農林水産省中小企業イノベーション創出推進事業の第1回公募の採択結果が発表された。
本事業は、スタートアップ企業などが社会実装につなげるための大規模技術実証に向けた補助金を交付するもので、スタートアップ企業が持つ先端技術の社会実装の促進を図ることを目的としている。
第2回の公募は今年4月以降に実施される予定となる。
対象テーマは、スマート農業の実証、温室効果ガスの削減に関する技術の実証、スマート技術を利用した畜産技術の実証、バイオ技術等(フードテック)の実証を通じた新しい食品・飼料の開発・実証、持続可能な代替魚粉原料の開発・実証など14テーマにわたり、25社が採択された。
今回の記事では、代替タンパク質、アップサイクル、フードロボット、ゲノム編集に関連した採択企業7社を紹介する。
CO2資源化研究所
CO2資源化研究所は、二酸化炭素を原料とした水素細菌由来の代替タンパク素原料の製造・食品開発に取り組んでいる。24時間で1グラムが16トンに増殖する独自の水素細菌技術を保有しており、ヒト用、燃料、動物飼料用、化学品の4分野での社会貢献を目指している。
同社は本プロジェクトを通じ、UCDI水素菌由来の代替タンパクのパイロットスケールでの製造技術の確立、タンパク素原料のFDA申請、商用規模のプロセス設計完了を目指すとしている。プロジェクト完了後はグローバルの代替タンパク市場へ参入を実現し、2030年度後半からグローバル市場での本格販売を開始する計画だ。
リージョナルフィッシュ
リージョナルフィッシュは、ゲノム編集をコア技術に、日本の養殖業を高付加価値化し、サステイナブルな成長産業に変えることに取り組んでいる。これまでに可食部増量マダイ、高成長トラフグを上市しており、先月、3例目となる「高成長ヒラメ」の届け出を完了した。
同社の自然な変異を促す欠失型ゲノム編集により、これまで30年かかっていた品種改良を2-3年に短縮することが可能になる。この技術は外来遺伝子を導入するのではなく、狙った遺伝子をピンポイントで切るものであるため、生まれた品種は本来自然界に生まれる品種と言える。
インテグリカルチャー
インテグリカルチャーは動物体内の臓器間相互作用を模したCulNetシステムを開発し、細胞培養で必須だとされていたFBS(ウシ胎児血清)や成長因子を添加しない細胞培養を実現している。
昨年2月、アヒル肝臓由来細胞の培養による、食品成分だけを使用した培養フォアグラの開発に成功し、都内で培養フォアグラの試食会を開催した。
同社は培養肉生産が直面する課題解決のため、培地、足場、装置などの課題を共同で解決し、将来的なサプライチェーンを構築することを目的としたオープンイノベーションとなるコンソーシアムも運営しており、先月の時点で14社の企業が参画している。
インテグリカルチャーは一正蒲鉾、マルハニチロと培養魚の共同研究も実施しており、共同研究の開始から1年経った昨年11月、最初の成果達成を発表した。
AlgaleX
沖縄を拠点とするAlgaleXは、未利用食品である泡盛の粕を藻の栄養素に活用し、DHAを豊富に含み、濃厚な旨味と芳香な香りを特徴とする「うま藻(Umamo)」を開発した。同社は、廃棄されてきた泡盛粕などの未利用食品を活用し、栄養を豊富に含む藻を作り出すAI藻類発酵技術「Brewer24」を保有している。
DHAの大部分が天然魚を原料に製造されているが、魚1匹から獲れる量は数粒程度と少ない。養殖魚は成長にDHAを必要とするため、魚が魚を消費している現状だ。泡盛粕のアップサイクルは、魚を守ると同時に、泡盛の産業に新たなチャンスをもたらす可能性を秘めている。
UMAMI UNITED JAPAN
UMAMI UNITEDは、こんにゃく粉、かぼちゃ粉末、きくらげなど植物成分を使ったアレルゲンフリーな植物性卵を開発している。2021年にシンガポールで創業し、2022年3月に日本法人(UMAMI UNITED JAPAN)が設立された。
同社は、卵の味わいや食感だけではなく、卵がもつ機能に着目し、惣菜類から製菓分野にも使える幅広い汎用性を持った商品を開発している。2023年8月にプレシリーズAラウンドで2.4億円を調達した。今後は細分化したニーズに対応すべく、代替卵白の研究開発にも注力し、欧米での事業展開を加速していくとしている。
ファーメランタ
石川県を拠点とするファーメランタは、合成生物学を活用して、植物由来の希少成分(二次代謝産物)を微生物で発酵生産している。同社は2008年に世界で初めて、植物二次代謝産物であるアルカロイドを微生物発酵で生産することに成功した。
同社は大腸菌内で新規代謝経路の構築に成功し、20以上の外来遺伝子を1菌体に導入・発現する多段階遺伝子導入技術を確立した。さらに目的物質の生産効率を向上させる遺伝子発現バランスの最適化技術、タンパク質過剰発現耐性菌株の作出など、これら4つの基盤技術を組み合わせて、20段階以上の生合成経路を細胞内に構築し、培養液1Lあたりグラムスケールで目的物質を発酵生産することを可能にしている。
コネクテッドロボティクス
コネクテッドロボティクスは、「食産業をロボティクスで革新する」を使命に、食に特化したロボットシステムの開発に取り組んでいる。
これまでに惣菜製造工場に惣菜盛付ロボットDELIBOTを10台導入している。DELIBOTはこれまで自動化が難しいとされてきた盛り付け工程を自動化したもので、不定形の食材を一定量測ってトレイに盛り付けてくれる。
コネクテッドロボティクスは本プロジェクトを通じて、FingerVision、Closerと組成した13社が参加するコンソーシアムと協力し、製造工程を自動化するロボットシステムの社会実装の拡大を目指す。
参考記事
農林水産省中小企業イノベーション創出推進事業(フェーズ3基金)の第1回公募の採択結果について
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