3Dプリンターで持続可能な代替肉・代替シーフードを開発するイスラエル企業Steakholder Foods(旧称MeaTech)は27日、世界初の3Dプリントされた植物性ウナギの発売を発表した。
3Dプリンターによる植物性代替食品の開発では、代替肉を開発するイスラエルのRedefine Meat、SavorEat、サーモンを開発するオーストリアのRevo Foods、イスラエルのOshiなどが確認されているが、ウナギを発表したのはSteakholder Foodsが世界初となる。
Steakholder Foodsは3Dプリンティング技術を使用した培養肉も開発しているが、今回発表されたのは植物成分を使用した代替ウナギ。長期的には培養ウナギ細胞を使用した製品開発を見込んでいるとプレスリリースで述べている。
ウナギ業界が直面する課題
世界のウナギ市場は2022年に43億ドルとなり、年平均成長率2.19%で成長している。
ウナギ業界、特に世界のウナギ消費量の大部分を占める日本では、絶滅のリスク、乱獲、不漁による価格上昇など、重大な課題に直面している。
日本で消費されるウナギの99%以上が養殖されたものとなる。養殖では、稚魚となるシラスウナギの安定的な確保が重要となるが、シラスウナギの漁獲量は長期的に減少傾向にあり、ウナギの取引価格は高騰している。
3DプリンターとインクのB2Bサプライヤーを目指すSteakholder Foodsは、こうしたウナギをめぐる課題に悩まされる企業にとって自社のサービスが、「世界のウナギ価格に関連したコストの課題」に対応するための解決策になると考えている。
乱獲・絶滅のリスクのない植物性ウナギ
Steakholder Foodsは今年5月、3Dプリンターとインクの商用化に焦点をあてたB2B事業戦略を発表した。今回の3Dプリントウナギは、その第一歩となるだろう。
同社は現在、植物性3Dプリントウナギを商品化するための提携を模索している。
提携企業がSteakholder Foods独自の3Dプリンターとインクを使用することで、競争力のある価格で3Dプリントされたウナギを大量生産できるようになり、短期的に収益を生み出すことが可能になるとSteakholder Foodsは見込んでいる。
また、同社独自のプロセスにより、一般的な植物性の代替食品と比較して、3Dプリント製品に使用される原料の量を大幅に削減できるという。
Steakholder Foodsの事業戦略
Steakholder Foodsは植物成分と培養成分を混合したハイブリッド肉製品用のRTCプリンターと、生きた細胞をプリントする培養製品用の3Dプリンターという2種の3Dプリンターを開発している。
RTCはさらにDropJet型とFusion型に分類され、今回の植物性ウナギは、前者を使用して生成された。DropJet型バイオ3Dプリンターはゲル成分を滴下して三次元構造を作るもので、シーフード製品に適している。今年5月に発表された培養ハタの切り身もこのプリンターで製造された。
今後は、DropJet型3Dプリンターを使用して培養ウナギ細胞を使用した製品開発を進めていくだろう。
Steakholder FoodsのCEO(最高経営責任者)を務めるArik Kaufman氏は、「(3D)プリントされたウナギはシーフード業界において極めて重要な瞬間であり、当社の魚・シーフード用プリンティングソリューションであるDropJet技術の大きな可能性を示しています」と述べている。
プレスリリースによると、同社技術は、企業が毎月数百トンという工業規模で製品を製造できるよう設計されている。天然ウナギよりも低コストで製造できるたけでなく、同じ生産ラインを使用してさまざまな3Dプリント製品を柔軟に製造できるとKaufman氏は述べている。
参考記事
Steakholder Foods Launches Industry-First 3D Printed Eel
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アイキャッチ画像の出典:Steakholder Foods