細胞培養カカオを開発するイスラエルのKokomodoが今月、イスラエル・イノベーション庁とThe Kitchen FoodTech Hubから75万ドル(約1億1700万円)を調達した。
Green queenの報道によると、研究室での生産はすでに成功しており、今回得た資金でパイロットスケールへの拡大を図る。今後1年半~2年で数百キロのバイオリアクターでの生産へ移行する予定だ。
培養ココアパウダー、ココアバターの順に上市を目指しており、最初の進出市場はアメリカになる可能性があるという。
培養ココアパウダーは、チョコレート、飲料、スプレッド、プロテインバーなどの食品に使用することを想定しているが、同社は食品・飲料だけでなくサプリメント・化粧品業界も視野にいれている。
細胞培養カカオ開発の背景
カカオは気温上昇や降水量の減少など、気候変動の影響を受けやすく、2050年までにカカオ生産に適した地域は半減し、カカオの木が1/3消滅すると予想されている。
チョコレートはまた、牛肉、羊肉、チーズ、乳牛に続き、5番目に温室効果ガスを排出する食品とされる。最近では西アフリカでの天候不順や病害により、カカオは歴史的な不作に直面。カカオ豆の先物価格はこの1年で約3倍高騰した。
一方、世界のチョコレート市場は拡大しており、2022年の1,863億2000万ドルから、2030年には3,126億5,000万ドルに達すると予想されている。
植物細胞培養によるカカオ製造は工場の中で実現できるため、気候変動、天候の影響を受けることなく、理論的には地球のあらゆる場所でカカオを生産できるようになる。
西アフリカなど一部地域に大部分が集中しているカカオ生産をローカライズすることで、輸送による二酸化炭素排出量や、サプライチェーンの遅延がもたらす経済的損失も減らすことができるとKokomodoは考えている。
「気候変動の影響、病気、ガーナやコートジボワールのような少数の生産国への過度の依存により、従来のカカオ栽培の価格上昇、コスト上昇、供給問題が深刻化する中、細胞培養カカオは業界にとってより持続可能で柔軟性のある解決策となるでしょう」と共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のTal Govrin氏はGreen queenに述べている。
複数の異なる細胞株を樹立
AgFunderの報道によると、Kokomodoは中南米で栽培される高品質のカカオ品種の豆を使用。プロセスでは、植物が傷口につくる細胞の塊であるカルスをまず形成させる。これに栄養を与え、十分に増やした後、液体培地に移す。
ある時点まで細胞は成長、増殖するが、Kokomodoが環境や培地を変えるとそれがシグナルとなり、特定成分の産生が誘導される。得られたカカオバイオマスは発酵、焙煎、粉砕の工程を経るが、下流工程で顧客や用途に合わせてカスタム製品も作ることができるという。
Kokomodoは、植物の特定成分を自然な方法で増幅する方法について知見を有しており、さまざまな品種から複数の異なる細胞株を樹立していることが自社の強みだとしている。
大手の参入が目立つ細胞培養チョコレート
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アイキャッチ画像の出典:Kokomodo