代替プロテイン

イート・ジャストが中国ファンドから約34億円を調達、代替卵JUST Eggで高級鶏卵と同等価格を実現

 

代替卵と培養肉を手掛ける米フードテック企業イート・ジャストが中国のプライベート・エクイティ・ファンドC2 Capital Partnersと戦略的パートナーシップを締結し、2500万ドル(約34億円)の出資を受けた

C2は企業が中国で事業を拡大するための資金や支援を提供しており、代替タンパク質への出資は今回が初となる。

イート・ジャストが中国ファンドから約34億円を調達

中国でキッチンカーでの販売の様子 出典:イート・ジャスト

イート・ジャストは植物由来の代替卵に加え、細胞培養による培養肉を世界で初めて販売した企業でもある。

緑豆を主原料とした代替卵JUST Eggは2019年にアリババが所有する天猫(Tmall)など中国のECサイトで販売され、上海を中心にブランドと事業を成長させてきた。

2020年12月にはシンガポールのレストランで世界に先駆けて培養肉GOOD Meatを販売。プレスリリースによるとイート・ジャストは、アメリカで培養肉の上市を目指すほか、中国当局と「準備交渉」を行っている。C2との提携は、同社の培養肉を中国で上市し、中国市場で展開することを視野においていると思われる。

中国は世界最大の卵生産国であると同時に、世界最大の食肉消費国でもある。中国で生産される卵は世界市場の30%以上を占め、肉消費では産業の約30%を占めている。

中国でキッチンカーでの販売の様子 出典:イート・ジャスト

中国は、今年発表した5カ年計画に初めて「培養肉」の文言を盛り込んだ。5カ年計画は、中国の発展と経済の青写真といえ、中国の長期的な経済目標を設定した計画となる。

中国のこうした動きについて、イート・ジャスト共同創業者兼CEOのジョシュ・テトリック氏は当時、「培養肉に対する中国の規制スケジュールを加速させる可能性」があるもので、「代替タンパク質に歴史上、最もとは言わないにしても、重要な政策活動の1つ」だとコメントしていた

中国の政策に加えC2との提携により、イート・ジャストの中国市場での培養肉上市に弾みがつきそうだ。

高級鶏卵と同等価格を実現

出典:イート・ジャスト

同社は今月、JUST Eggが高級鶏卵と同等価格を実現したことを明らかにした。

Foodnavigatorの報道によると、JUST Egg(12オンス・液体卵製品)の価格は3.99ドルまで下がった。これは12個入りの高級鶏卵製品の平均小売価格に匹敵するという。

多くの食品メーカーはインフレに対処するため、製品の値上げを余儀なくされている。

出典:イート・ジャスト

IRiのデータによると、アメリカでは2022年7月の冷蔵卵の小売価格は前年同期比で46.8%上昇している。前月比では5.9%の上昇となる。これに対しイート・ジャストは値下げの取り組みを順調に進めており、製品価格を値上げする計画はないという。

2019年にアメリカで小売販売を開始してから価格を着実に下げられた要因としてテトリック氏は、タンパク質分離コストの削減と、国内外で高まる需要を満たすための製造能力・生産能力の増加に対する取り組みだと回答している。

2019年に緑豆タンパク質単離物の生産に特化した30,000平方フィートの米施設を買収するなど、早期かつ継続的なスケールアップの取り組みも、インフレをかわせた要因だとしている。

高級鶏卵と同等価格を実現したことで、以前は購入をためらっていた消費者がJUST Eggを試す機会になるとテトリック氏は考えている。

「長期的な目標は、JUST Eggが従来の卵の価格を下回ることです。コスト構造上の強みとして、鶏卵コストの50%以上が鶏に与えられる飼料によるものであることです。飼料価格が上がれば、卵の価格も上がります。

ゆくゆくは、より効率的なタンパク質分離、副産物であるデンプンの収益化や他の改善により目標を達成できると思っています」(ジョシュ・テトリック氏)

 

参考記事

Eat Just Announces $25 Million Investment from C2 Capital

JUST Egg reaches price parity with premium chicken eggs: ‘It’s an opportunity for trial by consumers who may have been on the fence before,’ says CEO

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:イート・ジャスト

 

関連記事

  1. Current Foodsが生食用代替シーフードのDtoC予約販…
  2. イスラエルの精密発酵企業Imagindairyが米国でGRAS自…
  3. エストニアで進むマイコプロテイン開発|ホールカット代替肉を開発す…
  4. Steakholder Foodsが台湾進出に向け、台湾の工業技…
  5. イスラエルのDairyX、精密発酵技術で自己組織化するカゼインミ…
  6. ドイツの培養脂肪Cultimate Foodsが約1億円を調達、…
  7. オランダのFarmless、約7.5億円を調達し農地不要のタンパ…
  8. 「本物のようにほぐれる」ホールカットの代替タラを開発するアイルラ…

おすすめ記事

精密発酵ホエイ・カゼイン開発の最前線|精密発酵による乳タンパク質開発の今をクローズアップ【Foovo独自調査】

ネスレに続き、ユニリーバも精密発酵乳タンパク質を使用した製品を発売した。…

Onego Bioが約24億円を調達、精密発酵卵白タンパク質の生産を加速

精密発酵で卵白タンパク質を開発するフィンランドのOnego Bioが新たに1,4…

イート・ジャストが中国ファンドから約34億円を調達、代替卵JUST Eggで高級鶏卵と同等価格を実現

代替卵と培養肉を手掛ける米フードテック企業イート・ジャストが中国のプライベート・…

QuornとPrime Rootsが菌糸体由来肉の市場拡大に向けて提携

Quornと米Prime Rootsは、アメリカ市場における菌糸体由来の代替肉の…

Gelatex、年間300トンの培養肉生産を可能とする足場生産の試運転をスタート

培養肉用の足場を開発するエストニアのGelatexは先月、ナノファイバー材料の開…

スピルリナ由来の代替スモークサーモンを開発するSimpliiGood

2024年8月13日修正・追記スピルリナを活用して代替タンパク質を開発す…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoセミナー開催のお知らせ

Foovo Deepのご案内

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

Foovoの記事作成方針に関しまして

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

最新記事

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(01/18 14:27時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(01/18 00:10時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(01/18 03:58時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(01/17 20:26時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(01/18 12:39時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(01/17 23:23時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP