代替プロテイン

6つの豆タンパク質から代替魚を開発する米Good Catch、カナダ・欧州へ進出

 

FAOの「世界漁業・養殖業白書(2018)」によると、2015年の水産資源は「漁獲量の生産量に余裕がある状態」の割合が7%しかないのに対し、「上限近くまで漁獲され、これ以上の生産量増大の余地がない状態」が59.9%、「過剰漁獲」が33.1%を占める。

つまり、水産資源の約90%が完全に利用されているか枯渇しているか、または乱獲されている

持続可能な状態にある海洋水産資源(グラフの青色部分)は、1974年の90%から2015年には66.9%まで落ちており、減少の一途をたどっている

このままではいずれ水産物が獲れなくなる可能性があり、海洋のプラスチック汚染問題に加えて、水産資源の枯渇は深刻な問題となっている。

こうした持続不可能な生産システムに歯止めをかけるために、世界各国でスタートアップ企業が動き始めている。

その1つが、今回紹介する代替魚の代表プレーヤーGood Catchだ。

6つの豆タンパク質から代替魚を開発

出典:Good Catch

Good Catchは2016年に設立されたアメリカのスタートアップ企業で、植物ベースの代替魚を作ることで「犠牲なき水産物」を提供したいとしている。

Good Catchは

●細長く刻まれたツナ(Naked in Water、地中海、Oil & Herbsの3つの味)

●クラブケーキ(カニ肉をパン粉、牛乳などと混ぜて作るアメリカ料理)

●バーガー用のフィッシュパテ

 

の3商品を開発している。

すべて100%植物材料を使っており、クラブケーキとフィッシュパテは冷凍食品だ。

主原料は下記の6つの豆植物を使っている。

えんどう豆

大豆

ひよこ豆

レンズ豆

そら豆

白いんげん豆

 

同社ホームページによると、6つの豆タンパク質を独自の比率でブレンドすることで、水産物そっくりな食感を再現しているという。

フィッシュフリー・代替魚と聞くと、魚由来の有用な成分であるDHAなどが含まれないと思うかもしれないが、しっかり入っている。

Good Catchは海藻由来の藻類オイルから、DHAとオメガ3脂肪酸を抽出している。

6つの豆タンパク質をブレンドすることで食感を再現し、魚由来の有用成分も含んだ製品は、現在、米国・カナダ・ヨーロッパで販売されている。

2020年にカナダ・欧州へ進出

出典:Good Catch

2020年はGood Catchにとってニュースの連続だった。

2020年1月にイギリスの小売大手テスコ300店舗で販売を開始

同年10月には、カナダの大手小売Loblawsを含む640店舗で取り扱いを開始。カナダで2番目に大きいスーパーSobeys450店舗にも導入予定であることを発表している。

また、アメリカの100%プラントベースのレストランVeggie Grillと提携し、Good Catchの代替ツナを使ったメニューを販売した。これはGood Catchが飲食店と提携した初の事例となる。

出典:Good Catch

12月にはオランダ・スペインへ進出

オランダ最大のスーパーマーケットAlbert Heijnをはじめとする70店舗、スペインのスーパーマーケットSanchez Romeroで販売を開始した。

欧州進出に先立ち、自社のECサイトもオープン。これにより、米国全土でGood Catchの代替ツナをネットで購入できるようになった。

ECサイトでは現在、代替ツナのみを販売しているが、今年中に他の製品の取り扱いも開始する予定だ。

Good Catch はさらに、米オハイオに約4000㎡の生産工場を建設し、全面稼働している。

この工場では代替ツナ、クラブケーキ、フィッシュパテなどを製造し、さらなる代替魚の需要にこたえるとしている。年間1億ドル(約100億円)の事業収益を生み出すと予想される。

このほか、Good Catchの親会社となるGathered Foodsは、昨年3月に北米最大の水産物加工会社Bumble Bee Foodsと提携を発表

この提携によって、Good Catchの商品がアメリカ、カナダでさらに多くの消費者にリーチできるようになった。

このように、2020年は国内外の販売ルート拡大で躍進が続いた。

これまでに5回の資金調達ラウンドを実施

Good Catchはこれまで5回の資金調達ラウンドで総額5070万ドルを調達している。

主な出資者には、アメリカのベンチャーキャピタルRocana Venture Partners、代替製品に力を入れるベンチャーキャピタルStray Dog Capital、動物農業を代替するサービスに投資するNew Crop Capitalなどがいる。

代替タンパク質市場では、代替魚が占めるシェアはまだ全体の1%にすぎないが、ざっと数えるだけで25社のスタートアップが代替魚の開発に取り組んでいる

この中には、スウェーデンのHookedのようにレストランでの販売を開始するとしている企業もある。

日本では代替肉という言葉を耳にすることが増えたが、「代替魚」「フィッシュフリー」という言葉は聞く機会はほぼない。

刺身発祥の地・日本からも代替魚に取り組む企業が増えてくれたら嬉しい。

 

参考記事

Good Catch’s Vegan Seafood Expands to Europe

Good Catch Foods Opens 42,500 Square Foot Plant-Based Seafood Facility

 

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:Good Catch

関連記事

  1. 上海の培養肉企業CellXがパイロット工場を開設、年内に米・シン…
  2. 昆虫で食品廃棄物をアップサイクルするLIVIN Farmsが約8…
  3. デンマークの21st.BIO、アメリカで精密発酵ホエイのGRAS…
  4. アレフ・ファームズが培養ステーキ肉「Petit Steak」を発…
  5. 培養肉モサミートが培養脂肪用培地の大幅コストダウンに成功
  6. 3Dプリンターで次世代ステーキを作るRedefine Meatが…
  7. 代替卵「JUST Egg」の欧州導入に向け、イート・ジャストとV…
  8. デンマークの精密発酵企業21st.BIO、持続可能な乳タンパク質…

おすすめ記事

発酵タンパク質投資が復調:欧州での上半期投資額が前年超え

欧州の微生物発酵企業に対する資金調達が増加している。GFIによると、20…

マメ科植物の種子から植物性ホイップクリームを開発するANDFOODSが約4億円を調達

ニュージーランドのフードテック企業ANDFOODSは、マメ科植物の種子からアニマ…

独自ヘムを開発する豪代替肉v2foodが約58億円を調達、中国・欧州進出を目指す

オーストラリアの主要代替肉プレーヤーv2foodがシリーズBで7200万豪ドル(…

インド発!ドーサ、ロティ、ビリヤニを作るMukunda Foodsの自動調理ロボット

日本でも人気の高いインド料理。このインド料理を自宅で手間をかけずに作れる…

乳業大手フォンテラ、精密発酵・バイオマス発酵企業2社と提携(Nourish Ingredients・SuperBrewed Food)|排出量削減に向けた新たな一歩

ニュージーランドの大手乳業会社フォンテラが環境負荷の軽減に向けた取り組みを強化し…

Betterland foodsがパーフェクトデイのアニマルフリーなホエイタンパク質を使ったチョコレートバーを発売

持続可能性を重視した食品を開発するスタートアップ企業のbetterland fo…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(06/18 15:20時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(06/19 01:15時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(06/19 05:15時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(06/18 21:22時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(06/18 13:25時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(06/19 00:28時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP