フードテック

植物から短鎖状の食物繊維を取り出す米One Bioが約42億円を調達|食物繊維不足を解消する新技術

 

植物から短鎖状の食物繊維を取り出す技術を開発する米One BioがシリーズAラウンドで2700万ドル(約42億円)を調達した

One Bioは抗炎症性疾患の根絶を目指して、種子、ナッツ、果物、野菜、豆類、穀物など何千もの植物から短鎖状の食物繊維を取り出す技術を開発した。

取り出した繊維は抗炎症性で生物活性が高く、高用量かつ「わかりにくい」状態のため、食品やドリンクに「気づかれない」形で添加することで、不足しがちな食物繊維を補う解決策となりうる。

プレスリリースによると、One Bioの短鎖状の食物繊維により、糖尿病治療で使用されるGLP-1受容体作動薬への依存を減らすことにもつながるほか、食物繊維摂取量を増やすことで疾患の予防にも役立つとしている。

構造も機能性も多様な「繊維」

出典:One Bio

One Bio共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のMatt Barnard氏によると、食物繊維にはそもそも多くの種類があり、構造も機能も異なるため、「fiber(繊維)」という言葉ではその多様性や機能性を十分に表現できないと指摘する。

「繊維」という呼び方は、ビタミンAやカルシウム、鉄分をまとめて「栄養素」と呼ぶに等しいことだとBarnard氏述べる

同社の研究により、食物繊維の組成は非常に多様であることがわかった。そこで同社は「グリコペディア」と呼ぶ、植物繊維成分の独自のデータベースを構築した。このデータベースには約3,000の化学構造が収録されており、化学構造に基づいて用途に応じた植物繊維源を選択できるという

現在、95%の人々は食物繊維の摂取量が「著しく不足」しており、これが肥満、糖尿病、心血管疾患、神経変性疾患、がん、自己免疫疾患など疾患の発生率上昇の原因となっているとOne Bioは指摘する。

同社は自社技術で「食物繊維の摂取を妨げる味、食感、見た目といった従来の課題を解消」するだけでなく、天然由来の繊維を食品や飲料に「気付かれない」形で組み込むことで、「深刻な健康問題に対してポジティブな変化をもたらす」ことを目指している。

この技術は、さまざまな植物から短鎖状の食物繊維を取り出すことを可能にし、結果として農業廃棄物や食品廃棄物の削減にもつながる。

AgFunderの報道によると、一例としてオーツミルクを製造する企業と提携した場合、製造過程で生じる廃棄物をOne Bioが引き取って短鎖状の食物繊維に変換し、提携企業のオーツミルク製品に原料として組み込むことが可能になる。これにより、現在廃棄物となっているものをアップサイクルすることができる。

また、One Bioの食物繊維は無味・無臭・無色で溶解性が高いため、食感や味に影響を及ぼすことなく食品に組み込むことができる。そのため、さまざまな食品メーカーの製造現場に導入される可能性を秘めている。

今回のラウンドはAlpha Edisonが主導し、Leaps by BayerMitsui E12MoradoReMYDSM-FerminichBetterなどが参加した。

 

参考記事

One Bio Secures $27 Million in Series A Funding to Revolutionize Nutrition with Launch of Breakthrough Technology Making High-Dose, Anti-Inflammatory Plant Fiber Imperceptible in Food and Beverage for the First Time

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:One Bio

 

関連記事

  1. ユニリーバ、代替肉ブランドThe Vegetarian Butc…
  2. 英Ivy Farm、欧州最大の培養肉パイロット工場をオープン
  3. オーストラリアのVow、香港で培養肉販売認可を取得|シンガポール…
  4. 塩生植物からルビスコタンパク質を抽出するThe Leaf Pro…
  5. 米AQUA Cultured Foodsが代替シーフードでGRA…
  6. 米Matrix F.T.が独自マイクロキャリアで作成した培養鶏肉…
  7. ソーラーフーズ、シンガポールでソレインの販売認可を取得
  8. 英培養肉企業Ivy Farmとバイオテック企業BSF Enter…

おすすめ記事

Joes Future Foodが中国初の培養豚バラ肉を発表、中国政府も細胞農業を重視

中国の培養肉企業Joes Future Foodは先日、南京国立農業ハイテク産業…

スイス初の培養肉企業Mirai Foodsが初の資金調達、培養肉の市販化を目指す

スイスの培養肉企業Mirai Foodsが初となるシードラウンドで210万スイス…

サムスンがIoTアプリに買い物機能を備えた「SmartThings Cooking」を追加、シームレスな料理を追求

サムスンはCES2021でレシピ検索から買い物機能まで備えたSmartThing…

オランダのスーパーで買った代替コーヒーを試飲|業界でカフェオレ提供が多い理由も考察

オランダ企業Northern Wonderの代替コーヒーは、オランダのスーパーマ…

【現地レポ】Perfect Dayの精密発酵乳タンパク質を使用したミルクを試食@シンガポール|精密発酵ミルクの現在地を確認

精密発酵技術で生成された食品がアメリカ、シンガポールなどで販売されている。…

オランダのNoPalm Ingredients、酵母由来油脂の工業生産に成功—12万リットルへスケールアップ

オランダのNoPalm Ingredientsは11日、食品業界の副産物を活用し…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

【2024年】培養魚企業レポート好評販売中

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(04/15 15:00時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(04/16 00:46時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(04/16 04:45時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(04/15 21:00時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(04/16 13:05時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
498円(04/16 00:01時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP