イスラエルの培養肉企業Believer Meatsは先月26日、効率的かつ持続可能な形で培養肉を生産拡大するために、ドイツの大手機器メーカーGEAと戦略的パートナーシップを締結したと発表した。
GEAが独自のバイオリアクターを開発
二社はまず培養鶏肉を対象に、生産効率やパフォーマンス、環境への影響を最適化し、他の製品にも拡大していく。
この提携では、培養肉生産で使用するバイオリアクター技術、灌流システム、培地再生技術をさらに発展させることを目指す。また、水使用・電力消費の最適化、廃棄物の利用などを通じた環境への影響の軽減にも取り組んでいく。
具体的には、GEAはBeliever Meatsに対し、高い細胞密度と収量を実現するよう特別に設計された独自バイオリアクターを開発し、運用を開始する。
Believer Meatsの遠心分離を基盤とした灌流システムおよび培地再生プロセスは、細胞のパフォーマンスを最適化しながら、水、栄養素、資源の節約を可能にする。また、副産物を除去し、培地を再利用することで、生産コストの削減も可能にする。
プレスリリースによると、今回の提携ではこの技術が要とされているため、GEAが開発するバイオリアクターには、Believer Meatsの灌流システム・培地再生プロセスが組み込まれることが予想される。さらに二社は、プロセスの改善、設備の最適化、スケール化でも協力し、培養肉の大規模生産を目指していく予定だ。
Believer Meats のCEO(最高経営責任者)を務めるGustavo Burger氏は、「GEAとの提携は、当社の最優先事項である、効率的かつ持続可能な形での生産量の最大化に役立ちます」とコメントしている。
二社は、互いの強みと資源をいかした共同商業プロジェクトを立ち上げ、市場の拡大を図るとともに、培養肉業界の成長を世界的に加速させることも目指していく。
生産コスト削減を示す最新の研究成果
Believer Meatsは今年8月、アニマルフリー培地を使用した培養鶏肉の連続生産が高い費用対効果を持つことを示す論文を発表した。
1Lあたり0.63ドルのアニマルフリー培地と、タンジェンシャルフロー・フィルトレーション(生体分子を迅速かつ効果的に分離精製する方法)を使用して培養肉の連続生産を行ったところ、1mlあたり最大1億3,000万個の細胞からなるバイオマスを生産した。
このデータに基づいた技術経済性分析により、灌流プロセスによって、植物成分を50%、培養鶏肉を50%含むハイブリッド製品を1ポンド(約450g)あたり6.2ドル(約890円)で生産できる可能性が示された。
GEAは今年3月、生産性と資源効率を共に高められる灌流プラットフォームを発表している。プロセス改善の一部として、同技術を活用し、Believer Meatsの灌流プロセス向上に向けて何らかのサポートをしていく可能性もある。
ネスレなど大手メーカーとの提携
2018年設立のBeliever Meatsは、世界で最初に培養肉工場を開設した企業であり、これまでにネスレ、タイのCPフーズなど大手企業と提携してきた。2021年12月にシリーズBラウンドに進み、調達総額は3億8780万ドル(約568億円)にのぼる。
Believer Meatsは現在、最先端のイノベーションセンターと試食キッチンを備えた「世界最大」の培養肉工場をノースカロライナ州ウィルソンに建設している。2025年初頭に稼働開始予定の同工場は、年間12,000トン以上の培養鶏肉の生産が見込まれる。
今年6月にはアブダビでの培養肉生産能力と規制ルートの促進に向けてAGWA(AgriFood Growth & Water Abundance)との提携を発表した。同月には、GEAと共に、ノースカロライナ州に設立されたベゾス・アース・ファンドの代替タンパク質センターとも提携している。
参考記事
GEA and Believer Meats join forces to scale up cultivated meat production
Believer Meats & GEA Partner to “Produce Cultivated Meat Products at the Right Cost”
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アイキャッチ画像の出典:Believer Meats