CO2を原料に代替タンパク質を開発するオーストリア企業Arkeonが、正式に破産を申請した。
共同創業者のGregor Tegl氏はリンクトインでの発表で、具体的な理由には触れていないが、「正式に破産申請した」と報告し、今後は「これまでの経験を生かして、持続可能なソリューションを市場に投入する機会を模索していきたい」と語った。
ウィーン商事裁判所の告示によると、破産の原因は支払業務を履行できなくなったこととされている。
Arkeonは、共同創業者のSimon Rittmann氏が、二酸化炭素から20種のアミノ酸をすべて生成できる古細菌の菌株を発見したブレイクスルーをもとに、2021年にTegl氏と共に設立された。
2022年3月のシードラウンドは投資家からの高い関心を集め、応募超過で650万ユーロ(当時約8億5000万円)を調達した。同年には追加調達にも成功し、2023年7月にはオーストリア、ウィーンでパイロット工場の試運転を開始した。
次なるステップとして、2024年末までに150Lから3,000Lへスケールアップし、デモ施設を稼働させる計画を掲げていたが、稼働は確認できず、今回の破産申請に至った。
Tegl氏は、「私たちが技術のスケールアップ、ステークホルダーとの関係構築、規制の壁の乗り越えにおいて得た教訓は、これからの私の道のりにおいて糧となるでしょう」と述べ、持続可能なバイオテクノロジーに対する信念は揺らいでいない姿勢を示している。
ガス発酵スタートアップの明暗:Arkeonと他社の違い

出典:Arkeon Biotechnologies
Arkeonと同様に、二酸化炭素をタンパク質に変換する企業として、フィンランドのソーラーフーズ(Solar Foods)、アメリカのエアプロテイン(Air Protein)などがある。
ソーラーフーズは2022年にシンガポールで認可を取得し、味の素との提携を通じて販売を実現している。EUで新規食品を申請済みで、アメリカではGRAS自己認証を取得し、限定提供を実現した。2024年4月に最初の工場Factory 01の稼働を開始し、第2の工場計画も進め、2社と年産6,000トンの基本合意書も締結している。
Air Proteinも2023年にカリフォルニア州サンレアンドロで工場を稼働し、商業規模の工場建設に向けてADMと提携した。GRAS自己認証も完了している。
二社に共通するのは、工場の稼働と並行して一部市場での規制の早期クリアにより、追加資金や助成金の獲得につなげたこと、そして、大手企業と連携している点である。
クランチベースによると、ソーラーフーズは2023年以降、毎年調達に成功し、Air Proteinも2023年の資金調達後、昨年にはアメリカ国防総省から助成金の交付を受けた。
一方、Arkeonの資金調達は2022年12月が最後となっており、設備投資(CAPEX)の高さなどが要因で、新たな投資を引き込むことができなかったとみられる。
GFIの報告では、2024年の発酵タンパク質分野への投資額は前年比で回復傾向にあるものの、2021年の18億ドルと比べると、2024年は6.5億ドルと約3分の1に減少している。

出典:GFI「2024 State of the Industry: Fermentation」p14
こうした投資環境の変化は、投資が好調だった2021年にスタートしたArkeonにとっては厳しいものだったと考えられる。実際、同じく発酵タンパク質企業のBolder Foodsも先月、資金調達難による事業終了を発表した。
今回の破産事例は、単一企業の話ではなく、資金調達の波に乗ってスタートした企業が今後、「死の谷」を迎える可能性を示唆している。
※本記事は、Linkedinの投稿をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Arkeon