カリフォルニアを拠点とする培養肉スタートアップUPSIDE Foodsが、ミシュラン星付きシェフDominique Crenn氏と提携したことを発表した。
Crenn氏は、サンフランシスコでレストランAtelier Crennを運営する。これにより、FDAの承認を得られ次第、UPSIDE Foodsの培養鶏肉がサンフランシスコのレストランで提供されることになる。
Crenn氏はUPSIDE Foodsの培養鶏肉のレシピ開発も支援する。UPSIDE Foodsは、他のシェフやレストランとの提携も進め、食料品店にも展開を拡大していく予定。
以前はメンフィス・ミーツとして知られていたUPSIDE Foodsにとって、これは初のパートナーシップとなる。UPSIDE Foodsは2015年にサンフランシスコに設立された培養肉企業。
2013年に培養肉ハンバーガーを発表して話題となったモサミートと並ぶ培養肉の老舗企業とされる。2016年に世界初の培養ビーフミートボール、2017年に世界初の培養鶏肉と培養鴨肉を発表し、2020年1月にはシリーズBで1億6100万ドル(約176億円)という巨額の資金調達に成功した。
今年5月の社名変更時に、消費者向けの最初の商品が培養鶏肉となることが発表された。
培養肉の市販化には、法規制、大量生産、コストダウン、消費者受容などの課題が伴う。UPSIDE Foodsはこの数年でコストを「劇的に削減」し、現在、サンフランシスコベイエリアに大規模な生産工場を建設している。
培養肉を広く普及させるにはまだ課題があるが、今回のパートナーシップは、法規制をクリアした後、消費者に培養肉を提供し、認知してもらうための重要なステップとなる。
UPSIDE Foodsと提携したDominique Crenn氏は、アメリカで最初にミシュラン星付きシェフとなった女性シェフ。同氏が運営するレストランAtelier Crennはアメリカトップレストランの1つに常にランクインしており、サステイナビリティの観点から、2019年から食肉を提供していない。
培養肉が普及すると、これまでの食肉生産に不可欠であった広大な土地、大量の水が必要でなくなり、温室効果ガスの排出量を減らせるほか、動物に由来する感染症の発生を防ぐことができる。
これまでに培養肉の販売を認めた国はシンガポールのみ。昨年12月にアメリカのイート・ジャストが世界で初めて培養肉をレストランで提供した。アメリカでの販売が承認されると、Crenn氏との提携が、培養肉に対する消費者受容向上に寄与する可能性がある。
培養肉・植物肉企業の多くは、市場投入のファーストステップとしてレストランでの提供を選択する。植物ベースの代替肉企業インポッシブルフーズも、初期の市場参入では高級レストランに導入した。
これから市場投入を目指すFinless Foods、Orbillion Bio、SeaWith、インテグリカルチャーなどの培養魚・培養肉企業もレストランを通じて消費者に商品を届けようとしている。UPSIDE Foodsは、他のシェフやレストランとの提携も進め、次いで、食料品店に展開を拡大していくとしている。
UPSIDE FoodsはまだFDAの販売許可を取得していないが、承認されると、UPSIDE Foodsに続き、アメリカで培養肉を販売する動きが加速すると考えられる。
今年から来年にかけて、イート・ジャスト(培養肉)、Future Meat(培養肉)、Finless Foods(培養魚)、Wildtype(培養魚)、BlueNalu(培養魚)などの商品の市場投入が進むことが予想される。
シンガポールに続き、カタールでも培養肉の販売を認めようとする動きが進んでおり、来年には複数国で培養肉が販売される可能性がある。
参考記事
San Francisco Restaurant to Serve UPSIDE Foods’ Cultivated Chicken
Upside Foods partners with chef Dominique Crenn to serve its cell-based chicken
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アイキャッチ画像の出典:UPSIDE Foods