定だ。

 

※本記事は、プレスリリース(欧州議会EU理事会)をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像はFoovo(佐藤)撮影

 

関連記事

  1. 海藻由来の代替タンパク質を開発する米Trophic|大豆に代わる…
  2. 銀行による資金回収で窮地:菌糸体代替肉の代表企業Meati、40…
  3. 植物性の全卵を開発するYo Eggが米国進出を実現、ビーガン落と…
  4. 代替卵のUMAMI UNITED JAPAN、植物原料による卵の…
  5. イタリアのDreamfarm、植物性チーズで欧州展開を加速
  6. 米Plantible Foods、ウキクサ由来ルビスコの商用施設…
  7. タイソンフーズが出資するFuture Meatが培養鶏肉のコスト…
  8. 細胞性フォアグラの仏Gourmey、Vital Meatを買収し…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

イスラエル農務省が設立した培養ティラピアを開発する培養魚企業E-FISHient

イスラエルで新たに培養シーフード企業E-FISHientが設立された。イ…

細胞性鶏肉の米UPSIDE Foods、培地に特化した新部門「Lucius Labs」を立ち上げ、ライフサイエンス分野に参入

出典:UPSIDE Foods培養鶏肉(細胞性鶏肉)を開発するアメリカの細胞性食品企業UPSID…

ホールカットの植物サーモンを開発するOshi、年内にアメリカで発売へ

ホールカットの植物由来サーモンを開発するイスラエル企業Plantishは今月、今…

代替カカオ・ココアバターセミナー動画・資料【2025年4月開催】

2025年4月に開催した第17回Foovoセミナーの動画です。使用したセ…

クラフト・ハインツがAIを活用するフードテック企業NotCoと合弁会社を設立

クラフト・ハインツ(Kraft Heinz)は、フードテックのスタートアップTh…

ドイツ企業Infinite Rootsの菌糸体由来肉が韓国上市へ|マイコプロテインの2024年注目トピック

ドイツの菌糸体スタートアップ企業Infinite Roots(旧称Mushlab…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

細胞性食品(細胞培養食品)レポート・予約注文開始

最新記事

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP