代替プロテイン

バイオミメティクスに着想を得た代替肉企業Plantedが約19億円を調達

 

スイスの代替肉企業Plantedが今月、シリーズAラウンドで1700万フラン(19億円)を調達した。

これは昨年の3月に実施されたシードでの10万フラン(約1100万円)に続くもので、これまでの調達総額は2420万フラン(約28億円)となる。

ETH ZürichのスピンオフベンチャーであるPlantedは、ブレイクスルーを実現する新たな手段として期待が寄せられるバイオミメティクス(生物模倣)に着想を得て生まれた代替肉スタートアップ企業

設立から2年で、欧州3000箇所にまで展開を拡大している。

今回の資金でまずヨーロッパの近隣国(国は非公開)へ展開を拡大した後には、海外進出も視野にいれていることを明らかにした。

最小限の原料で代替肉を作るPlanted

出典:Planted

同社はえんどう豆、えんどう豆繊維、ひまわり油、水など最小限の原料を使った代替チキンを開発している。

材料を最小限にすることにこだわったほか、本物のチキンのようにニュートラルな風味にし、食感を再現している。

精巧なプロセス技術によって、魚、チキン、豚肉、牛肉の食感をほぼ完全に再現できるほか、味、外観、栄養価においても畜産肉を模倣しているという。

Plantedの公式サイトによると、同社は代替チキンの製法に湿式押出成形という技術を採用。

タンパク質粉末、野菜繊維、水、菜種油をエクストルーダー(押出機)に加え、加熱しながら混ぜて押し出すことで、肉を構成する筋繊維の構造を再現している。

これを適正なサイズにカットし、商品によっては、カットした押出物にビタミンB12などの栄養成分を含ませるためにマリネードする。

ヌタウナギの粘液にヒントを得る

出典:Planted

興味深いことに、Plantedの代替チキンはヌタウナギの粘液に着想を得て誕生した。

深海に生息する、生きた化石ともいわれるヌタウナギは皮膚をヌタと呼ばれる粘液に覆われている。

この粘液が当時、ETH Zurichの食品科学研究所にいたLukas Böni氏とErich Windhab氏の2人の注意をひいた。

「この驚くべき天然のハイドロゲルと、Lukasのバイオミメティクス的アプローチのおかげで、肉に似た構造物について理解が深まり、いかにしてそれを模倣するか、そしてバイオマテリアルの視点から最終的にどう改善するのか、ヒントになりました」(共同創業者Pascal Bieri氏)

バイオミメティクス(生物模倣)とは?

バイオミメティクスとは生物模倣ともいわれ、生物の形態や構造、それによって発現される機能に着想を得て、新しい技術や商品づくりに生かすことをいう。

近年、市場規模も拡大しており、自然の知恵を借りた新たなブレイクスルーの手段として注目されている。

有名なものでは、ハスの葉が水をはじくロータス効果を利用した傘、ビニールハウス、ヨーグルトの蓋の裏がある。

また、天井を歩くヤモリから、ヤモリの足裏にあるナノ繊維構造と、壁との間に働くファンデルワールス力に着想を得て開発された、粘着剤を使わない接着テープも有名な事例だ。

スイスのPlantedも見た目からはとても食品に関連しそうにない、ヌタウナギの粘液から代替肉開発のヒントを得た。

のちにEric Stirnemann氏、Pascal Bieri氏も加わり、1年半の開発を経て2019年に最初の商品を発売した。

設立から2年で欧州3000箇所に拡大

Planted の代替チキンは、2年前にはヨーロッパの数箇所のレストランに導入されているに過ぎなかった。

現在はスイス、ドイツ、オーストリアの3000以上の小売店、レストランで販売される規模にまで拡大した。このほか、自社のD2Cサイトでも販売している。

同社が最近発売したplanted.pulledは二重の意味でサステイナブルだ。

この商品の原料に使用するひまわりタンパク質ひまわり油の生成で残ったものを使用しているため、アップサイクルも兼ねている。

今月のラウンドはVorwerk VenturesBlue Horizon Venturesが主導し、既存投資家のほかサッカー選手Yann Sommer氏も参加した。

今回調達した資金で、技術スタッフを増やすほか、生産能力を1時間あたり0.5トンまで増やし、ヨーロッパや海外からの需要にこたえられるようにするとしている。

また、既存の商品を改良するほか、発酵技術を活用した新しいプラントベース商品を開発するとしている。

出典:Planted

現在、Plantedの商品にはプラントベースのチキンプルドポーク(豚肉を時間をかけて煮込んだ後、細かく裂いてバーベキューの味付けを施したアメリカの代表的料理)、ケバブがある。

それぞれの商品はエンドウ豆、オーツ麦、ひまわりなど異なる原料を使用しており、合成添加物は使用していない。

誕生から2年で欧州3000箇所にまで展開を拡大したPlantedの商品が海外市場へ進出するのは時間の問題だろう。

 

参考記事

Swiss maker of meat alternatives Planted will expand and diversify with 18m Serie A/

Planted joins the meatless meat melee with its pea-protein ‘chicken’

Swiss Startup Planted Raises $18M for Plant-Based Meat Alternatives

Swiss Plant-Based Meat Makers Planted Bags US$18M Series A To Fuel Global Expansion

 

関連記事

 

関連記事

  1. 培養サーモンの米WildTypeが培養シーフード業界史上最大の約…
  2. 代替マグロの切り身を開発する米Impact Food、年内の市販…
  3. Formoが微生物発酵によるアニマルフリーなクリームチーズを発表…
  4. 代替魚・代替シーフードベンチャー企業25社まとめ【2021年版カ…
  5. Nature’s Fyndが菌類由来の代替肉を米ホー…
  6. インポッシブルフーズの脅威になるか?スピルリナ由来のヘムを開発し…
  7. ブラジル企業Cellva Ingredients、培養豚脂肪に続…
  8. 培養魚を開発するAvant MeatsがシンガポールのA*STA…

おすすめ記事

ドイツのBettaF!sh、海藻と植物を使用した代替サーモンSAL-NOMを発売

ベルリンを拠点とする代替魚スタートアップBettaF!shは今月、代替マグロ製品…

【現地レポ】シンガポール・スーパーマーケットでの精密発酵食品の販売状況を調査

微生物を工場として特定成分を生成する精密発酵に対する関心は国内でも高い。最近では…

Steakholder Foodsが台湾進出に向け、台湾の工業技術研究院と提携

独自の3Dプリンターで植物由来や細胞由来の代替肉・代替魚を開発するイスラエル企業…

精密発酵の米パーフェクトデイ、約130億円の資金調達とともに創業者が退任、暫定CEOが就任

精密発酵による食品開発を牽引してきたパーフェクトデイ創業者のRyan Pandya氏(左)とPeru…

代替肉のRedefine Meatがイスラエルで5つの新商品を発売、年内の欧州進出を目指す

3Dプリンターを活用するイスラエルの代替肉企業Redefine Meat(リディ…

そら豆を原料に代替卵を開発するPerfeggtが約4.9億円を調達

ドイツの代替卵スタートアップ企業Perfeggtは先月、プレシードラウンドの調達…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/21 14:06時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/20 23:44時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/21 03:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/20 20:01時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/21 12:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(11/20 23:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP