Good Food Institute(GFI)によると、アメリカで植物チーズを購買する世帯割合は、2021年から2022年にかけて5%と横ばいが続いた。過去3年、植物性チーズの普及率は低く、緩やかに成長している。
一方、動物性チーズの世帯普及率は96%と高く、動物性チーズを購買する世帯から植物性チーズの購入者を獲得すれば、「植物性チーズ分野には大きなチャンスがある」とGFIは述べている。
それを阻む1つの要因が、植物性チーズの完成度かもしれない。動物性チーズのように美味しいと回答する消費者は現状少ないという。植物性チーズのリピート率は2020年から7%落ち込んでおり、この分野を成長させるには、消費者のニーズを満たす製品開発が必要ということだろう。
その新たな選択肢となる可能性を秘めているのが、アメリカ、フロリダ州に拠点を置くSeeductive Foodsだ。
同社創業者兼CEO(最高経営責任者)のMeghan Barbera氏は自社について、「トップ9のアレルゲンを含まず、ココナッツオイル、ガム、デンプン、香料などの添加物を含まない、かぼちゃ・ヘンプをベースとしたチーズを製造する唯一のブランドです」と述べている。
かぼちゃの種・ヘンプシードを使用した植物性チーズ
2019年に設立されたSeeductive Foodsは、かぼちゃの種と、米国産のヘンプシード、ひよこ豆味噌ペースト、ローズマリーエキスなどを原料にした代替チーズ製品を開発している。かぼちゃの種はアップサイクルしたものを使用している。
ヘンプシードとは、麻の実の種を指す。同社によると、ヘンプシードには、抗酸化物質、ビタミン、ミネラル、心臓に良いとされるオメガ 6脂肪酸、オメガ3脂肪、完全な植物性タンパク質が豊富に含まれている。さらに、二酸化炭素を木の4倍吸収するため、環境に優しい持続可能な作物だという。
Seeductive Foodsが製品開発にあたり重視したのが、原材料リストの短縮化だ。
製品の1つ「Truffle & Peppercorn」に少量のオリーブオイルが含まれていることを除き、7種類の製品にはココナッツオイルなど植物油脂を一切使用していない。大豆、ナッツ、グルテンなどトップ9のアレルゲンも含まず、Vegan Awareness Foundationからビーガン認定を受けている。
既存の発酵技術を使用した独自製法で成分リストを短縮化
Seeductive Foodsは伝統的なチーズ製造技術を組み込んだ特許出願中の独自プロセスにより、「他社の植物性チーズによく見られる栄養酵母、油脂、ガム、デンプン、香料を使用せずに、チーズらしい風味を再現」しているという。
古くから使われてきた発酵技術を使用することで、チーズらしい風味だけでなく、腸の健康に寄与するプロバイオティクスをもたらしている。
Barbera氏の特許によると、同社の生産プロセスは、ヘンプシードミルクに水を加えるステップ、シードミルクを所定の凝結温度まで加熱するステップ、シードミルクを凝結させるステップ、シードミルクを所定温度まで冷却するステップ、シードミルクに培養物(Lactobacillus sp)を加え混合するステップ、混合物を所定の発酵温度で発酵させるステップ、非乳製品ホエイを混合物から除くステップ、混合物からチーズを取り出すステップから構成されている。
Seeductive Foodsが現在販売している製品はGarlic & Herb、Fig & Balsamic、Marinated Feta、Olive & Black Garlic、Tuscan Tomato、Blazin’ Pepper Blend、Truffle & Peppercornの7種類だ。
Vegnocomistによると、同社製品は、地元のファーマーズ・マーケットでの販売から始まり、ビーガンショップ、健康食品店など独立系小売店でも取り扱われているという。公式サイトによると、現在は全米48州に商品が発送されている。
さまざまな植物チーズスタートアップの台頭
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アイキャッチ画像の出典:Seeductive Foods