代替プロテイン

代替肉の「テスラ」を目指す上海の代替肉企業YouKuaiが約7.9億円を調達

 

「10年前にテスラが登場したとき、テスラは車を持つ人すべてをターゲットにはしていませんでした。しかし、テスラの最終目的はあらゆる車を電気自動車にすることです。

これは私たちがやっていることにとても似ています。

当社の目的はZrouをあらゆるキッチン、食卓に、毎月登場させること。これが持続可能な未来につながるからです」。

こう語るのは中国の植物肉スタートアップYouKuaiの創業者・CEOであるフランクリン・ヤオ氏(Franklin Yao)。

YouKuaiは植物性の代替豚肉製品Zrouを開発する、2019年創業の上海企業。

大豆、ココナッツオイル、コンニャクを原料とするZrouは、100gあたりのタンパク質10gを含む。

Zrouはすでに、中国のホテル、インターナショナルスクール、オフィスの食堂など100箇所で提供されている。

この中には、上海のディズニーランドも含まれ、今後はさらに500店のホテルチェーンと提携し、Zrouを提供していく予定。

フランクリン・ヤオ氏 出典:YouKuai

すでに中国国内で展開しているYouKuaiは、市場参入にあたり効率的なアプローチを採用している。

ミシュラン星付きレストラン、高級リゾート、有名シェフとのコラボは、他社スタートアップの多くも取り入れている戦略だが、YouKuaiはさらにインフルエンサーSNSによるマーケティング戦略も採用。

インフルエンサーやアーリーアダプターから構成されるコミュニティを作り、ブランド認知拡大に力をいれている。こうすることで、プラントベースへの移行に意識の高い若年層へ訴求している。

YouKuaiは今月、シリーズAラウンドで730万ドル(7億9000万円)を調達した。

シンガポールを拠点とする投資会社TRIRECが主導し、個人投資家Thibault Villet氏(Mei.comの共同創業者)が参加した。この調達により、これまでの調達総額は880万ドル(約9億6000万円)となった。

YouKuaiは調達した資金で、中国・海外での展開を拡大するほか、代替肉を使ったインスタント食品も発売したいとしている。

出典:Zrou

YouKuaiは2022年には海外進出を目指している。

ロンドン、マレーシア、香港、マカオ、シンガポール、ニューヨーク、ロサンゼルス、ミラノの販売業者と交渉を開始していることから、来年にはアジア、イギリス、アメリカ、イタリアのいずれの、あるいは複数国でデビューするかもしれない。

中国は世界最大の豚肉消費国で、豚肉消費量は世界の半分を占める。

中国ではアフリカ豚コレラによる豚肉価格の高騰、供給不足、豚の大量殺処分が問題視されており、豚肉のほとんどを国内産でまかなってきた中国にとって代替肉は有望な解決方法となる。

同じ問題意識から、中国では代替肉に取り組むスタートアップが相次いで誕生しており、Hey MaetHero ProteinHaofoodZhenmeatグリーンマンデーなど競争は激しくなっている。

巧みなマーケティング戦略で急速に展開するYouKuaiが「上海発の世界のフードブランド」になれるのか、今後が注目される。

 

参考記事

Shanghai Startup YouKuai Closes US$7.3M Series A To Expand Zrou Plant-Based Pork Brand

Chinese plant-based meat startup bags $7.3m to drive its ‘Tesla of food’ dream

関連記事

 

アイキャッチ画像の出典:Zrou

 

関連記事

  1. アレフ・ファームズがスイス当局に培養肉の申請を提出、欧州で初
  2. 酵母から脂肪を開発するCultivated Bioscience…
  3. フランスの培養肉企業Vital Meat、シンガポール当局へ承認…
  4. 味の素、CO2由来の微生物タンパク質「ソレイン」使用の新製品をシ…
  5. 菌糸体ベーコンを開発するAtlast Foodが社名をMyFor…
  6. ドイツのThe Cultivated B、EFSAに向けた培養ソ…
  7. 培養肉用の安価な食用足場を開発するエストニア企業Gelatex|…
  8. Fooditiveが精密発酵による代替ハチミツ開発を発表

おすすめ記事

独Cultimate Foods、培養脂肪を使用したハイブリッドバーガーを発表

ドイツの培養脂肪企業Cultimate Foodsは先月、アクセラレーターPro…

米Algae Cooking Club、微細藻類由来の食用油を発売

アメリカのスタートアップ企業Algae Cooking Clubは先月、微細藻類…

培養サーモンの米Wildtype、レストラン・小売との提携を発表

細胞培養による培養サーモンを開発するアメリカのWildtype(ワイルドタイプ)…

Veganzが開発したシート状の代替ミルク製品Mililk|環境負荷をさらに軽減した代替ミルク

国内スーパーでも定番となった代替ミルク。目にする製品はほぼ、紙パックに入ったすぐ…

サケ・マス・コイを開発する欧州初の培養魚Bluu Biosciencesが約9億円を調達

ドイツの培養魚スタートアップ企業Bluu Biosciencesが700万ユーロ…

イスラエルの精密発酵企業Imagindairyが米国でGRAS自己認証を取得、乳製品では3社目

イスラエルの精密発酵企業Imagindairyがアメリカ食品医薬品局(FDA)の…

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・予約注文開始のお知らせ

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(11/21 14:06時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(11/20 23:44時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(11/21 03:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(11/21 20:01時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(11/21 12:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(11/20 23:02時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP