代替プロテイン

細胞性牛肉のOmeatがEvergreen Selectに社名変更 |培養肉投資が1億ドル割れの中、約9億円を追加調達

 

2025年、培養肉・シーフード企業など細胞性食品への投資額は7,400万ドル(約114億円)となり、2019年以来、初めて1億ドルを下回った

こうした逆風のなか、細胞性牛肉を開発する米国スタートアップ企業Omeatは今月、社名を「Evergreen Select」に変更し、追加で600万ドル(約9億3,000万円)を調達した

社名変更と資金調達を通じて同社が打ち出したのは、培養肉を「好奇心の対象」ではなく、変動の大きい牛肉供給を下支えするための現実的な「信頼できるインフラソリューション」として位置づける戦略だ。

アメリカ農務省(USDA)によれば、アメリカの牛肉・子牛肉価格は2025年12月時点で前年比16.4%の上昇となった

イギリスでも2024年秋以降、牛肉価格の上昇が再び顕著となっており、英国国家統計局(ONS)によると、2025年11月に前年比約28%上昇が確認されており、動物肉は必ずしも安定的に安い環境ではない

CEO(最高経営責任者)のJim Miller氏は、現在の動物性タンパク質供給の課題は「予測可能性の欠如」だと指摘し、細胞培養技術により一貫した品質・コスト・味・食感を備えた培養牛肉を提供できることが自社の強みだとしている。

同社は、既存の食肉事業者と競合するのではなく、既存のサプライチェーンに組み込まれる形で市場参入を目指す。具体的には、ブレンド型の牛ひき肉製品の上市を進めており、すでにアメリカとシンガポールの食肉流通業者と連携。両地域で規制当局の審査も進んでいるという。

Evergreen Selectは、組織工学・バイオマテリアルを専門とするAli Khademhosseini博士によって2021年に設立された。

出典:Evergreen Select (Omeat)

2023年8月には、FBSに代わる血漿由来の細胞培養サプリメント「Plenty」の販売を開始し、11月にはロサンゼルス郊外でパイロット工場の完成・開設を発表した。同工場は約1,400㎡、10,000Lのバイオリアクターを複数基収容し、年産最大400トンの培養牛ひき肉生産を想定していた

AgFunder過去報道によると、Evergreen Selectは2024年、職場環境をめぐる社員からの苦情や人員削減を背景に、創業者のAli Khademhosseini氏はCEO職を退いた。

現在のCEOはJim Miller氏であり、元FDA規制官であり、Upside Foodsに7年間従事した経験のあるEric Schulze氏が昨年5月から最高技術責任者を務めている。

同社の調達総額は5,500万ドル(約85億5,900万円)を超えており、今回の調達で上市に向けて加速を図る。

一方、アメリカでは工場を完成させ、販売できる状態に到達したBeliever Meatsの終了事例もみられる。

牛肉に取り組んでいたOrbillion Bioは買収され、SciFi Foodsは事業を終了するなど、「牛肉」に焦点をあてるプレイヤーの統合・撤退事例もある。イスラエルのアレフ・ファームズは2024年1月にイスラエルで細胞性牛肉の承認を取得したものの、まだ販売は実現していない。

今後の注目は、Evergreen Selectがいつ、シンガポールまたはアメリカで販売を実現できるかだ。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Evergreen Select (Omeat)

 

関連記事

  1. 細胞性ミルクのSenara、2030年に市場投入へ|バイオリアク…
  2. 【世界初】米Mission Barnsの培養脂肪、FDAの安全性…
  3. 6つの豆をベースに代替魚を開発する米Good Catchがシンガ…
  4. 天然には存在しない「新しい酵素」を開発するEnzymitが約6.…
  5. アレフ・ファームズの細胞性牛肉、ブラインド試食で従来牛肉と同等の…
  6. 韓国が培養肉の申請プロセスを明確に:培養肉企業の参入を促進
  7. 微生物発酵で飲食用のアニマルフリーなコラーゲンを開発する米Gel…
  8. スウェーデンのMelt&Marble、精密発酵脂肪でG…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

おすすめ記事

代替油脂のパイオニアCUBIQ Foodsが約7.8億円を調達、カーギルと戦略的パートナーシップを締結

写真はイメージ植物肉の需要増加に伴い、サステイナブルで本物に近い代替油脂の開…

Motif FoodWorks、分子農業でヘムを開発するためパートナーシップを拡大

アメリカ、ボストンを拠点とするフードテック企業Motif FoodWorksは、…

チリのフードテックNotCoが約89億円の資金調達に成功、米国進出を目指す

チリのフードテックスタートアップのNotCoは、新たに約89億円の資金調達に成功…

細胞農業によるキャビア製造でGeneus Biotechがヴァーヘニンゲン大学と研究提携

細胞農業企業の多くが牛肉や鶏肉、チーズなどの製造に力を注ぐ中、高級食材であるキャ…

ビヨンドミートが日本市場進出へ|U.S.M.Hと独占販売契約を締結

アメリカの代替肉企業ビヨンドミートが日本市場に参入する。ユナイテッド・ス…

Remilkがカナダで精密発酵乳タンパク質の認可を取得

精密発酵で乳タンパク質を開発するイスラエルのRemilkは今月5日、カナダ保健省…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

細胞性食品(細胞培養食品)レポート・予約注文開始

最新記事

精密発酵・定期動向レポート発売のお知らせ

代替カカオレポート・好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

会員サービスFoovo Deepのご案内

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP