出典:不二製油
動物製品に代わる代替肉や代替乳製品が国内外で広がるなか、広く料理にされているにもかかわらず、植物性の選択肢がまだ限られているのがダシである。
ダシは和食の美味しさに欠かせない素材であり、素材そのものの味を引き立てる役割を担っている。
ラーメン・うどん・そばといった麺類から、みそ汁やお吸い物などの汁物系、肉じゃがやおでんといった煮物、親子丼や炊き込みご飯といったご飯ものまで、あらゆる料理に浸透しているといっていい。
そうした中、ダシの植物性化を推進する動きとして注目されるのが、不二製油による「MIRA-Dashi(ミラダシ)」シリーズだ。
不二製油は7月23日、植物性ダシ粉末「MIRA-Dashi C820P」を発売した。大豆タンパクと油脂の技術を融合させた同社のMIRACOREを用いた、白湯タイプの粉末ダシである。
不二製油は2023年9月、ペーストや液体タイプの「MIRA-Dashi」シリーズを発売。チキン、ビーフ、白湯、カツオに加え、今年4月には貝タイプを発売。同社によると、今後、エビタイプも発売を予定している。
Foovoも5製品をダシのまま試食したが、非動物性とは思えず、特に貝タイプ、カツオタイプはそれぞれ魚介らしい風味の違いが明確に感じられた。

Foovo(佐藤)撮影
動物性スープでは、冷却時に油が固まるが、植物性ダシであれば冷やしても固まりにくい。この特性をいかし、「MIRA-Dashi」は現在開催中の大阪・関西万博でも「大阪冷やし肉ラーメン」に採用されている(提供機関は7月21日~7月27日)。
昨年11月には老舗の蕎麦店・総本家 更科堀井とカツオタイプの「MIRA-Dashi」を使用した植物性の「やさしいつゆ」を共同開発し、フジフレッシュフーズからの販売を開始した。カツオ不使用ながらも、口に含んだ瞬間からカツオのような風味が口全体に広がる仕上がりとなっている。

カツオタイプのミラダシを使用した「やさしいつゆ」 Foovo(佐藤)撮影
ラーメンは海外でも人気だが、国によっては畜肉エキスの輸入に制限がある。「ダシ」を非動物性に置き換えることで、こうした規制を回避しつつ、グローバルでの需要に対応できる可能性がある。
しかし、既存の「MIRA-Dashi」はペースト・液体形態のためチルド輸送が必要であり、輸出には制約があった。
今回のC820Pは、白湯タイプ「MIRA-Dashi C800」を粉末化したもので、常温での輸送・保管が可能になる。不二製油はプレスリリースで「植物性ダシの更なる海外展開を推進します」と述べており、海外展開を見据えた重要なステップとなる。
植物性で「満足感」を設計するMIRACORE

出典:不二製油
製品のコアとなるMIRACOREは、不二製油が植物由来でありながら動物性食品のような“満足感”を再現することを目指して2021年に開発された基盤技術となる。
動物性食品の“満足感”を、「動物性らしい風味」「油脂とタンパクが融合した感覚」「植物特有の雑味の抑制」の3要素に分解した。植物性油脂と植物性タンパク質の研究を長年つづけてきた不二製油による油脂とタンパク質のコラボレーション技術は、ダシに限らず、さまざまな植物性食品の基盤となる技術となる可能性がある。
ヴィーガンブイヨン市場は2024年に14億5,000万ドルに達し、2033年には29億3,000万ドルに達すると予測されている。
ヴィーガン、フレキシタリアンの食生活の広がり、健康志向の高まり、環境負荷軽減の視点からの非動物性食品ニーズにより、植物性ダシの市場は今後さらに拡大すると予想される。海外での日本食人気の高まりや、インバウンド需要に対応するソリューションとして、植物性ダシが国内外の市場でどのように広がりを見せるか、注目したい。
※本記事は、プレスリリースおよびミラダシの試食体験をもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:不二製油