オーストラリアの培養肉企業Magic Valleyは、CoLabsの最先端のパイロット施設への拡張を発表した。これは、培養肉の生産能力を強化し、食の未来にポジティブな変化をもたらすためのMagic Valleyの戦略的取り組みとなる。
Magic Valleyの発表によると、CoLabs施設へ拡張することで生産能力を3,000Lバイオリアクターに拡大し、年間最大150トン(日産で410kg)の製品を製造できるようになるという。
CoLabsの施設を利用している培養肉企業は2社あり、いずれもオーストラリア企業で、Magic ValleyとVowとなる。
FBSを使わずに培養羊肉、培養豚肉を生成
牛肉、豚肉、鶏肉を細胞培養で開発する培養肉企業が多数を占める中、2020年に設立されたMagic Valleyは、羊肉というニッチな領域で研究開発に取り組んできた。
オーストラリアが羊肉輸出量で世界1位、羊肉消費量で世界2位であることを考えると、オーストラリアを拠点とする培養肉企業が羊肉に焦点をあてるのは自然な流れといえる。
共同創業者のPaul Bevan氏は以前、「オーストラリアの食品の安全性、安心さ、そして高品質な羊生産に関する高い評判を考えると、当社が最初に開発する肉として羊肉を選ぶのは当然のことでした」と述べている。
Magic Valleyは昨年9月に、ウシ胎児血清(FBS)を使用せずに、培養ラム肉のプロトタイプ開発に成功した。同社はiPS細胞を使用して培養ラム肉を開発している。羊肉だけでなく、今年3月には、FBSを使わずに培養豚肉の開発に成功している。
バイオリアクターの最適化に向けた提携
7月には培養肉の量産に向けたバイオリアクター技術の向上で、米Biocellion SPCとの提携を発表した。二社は協力して、Getingeのラボスケールのバイオリアクターで条件の最適化に取り組んでいる。
バイオリアクターで条件やパラメータを変化させた時のスフェロイドの挙動を把握することで、羊肉の生産プロセスの条件を最適化できるとMagic Valleyはリンクトインで述べている。
ビクトリア州大臣が培養豚肉を試食
以前の報道で、最初に羊肉のミンチ肉から市場に出すとしていた通り、Magic Valleyはこれまでにラムバーガー、ラムタコス、ラム肉パティなど、ミンチ肉をベースとしたさまざまな培養羊肉を開発している。
同社はこれまでに数回の試食会を開催しており、培養ラム肉、培養豚肉いずれについても、試食した人から本物と区別できないというフィードバックが得られたと述べている。
今年夏には、ビクトリア州産業・雇用大臣のBen Carroll氏など複数の議員がMagic Valleyを訪問し、培養豚肉を試食した(上記写真)。
Magic Valleyの公式サイトには現在、培養肉の販売認可に向けてオーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)と協議してあると記載がある。
Vowは今年1月に培養ウズラ肉でFSANZに承認申請を行っているが、Magic Valleyの情報は確認できないことから現在も協議中とみられる。
参考記事
Cultivated meat startup Magic Valley expands into pilot facility
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アイキャッチ画像の出典:Magic Valley