世界のシーフード消費が増えるなか、絶滅の危機に瀕している魚種を細胞培養により開発する培養シーフード企業が増えている。
その中で、さまざまな企業との提携を拡大し、上市を目指すのが、ウナギ、マグロを開発するシンガポール企業Umami Bioworks(旧称Umami Meats)だ。同社はこれまでに培養つみれ、培養フィッシュケーキなどのプロトタイプを発表しており、年末までにシンガポール当局への承認申請を予定している。
昨年7月には培養シーフードの共同開発でイスラエルの培養肉企業Steakholder Foodsと提携。イスラエル・シンガポールからの助成金獲得を経て、今年4月には提携の成果として培養ハタの切り身を発表した。
今年5月には日本進出を発表し、東京に日本支社を開設した。8月には、グローバルに展開する日本の大手水産食品会社マルハニチロとの提携に続き、ペットフード業界への参入を発表するなど勢いが止まらない。
創業者兼CEO(最高経営責任者)のMihir Pershad氏は、「私たちはシンガポールを拠点としていますので、最初の承認申請はシンガポールで行う予定です。しかし、マルハニチロとの提携により、日本でも承認申請のルートを探り始めています」と述べ、日本市場進出に意欲を見せる。
マルハニチロとの提携
マルハニチロとの提携の目的は、「市場への導入と規模拡大を実現することです」とPershad氏は述べた。
提携の狙いは3つに細分化できる。1点目は、消費者調査を行い、製品化について理解を深めること。2点目は、消費者が求める美味しくて健康的な製品を開発すること。そして3点目は製造のスケールアップと市場投入に向けた規制プロセスの実施だ。
Umami Bioworksは現在、ウナギ、マグロ、ハタ、マダイなどの魚種に取り組んでいる。Pershad氏によると、マルハニチロの優先順位により、追加の魚種を開発する可能性もあるという。
日本では刺身、東南アジアではパンガシウス(ナマズの一種)など、地域によって好まれる魚種は異なる。市場のニーズに応じて、Umami Bioworksは商品化の優先順位を変えたり、製品化しやすいものから市場へ出したりするのだろうか。
この点についてPershad氏は、「“まあまあ”の刺身しか作れないのであれば、売れない“まあまあ”の製品で大きな市場を狙うよりも、本当に高品質な商品を作れるようになるまで待った方がいいでしょう」と述べ、市場投入にあたり商品の品質を下げないことを重視していることを強調した。
パートナー企業が自社工場で培養魚を製造・最適化するのを支援
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アイキャッチ画像の出典:Umami Bioworks