代替プロテイン

イスラエルのImagindairy、精密発酵乳タンパク質を生産する工業規模の自社生産ラインを発表

 

イスラエルの精密発酵企業Imagindairyが、アメリカでのGRAS認証取得に続き、工業規模の精密発酵生産ラインを買収したことを発表した

プレスリリースによるとこの施設買収により、発酵容量は10万Lを超え、今後1-2年以内に3倍に拡大する予定となる。同社はすでに同施設内で、従来の乳製品に匹敵する競争力のあるコスト構造で工業規模のバッチを製造しているという。

AgFunderの報道によると、この施設はイスラエル近郊に位置するが、具体的な所在地は公表されていない。

Imagindairyの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)であるEyal Afergan博士は、「3年前にこの分野に参入したばかりの私たちにとって、この成果は大きな前進です。私たちは、生産能力のボトルネックや、サプライチェーン全体におけるユニットエコノミクスの確保など、これまで精密発酵による乳製品の足かせとなっていた業界全体の障壁を克服しました」と述べている。

精密発酵で作られた同社乳タンパク質を使用した製品は、今年アメリカで発売される予定だという

同社はダノンから出資を受けていることから、ダノン傘下のブランドに使用されて市場に投入される可能性がある。また、大手乳業企業と戦略的協業プロジェクトに向けた交渉中であることをAgFunderに語っている

米New Cultureの共同創業者が立ち上げたImagindairy

イスラエルの精密発酵企業Imagindairy 出典:Imagindairy

2020年に設立されたImagindairyは、高収量タンパク質の発現と生産に関する15年以上の研究とAI技術を基盤としている。同社は、高度な計算生物学と分子生物学技術を使用して、精密発酵業界が直面する障壁を克服するため、費用対効果の高い発酵プロセスの開発に取り組んできた。

Imagindairyは麹菌であるAspergillus oryzaeを使用してホエイタンパク質の1つであるβ-ラクトグロブリンを生成している。最初に上市される製品について言及されていないが、FDAの公開情報から、ミルク、ヨーグルト、クリームチーズ、アイスクリーム、プロテイン製品などになると予想される。

同社でCTO(最高技術責任者)を務めるArie Abo氏は、昨年カゼインのスケールアップに成功した米精密発酵企業New Cultureの創設者の1人でもある。

Imagindairyの特許(発明者の1人はAbo氏)によると、同社はホエイタンパク質やカゼインタンパク質のほか、代替乳製品に使用するために、麹菌Aspergillus oryzaeを用いてトランスコバラミンを開発している。

イスラエル大統領が精密発酵乳製品を試食

イツハク・ヘルツォグ大統領が試食した料理 出典:Imagindairy

イスラエルでこれまでに認可を取得した精密発酵企業はRemilkの1社のみだ。

Remilkは2022年6月にアメリカでGRAS自己認証ステータスを宣言、昨年2月にシンガポールで認可を取得と同時にアメリカのGRAS認証を取得、昨年4月にイスラエルで認可を取得した。

Green queenの報道によると、Imagindairyはイスラエルを含む他の地域でも承認申請を進めている。それらの地域は、すでに認可が下りているシンガポール、イスラエル、オセアニアなどだと思われる。

昨年6月にはイスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領が、GFIイスラエルが開催したイベントで、同社のクリームチーズとミルクを使用した料理を試食するなど、イスラエル国内での注目の高さがうかがえる。

精密発酵業界をリードしてきたパーフェクトデイの創業者が退任するなど、業界で変動が起きるなか、Imagindairyが工業規模で製造を開始したことで、精密発酵乳製品が市場でプレゼンスを高められるか注目される。

 

参考記事

IMAGINDAIRY UNVEILS INDUSTRIAL SCALE MANUFACTURING OF ITS MILK PROTEIN IN NEWLY OWNED 100,000 LITER PRODUCTION LINES

Imagindairy Unveils Industrial-Scale Facility to Produce Animal-Free Dairy Proteins at Price Parity

Imagindairy acquires industrial-scale precision fermentation lines for animal-free whey: ‘This will allow us to support mass-market adoption’

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Imagindairy

 

関連記事

  1. 培養フォアグラを開発する仏Gourmeyが約11億円のシード資金…
  2. 代替母乳のTurtleTree、カリフォルニアに研究施設開設を発…
  3. 細胞培養で母乳を開発するTurtleTreeがラクトフェリン粉末…
  4. 精密発酵カゼイン、シンガポールで初の新規食品申請|オーストリアの…
  5. イート・ジャストの代替卵JUST EggがEU当局の認可を取得
  6. 単細胞タンパク質を開発する独MicroHarvest、ポルトガル…
  7. TiNDLE Foodsが米スーパーで代替鶏肉製品を発売、来年に…
  8. スイスのPlanetary、菌糸体スタートアップLibre Fo…

おすすめ記事

モサミート、スイス当局に培養牛脂の新規食品申請を提出|世界の申請状況まとめ

2025年4月1日更新オランダの培養肉企業モサミート(Mosa Meat)は今月、スイス連邦…

中国初の培養肉・微生物タンパク質センターが北京に誕生-未来食品の産業クラスター構築へ

今月、中国、北京市豊台区に同国初となる培養肉・微生物発酵に特化した代替タンパク質…

Oatlyがオーツ麦由来のソフトクリームをイギリスで発売

オーツミルクで有名なスウェーデン企業Oatlyは今月、イギリスでソフトクリームの…

動物油脂のようにふるまう植物油脂を開発するLypid、約4.7億円のシード資金で年内に市場投入へ

代替肉の開発をめぐり、熱い分野が代替油脂だ。植物成分を使う代替肉に欠ける…

韓国LOUNGE’LABがロボットアイスクリームショップBrown Banaをソウルにオープン

AI、ロボット、ブロックチェーンを活用する韓国のスタートアップLOUNGE'LA…

ビヨンドミート、菌糸体由来ステーキ肉の発売計画を発表

米ビヨンドミート(Beyond Meat)が菌糸体由来のホールカット代替ステーキ…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

精密発酵ミニレポート発売のお知らせ

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

▶メールマガジン登録はこちらから

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

最新記事

Foovoセミナー(年3回開催)↓

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,760円(10/09 16:05時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(10/09 02:29時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(10/09 06:07時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(10/08 22:04時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(10/09 14:04時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(10/09 01:21時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP