代替プロテイン

ニュージーランド政府、培養シーフード開発に約8.6億円を出資

2024年9月24日更新:記事公開当初、後半で記載のシンポジウムの開催時期を2024年としておりましたが、正しくは2022年でした。不正確な情報を掲載し、大変失礼いたしました。

 

ニュージーランド政府は今後5年間で、培養シーフードの研究開発に960万ニュージーランドドル(約8億6,000万円)を投じることを発表した

このプログラムは、ニュージーランド政府が所有する国立研究機関Plant & Food Researchが実施するもので、Endeavour Fundプログラムの一環として、細胞農業による培養魚の生産システム開発を進める。

この取り組みは、ニュージーランドが細胞株の開発培地の配合技術において技術の最前線に立つことを目指しており、培養魚の商業化に向けた重要なステップとなる。

これまでに培養肉はシンガポール、アメリカで販売されてきたが、培養シーフードまだ市場に出ていない。培養魚の生産システムの確立は、持続可能なシーフード製品への世界的な需要に応える機会をニュージーランドにもたらすことになる。

培養シーフード・コラーゲンへの応用を模索

出典:Wildtype

Plant & Food Researchによると、培養魚の開発では、細胞は生きた状態で健康かつ急速に大量増殖することが求められる。また、使用する培地は、既知組成で動物由来ではないことが必須で、可能な限り持続可能な方法で製造される必要があるが、既存の魚細胞株や培地は、これらの要件を満たしていないため、商業化には不十分とされる。

同機関は本プログラムを通じて、魚細胞の栄養や環境条件を深く理解し、細胞農業技術の基盤となる分離・増殖を強化するとともに、最適な培養条件を解明し、適切な天然栄養源の開発に取り組む。こうした知見を活用し、細胞由来のコラーゲン魚肉の研究を進めていく。

また、培養魚製品の社会的・文化的な受容性を高めるため、マオリ族にとって重要なタオンガ種(マグロ、ザリガニ、ムール貝など)に関する意見を調査することも計画されている。

ニュージーランド人口は527万人で、マオリ族は約90万人と、全人口の約17%占めるニュージーランドの文化や社会において重要な役割を果たすマオリ族の見解を理解することは、同国において培養魚製品の社会受容性を高めるために重要な意味を持つ。

2022年に初の細胞農業シンポジウムを開催

出典:Wanda Fish

ニュージーランドでは培養魚企業はまだ確認されていないが、2022年2月、本プログラムを主導するGeorgina Dowd博士が、カンタベリー大学、オークランド大学と共同で同国初の培養肉シンポジウム開催した

このシンポジウムでは、ニュージーランドにおける細胞農業技術や将来の商用化の可能性について議論を行い、テーマの1つに培養シーフードに関する研究紹介が含まれていた。

政府による今回の資金提供は、ニュージーランドが細胞農業の研究開発を前進させるための重要な一歩となる。この研究プログラムが成功すれば、ニュージーランドは持続可能なシーフード生産を実現するための技術的な基盤を強化することが可能になる。

 

参考記事

Government funding for developing fish products in the lab

New Zealand Government Invests $5.95M to Develop Cultivated Seafood

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Plant & Food Research

 

関連記事

  1. 代替母乳を開発するTurtleTreeがシリーズAで約34億円を…
  2. Steakholder Foodsが世界初のバイオ3Dプリンター…
  3. Nature’s Fyndの微生物発酵によるタンパク質「Fy」が…
  4. 微生物で世界に挑戦|合成生物学の世界大会iGEM参加のため、東大…
  5. 植物分子農業のKinish、年内に米由来の植物性アイスクリームの…
  6. 培養ウナギ肉の開発に取り組む北里大学・池田大介准教授にインタビュ…
  7. ドイツのThe Cultivated B、EFSAに向けた培養ソ…
  8. アニマルフリーな乳製品を開発する英Better Dairyが約2…

おすすめ記事

Moolec Science、豚タンパク質を作る大豆「Piggy Sooy」で米国農務省の承認を取得

2024年10月18日追記これまでの動きから、YEEAプロジェクトは高い可能性で精密発酵に関…

コオロギタンパク質を生産するエントモファームズが約3億円を調達

コオロギタンパク質粉末を開発するEntomo Farms(エントモファームズ)が…

代替油脂の米Lypidが台湾大手コーヒーチェーンと提携、500店舗に導入

植物由来の代替油脂を開発する米Lypidが、台湾大手コーヒーチェーンのLouis…

英Jack & Bryがジャックフルーツを使った代替切り身魚を発表

イギリスを拠点とするスタートアップJack & Bryは今月、ジャックフ…

連続細胞培養技術を開発する英CellulaREvolutionが約1億4千万円を調達

イギリスを拠点とする培養肉スタートアップCellulaREvolutionが今月…

【世界初】米The Every Companyがアニマルフリーな卵白を発売

カリフォルニアを拠点とするThe EVERY Companyは23日、世界初のア…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

リアルセミナー@東京のお知らせ【2025/6/18】

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(05/29 15:12時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(05/30 01:07時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,940円(05/30 05:05時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
2,156円(05/29 21:13時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,980円(05/30 13:17時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(05/30 00:19時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP