コーヒーは世界的に人気のある飲料だが、コーヒー需要が高まる一方で、コーヒー豆の生産はさまざまな課題に直面している。
コーヒーが栽培される地域は赤道周辺であり、気候変動の影響を受けやすい。気温の上昇は、コーヒー生産にとって深刻なさび病の原因となるほか、気候変動により2050年にはアラビカ種の生産地が半減する可能性が指摘されている。また、コーヒー生産には1杯あたり140Lの水が必要であり、水使用や温室効果ガスの排出など持続可能でない側面も存在する。
こうした問題に対応するため、欧米・シンガポールを中心に代替コーヒーの研究開発が行われている。代替コーヒーは主に、コーヒーの木の葉から採取した細胞を増やして本物のコーヒーを作る植物細胞培養、アップサイクル原料・植物原料を使用した豆不使用のコーヒーに分類される。
欧州(一部国)ではスーパーマーケットで植物由来コーヒーが既に取り扱われており、シンガポールでもまもなくスーパーでの取り扱いが開始される予定であるなど、一部地域では小売での投入が進んでいる。
スタートアップの動向ではアメリカが多いものの、市場投入のスピード感では欧州(一部国)・シンガポールが先行している印象がある。一方、アメリカでもこの夏から全国展開が予定されるなど、代替コーヒーの一般普及は現実になりつつある。
そこで今回は、代替コーヒーの開発に取り組む10社(+α)を紹介する。植物細胞培養の企業でも試食会開催に向けて動きだしている企業もあり、代替コーヒーの全体的な開発・上市の動向をまとめた。
植物成分を利用して代替コーヒーを開発する企業
Atomo(米/2019年)(アップサイクル)
ナツメヤシの種、チコリの根、ブドウの皮など廃棄されてきた原料を粉砕したものに、他の植物由来の成分を補い、分子組成をコーヒーに近づけることによってコーヒー豆を使わない代替コーヒーを開発。昨年11月にはサントリーホールディングスから出資を受けた。2024年4月、年間400万ポンドの豆不使用エスプレッソを製造可能な広さ約3000㎡の生産施設を開設した。
上市の状況は?
現在は提携カフェで販売しているが、将来は自宅で飲めるタイプのAtomoコーヒーの発売を計画している。2024年5月上旬時点で、全米10箇所の店舗で導入済み。2024年4月、アメリカのカフェチェーン店Bluestone Laneと提携したことで、今後は販路を拡大する。Bluestone Laneは今年8月から58店舗でAtomoの豆不使用エスプレッソを展開する。
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アイキャッチ画像の出典:Puri