代替プロテイン

米製粉大手Ardent Mills、小麦由来の代替カカオ原料「Cocoa Replace」を発表──ココアパウダー最大25%代替

 

アメリカの大手製粉メーカーArdent Millsが、代替カカオ原料「Cocoa Replace」を発表した

本製品はココアパウダーを最大25%代替するよう設計されており、単一原料で構成されている点が特徴といえる。

2024年以降、カカオ豆の価格は歴史的な高騰を続けており、これを受けて国内でも不二製油あじかんイオンが代替品の導入を進めている。今年4月には、業務用チョコレート大手のBarry Callebautもカカオフリー製品の導入を発表しており、製粉メーカーArdent Millsもこれらに続く形で代替カカオ製品市場に参入した。

出典:Ardent Mills

プレスリリースによると、「Cocoa Replace」は標準的な配合でココアパウダーを最大25%代替できる。単一成分のため、メーカーは配合変更を簡素化でき、小麦由来の製品ではラベル表示の変更も最小限で済むとされる。製品は非遺伝子組換えであり、ビーガンおよびコーシャにも対応している。

用途としては、ケーキ、マフィン、ブラウニー、クッキーなどのベーキング製品が想定されている。同社が専門家と消費者を対象に実施した官能評価では、ベーキング用途で最大25%まで代替が有効であることが示された。

Ardent Millsはこれに先立ち、卵を最大100%代替可能な「Egg Replace」も発表している。同製品はひよこ豆を原料としており、クッキー、マフィン、パンケーキなどで全量代替に対応する一方で、ケーキやドーナッツなどでは最大50%代替が可能とされる。現在は、パスタへの応用を視野にいれた開発が進められている

出典:Ardent Mills

Ardent Millsは2014年、ConAgra FoodsカーギルCHSの3社による合弁事業として設立された。アメリカ、カナダ、プエルトリコに40の製粉工場を有する

他社の代替カカオ製品がキャロブや豆類、ヒマワリの種、ライ麦などを原料とする中で、小麦という汎用性の高い原料を用いた「Cocoa Replace」は、製粉や製パンにおける同社の豊富な知見を背景に開発されたソリューションといえる。Foovoの調査では小麦を活用した代替カカオ原料はArdent Millsが初となる。

また、嗜好品であるチョコレート市場ではなく、ベーキング用途に特化している点も特徴的だ。カカオショックはチョコレート分野だけでなく、マフィンやブラウニーなどココア系焼菓子にも波及しつつある。こうした中、ベーキング用途に絞った代替原料の提案は、まだ例の少ないアプローチといえる。

特に、全体の一部を代替する導入ハードルの低さから、他の製粉メーカーにも同社ソリューションが波及していく可能性がある。

日本でも、日清製粉グループニップン昭和産業などが多様なベーキング用プレミックスを展開しており、こうした動きが製粉業界全体に広がっていくかどうかが注目される。

不二製油Barry Callebautなどの原料メーカーが参入する事例がある中、製粉メーカーの今後の展開が、代替カカオの次の展開を後押しする契機となるかもしれない。

 

※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。

 

関連記事

アイキャッチ画像の出典:Ardent Mills

 

関連記事

  1. 大手プロテインブランドMyproteinが精密発酵タンパク質を使…
  2. 3Dプリンターを活用する上海企業CellXが培養豚肉のサンプルを…
  3. プラントベース×精密発酵を手掛けるAll G Foodsにオース…
  4. 精密発酵により代替タンパク質を開発する企業23社
  5. 培養魚のB2B製造ソリューションの提供を目指すUmami Bio…
  6. 細胞農業で脱カカオを進めるフィンランドのチョコレートメーカーFa…
  7. フィンランドの研究チームが細胞培養コーヒー生産に関する論文を発表…
  8. サケ・マス・コイを開発する欧州初の培養魚Bluu Bioscie…

おすすめ記事

ベルギー発のFishway、細胞培養で魚の鯛由来のバイオマスを開発—乳児用食品市場に注力

Fishway共同創業者のSam Van de Velde氏 オランダ、アムステルダムにて(2024…

食料品店の救世主!食品廃棄を減らして売上を伸ばすShelf Engineが約44億円を調達

食料品店が直面する食品廃棄・在庫切れ問題を、AIを活用して解決するShelf E…

シンガポールの研究チームがウナギ細胞株と植物血清の開発に成功

シンガポールの南洋理工大学応用科学部の研究チームは、養殖できない高価値な魚種の独…

イネで乳タンパク質を開発する日本発のKinish、1.2億円のシード資金を調達

植物分子農業を活用し乳タンパク質を開発するKinishが、シードラウンドで1億2…

Wada FoodTechが約7.5億円を調達|9秒で温かい弁当を提供する自販機で欧州進出へ

「温かい弁当は、いつでもどこでも買える」が当たり前になるかもしれない。温…

フードロスに取り組む米Apeel Sciencesが約274億円を調達

フードロスに取り組む米Apeel SciencesがシリーズEラウンドで2億50…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/26 15:29時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/27 01:29時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/27 05:27時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/26 21:33時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/26 13:31時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/27 00:39時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP