精密発酵スタートアップのChange Foodsは、アニマルフリーな乳タンパク質の商業生産に特化した工場をアブダビで設計するため、KEZADグループとの合意を締結した。二社の合意はアラブ首長国連邦(UAE)経済省が2022年7月に立ち上げたNextGen FDIイニシアティブの支援を受けている。
NextGen FDIイニシアティブは、世界中から戦略的な事業を呼び込み、UAEでの立ち上げと規模拡大に必要な市場参入の土台を提供することを目的とする、UAEの国家イニシアティブだ。
経済省が立ち上げたものであることから、Change FoodsのUAE進出に向けた動きは、UAE政府の精密発酵という新興技術に対する重視と肯定を表しているといえる。
微生物を活用してカゼインタンパク質を開発するChange Foods
Change Foodsは成長するチーズ市場をターゲットとする、オーストラリア・アメリカに拠点を構える精密発酵企業だ。
微生物を使ってタンパク質など特定の成分を作る手法を精密発酵という。精密発酵では、目的成分に応じて、遺伝子組み換え微生物、非遺伝子組み換え微生物いずれかを「生産工場」として使用する場合が想定される。
Change Foodsの生産プロセスでは、微生物にカゼインタンパク質のDNAを組み込み、プログラムされた微生物がバイオリアクターの中で糖など栄養を取り込み、発酵によりカゼインタンパク質が生成される。
Change Foodsのカゼインタンパク質は動物由来のものと生物学的に同等だが、生産には動物を使用しないタンパク質となる。牛を飼育して乳タンパク質を生成するトップダウン式の畜産に対し、特定成分のみを生成する精密発酵はボトムアップ式の資源効率の良い生産方法といえる。
同社創業者兼CEOのDavid Bucca氏は、「食料のために動物を飼育することは、非効率的で資源を大量に消費するプロセスであり、世界の温室効果ガスの排出に大きく影響しています。私たちは、この変化の大きい、成長を続ける業界にポジティブな変革をもたらすことができます。これは、新しい技術を取り入れることが、地域の食料安全保障の課題の克服にどう役立つかを示す素晴らしい例です」とコメントしている。
食料安全保障対策としての精密発酵
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アイキャッチ画像の出典:Change Foods