代替プロテイン

アニマルフリーな乳タンパク質を開発するイスラエルRemilkが約11億円を調達

 

 

イスラエルを拠点とするRemilkがシリーズAラウンドで1130万ドル(約11億円)を資金調達した。

Remilkは今回の資金で、微生物発酵により開発した乳タンパク質の市場投入を進める予定。

今回のラウンドはイスラエルのベンチャーファンドfresh.fundが主導したほか、CPT CapitalourCrowdProVegHochlandTnuva(ツヌバ)Tempoなどが参加した。

微生物を利用して作られるアニマルフリーな代替ミルク

出典:Remilk

Remilkは微生物発酵技術を使うことで、一匹の動物も使うことなく、牛乳に含まれるものと同等の乳タンパク質を開発している。

簡単にいうと、牛乳と同じタンパク質を作るよう「命令」した微生物に、乳タンパク質を作らせている

代替ミルクと言われるものには、大豆、オート麦、アーモンドなどを原材料とする植物ベースのものがあるが、Remilkの代替ミルクは使用する乳タンパク質が分子的に牛乳に含まれるタンパク質と同一であるのが特徴だ。

Remilkの代替ミルクにはもう1つメリットがある。

微生物発酵がもたらす圧倒的な持続可能性

微生物発酵で作られた乳製品は、畜産業と比べ、必要となる土地、原材料、水がはるかに少ない

Remilkの代替ミルクについていえば、畜産と比べ、必要となる土地はわずか1%、原材料は4%、水は10%とされる。牛から牛乳を生産するのに2,3年かかるのに比べて、時短で生産できるのもメリットとされる。

さらに栄養面・安全面では本物の牛乳より優れている。

コレステロール・乳糖を含まず、畜産で過剰投与が問題とされるホルモン剤も抗生物質も、製造工程で使っていない。温めた時に膜を生成することもないという。

Remilkの共同創業者 Ori Cohavi(左)とAviv Wolff(右)出典:Remilk

Remilkは今回の資金で、微生物発酵技術を用いて、乳製品用のビルディングブロックの生産を加速させるとしている。

ビルディングブロックとは、タンパク質(アミノ酸が50個以上つながったもの)やペプチド(アミノ酸の結合が50個未満のもの)における、鍵となる部分のことを言う。つまり、乳製品を再現するうえで「要」となる部分のタンパク質生産をより強化するということだ。

要となるビルディングブロックを作り出すことで、ミルクのほかに、チーズ、ヨーグルト、クリームなど製品の種類を増やしていきたいと考えている。

Remilkの最終ゴールは既存乳産業を一から作り直すことだ。

代替タンパク質の第3の柱「微生物発酵」

微生物発酵は代替タンパク質の領域において、非常にホットな分野となっている。

投資動向からもそれは明らかだ。

微生物発酵を活用して代替タンパク質を開発する企業が受け取った資金は、2019年には総額2億7400万ドルだったが、2020年の最初の7ヵ月だけで前年比1.58倍の4億3500万ドルなっている。

GFIは、発酵によるタンパク質の生産コストは、動物性タンパク質と同等あるいは低コストになるだろうと予測している。

また、2020年半ばまでに、微生物発酵による代替タンパク質開発に取り組むスタートアップは44社に増えた

2018年の23社から1.9倍に増えたことになる。これら44社のうち21社は2019年~2020年7月に登場したスタートアップだ。

さらに、44社の半数は米国、2番目に多い国はイスラエルとなっている。

この中にはイスラエルのRemilkのほかに、競合他社もいる。

米国・オーストラリアを拠点とするChange Foodsは2019年に創業。微生物発酵によりチーズを開発しており、11月にプレシードで約9100万円を調達した。

このラウンドは申し込みが超過し、当初の目標額を大幅に上回るものだった

Melibioは微生物発酵を使い、ミツバチフリーのハチミツを開発している。多くの農作物の受粉を手助けする役割を担うミツバチを守るために人工ミツバチの開発に乗り出したMelibioも、非公開だが資金調達を実施している。

微生物発酵によるタンパク質生産の王者ともいえるのは、2014年と他者に先駆けて創業し、乳タンパク質でFDAの承認を取得して、アニマルフリーなアイスクリームの市販化に成功しているPerfect Day(パーフェクトデイ)だ。

パーフェクトデイは2020年に、シリーズCラウンドで3億ドルの資金調達に成功している。

Remilkはテルアビブを拠点とするスタートアップ。共同創業者のAviv WolffOri Cohaviが2019年に設立した。

 

参考記事

Remilk Raises $11.3 Million for its Microbial Fermented, Animal-Free Dairy

Israeli Food Tech Remilk Raises US$11.3M To Scale Microbial Fermentation Dairy

$1.5 billion invested in alternative proteins in 2020, including a record $435 million in the next pillar—fermentation

タンパク質分子針の動的機能と細胞制御

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:Remilk

 

関連記事

  1. GOOD Meat、Upside Foodsの2社がUSDAの表…
  2. GOOD MeatとADMが戦略的パートナーシップを締結、培養肉…
  3. 培養シーフードを開発するShiok Meatsが資金調達、シンガ…
  4. 微生物発酵でサステイナブルな着色料を開発するデンマーク企業Chr…
  5. マレーシアの培養肉企業Cell AgriTechが2024年末ま…
  6. 代替母乳のBiomilqがシリーズAで約24億円を調達
  7. 代替肉の米インポッシブルフーズが約560億円を調達、調達総額は2…
  8. 3Dプリンターを活用した培養肉の自動生産を目指して大阪大学・島津…

おすすめ記事

黄エンドウ豆から代替チーズを開発する英スタートアップ、英政府系機関から助成金を獲得

ノッティンガム大学のスピンオフベンチャーであるThe Good Pulse Co…

昆虫で食品廃棄物をアップサイクルするLIVIN Farmsが約8.5億円を調達

代替タンパク質の1つとして昆虫タンパク質生産に取り組むオーストリア企業LIVIN…

バイオテック企業が培養ペットフードを開発するGood Dog Foodを設立

スコットランドのリーディングバイオテック企業Roslin Technologie…

ピザ自販機のカナダ企業PizzaFornoがアメリカへ進出

新型コロナの発生により、自動販売機が新しく生まれ変わろうとしている。日本…

Onego Bio、米ウィスコンシンに精密発酵卵白の工場建設を計画|商用規模のパイロット生産も完了

精密発酵で卵白タンパク質を開発するOnego Bioは、最初の商用規模のパイロッ…

代替脂肪としてのオレオゲルの食品応用における課題と認可の事例|Foovo独自調査

トランス脂肪酸を含まず、飽和脂肪酸が少ない固体脂肪の代替品として近年、オレオゲル…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(09/16 15:53時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(09/17 02:15時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(09/17 05:56時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(09/16 21:54時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(09/16 13:52時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(09/17 01:11時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP