食品大手General Millsが、イスラエルの精密発酵企業Remilkの乳タンパク質を使用したクリームチーズ「Bold Cultr」の発売を発表した。
Remilkの乳タンパク質は、動物を使用せず、微生物を活用する精密発酵技術により作成された牛由来と同一のものとなる。ハーゲンダッツで有名なGeneral Millsが最初に精密発酵タンパク質を自社ブランドに採用したのは2021年にさかのぼる。
General Millsが精密発酵タンパク質を採用するのは今回が2回目。Remilkにとっては、昨年6月にアメリカでGRAS自己認証を取得して以降、初の上市となる。
イスラエルの精密発酵企業Remilk、アメリカで上市を実現
Remilkの乳タンパク質を使用した「Bold Cultr」は現在、アメリカ、ミネソタ州で販売されているが、今後は販売を全米に拡大すると予想される。
製品にはRemilkのロゴが表示されているため、消費者はRemilkの原材料を含む製品を確認できる。製品にはアニマルフリーなホエイタンパク質と、えんどう豆タンパク質が使用されている。
Remilkの共同創業者兼CEOのAviv Wolff氏は、「最初に発売する製品はクリームチーズですが、General Millsは私たちのタンパク質を使用した追加の製品の製造も検討しています。多くのパートナーシップについて交渉中で、さまざまなカテゴリーで多くの製品を検討しています」と述べている。
大型資金調達、GRAS自己認証に続く前進
2019年設立のRemilkは、チーズ、ヨーグルト、アイスクリームなどさまざまな乳製品への使用を目的として、業界向けの乳タンパク質を開発・製造している。
Remilkは乳タンパク質をコードする遺伝子を酵母に挿入し、効率的かつスケーラブルな方法でタンパク質を発現するよう酵母を遺伝子操作した。この酵母をバイオリアクターに移し、発酵反応により、牛由来と同一の乳タンパク質を生成する。作り手となる酵母は最終産物からは取り除かれる。生成された乳タンパク質にビタミン、ミネラル、植物油脂や砂糖を加え、乳製品を製造している。
つまり、乳タンパク質を生産するメカニズム全体を単細胞性の酵母に移行させた。これにより、牛を成長させるために大量の資源を投入する必要がなくなる。このように、微生物を作り手として目的のタンパク質を生成する手法を精密発酵という。
Remilkは昨年1月、シリーズBラウンドで1億2000万ドル(当時約139億円)を調達している。
大手食品企業の参入が加速
Remilkの乳タンパク質生産では、牛乳で必要となる土地の1%ですみ、ミルクを1リットル生産するのに牛乳で必要な水の5%ですむという。また温室効果ガスの排出量も4%に削減されるという。
こうした環境負荷の軽減効果から、精密発酵によるタンパク質は急速に市場に投入されており、Remilkはパーフェクトデイに続き、乳タンパク質の上市を実現した2社目の企業となった。
最近ではネスレがアメリカで精密発酵ミルクの試験販売を開始したり、Kiriで有名なチーズ大手のベルも参入したりするなど、大手食品企業の参入が相次いでいる。アジアではシンガポールに続き、韓国、ニュージーランドの大手食品企業も精密発酵の導入を進めている。
シンガポールでは牛乳製品とほぼ同等価格で精密発酵ミルクが販売されるなど、2022年以降、市場投入が加速している。
参考記事
General Mills using Remilk’s tech to produce animal-free cheese
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