代替プロテイン

DAIZが植物性代替卵「ミラクルエッグ」の開発に成功、ハイブリッド食品で畜産業との共存を目指す

 

熊本発のスタートアップ企業DAIZが代替卵市場に参入する。DAIZは今月8日、植物性液卵「MIRACLE EGGミラクルエッグ)」の開発に成功したことを発表した

DAIZはミラクルエッグを鶏卵と混ぜるハイブリッド食品として2024年中に商品化し、食品メーカー、一般量販店、外食等への提供を予定している。

これは、鶏卵との共存を目指す同社の「ハイブリッド戦略」の一環だ。深刻な卵不足に直面する食品業界と、国内約260万トン・世界約8,667万トンと言われる鶏卵市場全体の持続可能性に貢献したいとDAIZは考えている。

大豆の旨味を引き出す独自技術

出典:DAIZ

DAIZは、独自技術「落合式ハイプレッシャー法」をコア技術としたフードテック企業だ。

同社取締役・研究開発部長の落合孝次氏は、温度、酸素、二酸化炭素、水、発芽時間など各条件の膨大な組み合わせを試行錯誤して、栄養・旨味・機能性が増大される発芽条件を見出し、独自の「落合式ハイプレッシャー法」を開発した。 

DAIZはこの独自製法により生産された発芽大豆を押出成形し、独自の膨化成形技術により肉のような弾力と食感を再現したミラクルミートを開発。国内最大手の小売・流通企業や食品メーカー、外食等、幅広い企業へミラクルミートを供給している。ミラクルエッグの開発でも、「落合式ハイプレッシャー法」で発芽させた植物性タンパク質を使用している。

卵の特性を備えたミラクルエッグ

出典:DAIZ

従来の植物性代替卵には、鶏卵と同じ温度・加熱時間で熱凝固しない、化学原料や添加物が多く異風味があるという2つの課題が指摘されていた。DAIZはこれらの課題を解決し、鶏卵と混ぜた時に鶏卵のおいしさと栄養を保持して、幅広い卵の調理・加工に使用することが可能なミラクルエッグを開発した。

大豆を原料としたミラクルエッグは、植物性タンパク質の分子構造を鶏卵タンパク質に近づけることで鶏卵と同じ加熱時間・温度で固まるという特性を有している。

これにより、従来の植物性代替卵では難しいとされてきた業務用液卵との混ぜ合わせが可能となった。既存の卵加工品と同じ製造インフラ・同じ調理法を用いることができる。

なぜ、ハイブリッド戦略なのか

出典:DAIZ

DAIZによると、植物肉市場では現在、「代替」から「共存」への動きがあるという。ここ数年の「肉の代わりに植物肉を食べる」植物肉第1フェーズを経て、肉や魚との共存、つまり、動物性タンパク質と植物性タンパク質を組み合わせる「ハイブリッド戦略」が重要であるとの認識が欧州を中心に、大手食品メーカーや研究機関で広まりつつあるという。

DAIZはこの植物肉第2フェーズにおける植物性タンパク質の原料メーカーとしてハイブリッド戦略を提唱している。

今年7月にセブン⁻イレブンで販売開始したミラクルミートと鶏肉を使用したナゲット、ミラクルミートと通常のツナを使用したツナおにぎりも、「ハイブリッド戦略」の一環だ。

ミラクルミートと肉や魚を混ぜ、余計な添加物を加えずに「おいしさ」を実現するハイブリッド製法により、畜産業や水産業と共存する未来の実現を目指している。DAIZが提唱する「ハイブリッド戦略」の対象は今後、肉、魚、卵からミルクへと広がっていくかもしれない。

 

参考記事

植物肉のDAIZ、植物性たんぱく質由来の液卵「MIRACLE EGG」を開発、業務用ハイブリッド液卵食品として価格高騰が続く液卵市場へ進出

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:DAIZ

 

関連記事

  1. イスラエルのYO-Eggが黄身と白身に分かれた代替卵を開発
  2. ピーナッツから代替肉を作る中国企業HaoFood、2021年に中…
  3. Fazerがソレインを使用した世界初のチョコレートバーをシンガポ…
  4. 微生物、空気、電気を使ってタンパク質を開発するSolar Foo…
  5. 培養肉企業21社の生産工場・稼働状況まとめ-2022年11月時点…
  6. 精密発酵セミナー開催のお知らせ|2023年4月20日(木)
  7. Fooditiveが精密発酵カゼインの工業生産の実現性を実証、欧…
  8. 米Oobliが精密発酵による甘味タンパク質ブラゼインでGRAS認…

おすすめ記事

Numilkが家庭用植物ミルクメーカーを発表、クラファンの累計支援額は目標の2倍以上に

感染が拡大する新型コロナウイルスの影響を受け、トッピングやカスタマイズが自由な次…

ダノンが精密発酵企業Imagindairyに出資、細胞農業企業では2社目

イスラエルの精密発酵企業Imagindairyは先月、大手乳業メーカーであるダノ…

Perfat Technologiesによる「次世代オレオゲル」を活用した構造を調整可能な植物性脂肪|創業者インタビュー

培養肉、植物肉、微生物由来のタンパク質など、代替タンパク質の開発に注目が集まる一…

機械学習でフードロス削減に取り組むFloWasteが約1億2400万円を調達

フードロス削減に取り組むFloWasteがシードラウンドで110万ドル(約1億2…

イスラエルのWanda Fish、初となる培養マグロの試作品を発表、2025年に承認申請へ

イスラエルの培養魚企業Wanda Fishは、同社初となる培養マグロによる刺身・…

鮮度延長コンテナを開発した米RipeLocker、エクアドル進出に向けて物流業者AgroIdeasと提携

農産物や花の鮮度期間を延長する独自コンテナを開発した米RipeLockerは先月…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(03/28 14:53時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(03/29 00:40時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(03/28 04:34時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(03/28 20:51時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(03/28 13:00時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(03/28 23:53時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP