アップサイクル

農作物の残り物を有用成分にアップサイクルするComet Bioが約24億円を調達

 

農業廃棄物をアップサイクルしてさまざまな成分に変えるComet BioがシリーズCラウンドで2200万ドル(約24億円)を調達した。

このラウンドはOpen Prairieが主導し、the Louis Dreyfus CompanyBDC CapitalBDC Capitalが参加した。

カナダ、アメリカ、イタリアに拠点を構えるComet Bioは独自の抽出技術により、農作物の残り物を機能的で健康なさまざまな成分にアップサイクルしている。

商品には、宿主の健康を改善する食物繊維アラビノキシランであるArrabina、代替シロップのSweeterraがある。

出典:Comet Bio

Arrabinaアラビノキシランという成分で、1日3.4グラムで、血糖値を健康に維持し、腸内の有益なビフィズス菌の増殖に役立つことが臨床的に証明されている。

Sweeterraは従来のシロップよりカロリー、糖分が少なく、食物繊維が多く含まれている。

特に、Arrabinaを構成するアラビノキシランは、並外れたプレバイオティクス的効果があるにもかかわらず、効率的に抽出することができず、広く使用されてこなかったものだという

 プレバイオティクスとは、宿主に有利な影響を与え、宿主の健康を改善する難消化性食品成分のことをいう。(出典:腸内細菌学会

 

天然資源保護協議会(Natural Resources Defense Council)によると、現在、世界で生産される食品の40%が廃棄されている。同時に、米国では人口の30%以上が栄養不足、肥満、太りすぎであると考えられている。

つまり、現在のフードシステムが、かつてないほど多くの食料廃棄物を出しながら、十分な栄養を提供できていないという課題を抱えている。

Comet Bioはフードシステムで生じる廃棄物から栄養を抽出することで、食品廃棄物・栄養不足という2つの課題に取り組む。特許取得済みの独自技術により、環境問題に対処しながら、栄養価の高い新しい成分を生み出している。

出典:Comet Bio

廃棄される食品をアップサイクルして、新しい素材に変える試みは増えており、さまざまな事例が登場している。

Supplantはとうもろこしや小麦の非食用部分を活用して植物繊維由来の砂糖を開発している。

RINDは廃棄される果物からさまざまなドライフルーツスナックを開発。昨年には売上が前年比5倍を記録し、急成長を遂げている。

デンマークのKaffe Buenoはコーヒー副産物(かす)を使って化粧品や食品を開発している。ポーランドのNapiFerynはなたね油粕からタンパク質粉末を開発している。

Comet Bioは調達した資金を生産施設に充て、成分の供給量を増やす。

プラントベース食品への移行は世界的に高まりを見せており、GFIによると、アメリカの小売売上高は2020年に70億ドルにまで成長している。

プラントベース食品が増えると、使用する植物原料が増えるため、生産過程で発生する「廃棄物」も増える。

農業廃棄物を原料とするComet Bioにとって、プラントベース食品の高まりは成長要因となりそうだ。

 

参考記事

Comet Bio Raises $22M Series C for its Upcycled Ingredients

Comet Bio Announces $22M Round of Equity Financing

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Comet Bio

 

関連記事

  1. 味の素、CO2由来のソレイン使用の”第2弾”商品をシンガポールで…
  2. ショウジョウバエで成長因子を開発し、培養肉のコスト削減に挑むFu…
  3. 農水省がマイコプロテイン、料理ロボット、代替肉、廃棄野菜活用など…
  4. 米Compound Foods、豆を使わないコーヒー・カカオの原…
  5. カカオのいとこ「クプアス」でつくる持続可能な代替チョコレート|オ…
  6. CO2を原料にタンパク質開発する米NovoNutrients、カ…
  7. ドイツのNosh.bio、麹由来のハイブリッド肉をレストランで限…
  8. 副産物を価値に──オランダのMaGie Creations、ビー…

おすすめ記事

おがくずと微生物で脂肪を開発するエストニア企業ÄIOが約1.4億円を調達

エストニアの代替油脂スタートアップ企業ÄIOは今月、100万ユーロ(約1億400…

話題のビーンレスコーヒーATOMO COFFEEを渋谷で飲んでみた|ATOMOの次の戦略

昨年8月、豆を使わないエスプレッソ粉「ATOMO COFFEE」が日本に初上陸し…

【現地レポ】シンガポールで培養ウズラ肉を実食|Vowの「Forged Parfait」

オーストラリア企業Vowがシンガポール食品庁(SFA)から培養肉の販売認可を得た…

イスラエルのImagindairyは精密発酵でアニマルフリーな乳製品を開発

微生物発酵技術によるアニマルフリーな乳製品開発が盛り上がる中、イスラエルのスター…

シンガポールが「30 by 30」目標を変更──2035年までに食物繊維20%・タンパク質30%を国内供給へ

出典:GOOD Meat培養肉などの細胞性食品や精密発酵で生産された乳タンパク質など、世界でも早…

「米ぬか」をタンパク質源に:食糧と競合しない米タンパク質で収益性の高い稲作へ|FABEXセミナーレポ

畜産に伴う環境負荷、世界人口の増加による食料需要に対応するため、代替タンパク質は…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

最新記事

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(12/18 16:25時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(12/19 03:05時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(12/19 06:40時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(12/18 22:25時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(12/18 14:24時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(12/19 01:48時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP