出典:Revyve
卵の機能を代替する酵母由来タンパク質を開発するオランダ企業Revyve(リバイブ/旧称Fumi Ingredients)は今月23日、シリーズBラウンドで約2400万ユーロ(約41億円)を調達したと発表した。
ラウンドはABN AMRO Sustainable Impact FundとInvest-NLが共同で主導し、既存投資家のOost NL、Royal Cosunなども参加した。累計調達額は4,000万ユーロ(約69億円)を超えた。
Revyveは調達した資金で、卵および添加物の代替に用いる酵母由来タンパクの商用展開を加速し、生産能力を年1,600トン以上へと拡大する。
Revyveが約41億円を調達、スケールアップへ

出典:Revyve
Revyveは世界最大手のビール会社や酵母メーカーから調達した酵母をアップサイクルし、卵の機能を代替する酵母由来タンパク質を開発している。
細胞を破壊し、穏やかな低温処理によりタンパク質と食物繊維を抽出することで、タンパク質含有量の異なる2種類の原料「Vitality」・「 Adventure」を製造。得られる原料はオフホワイト色で、100%ヴィーガンであり、ニュートラルな風味だという。
同社は公式サイトでは「発酵タンパク質を扱うほとんどの企業と異なり、当社は一切発酵を行いません」と説明している。
現在は酵母のアップサイクルに注力しているが、将来的には原料ポートフォリオを拡大し、細菌、微細藻類、精密発酵で使用済みのバイオマスの有効利用も視野にいれている。
共同創業者のEdgar Suárez氏とCorjan van den Berg博士は当初、微細藻類由来の機能性成分の研究を進めていたが、コストや外観の課題から、酵母へと研究をシフトした。

出典:Revyve
両氏は代替品を試す中で、酵母が卵白のように起泡性、ゲル化、乳化といった特性を有することを発見。2019年からビール醸造所の使用済みビール酵母を用いてパンケーキやメレンゲを試作。最初のパイロット設備は中古部品を活用してワーゲニンゲン大学に設置した。2020年にはCedric Verstraeten氏をCEO(最高経営責任者)に迎えた。
2023年5月、年100トン以上の増産を目指し、東部オランダ開発公社(Oost NL)と、100年以上の歴史を持つオランダの国際協同組合・農業食品会社であるCosunから800万ユーロ(約13億9000万円)の出資を獲得。
昨年にはオランダ・ディンテロールトで同社初の生産施設「FOAK」を稼働させ、2025年の現在、35名からなる企業へと成長した。
卵特有の機能代替へ

出典:Revyve
同社の酵母タンパク質は、ベーカリー、ソース、代替肉、植物乳製品などにおいて卵の代替として利用できる。すでに欧州、イギリス、アメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリアの顧客に供給している。
具体的な導入ブランドは公表されていないが、アメリカ・カナダ・メキシコではLallemand Bio-IngredientsがRevyveの独占販売代理店となるほか、Revyveに主要原料の供給も行っている。
イギリスでは昨年10月に、原料サプライヤーのDaymer IngredientsがRevyveとの販売契約を締結した。先日には新たなパートナーシップでアイルランドにもまもなく進出することを発表した。
今年春の時点では年産最大600トンに拡張しており、今回調達した資金で、生産能力を年1,600トン以上へ拡大する予定だ。
近年、鳥インフルエンザの拡大や飼料価格の上昇により、卵の価格変動が問題となっている。2025年には家禽肉輸出で世界の約3割を占めるブラジルで、商業養鶏場で初めて高病原性鳥インフルエンザが報告された。
原料の不安定化は製造コストと供給計画に直接影響し、食品メーカーは卵機能を置換する代替原料の採用を迫られている。アメリカでは今年1月に過去最高値を記録し、国内でも東京地区では10ヵ月連続の卸売価格上昇が続いている。
Verstraeten氏は「食品メーカーは価格上昇を相殺し、持続可能性目標を達成するために卵の使用量を削減していますが、消費者が慣れ親しんでいる食感と口当たりを維持するには、卵特有の機能を再現することが不可欠です。当社の酵母タンパク質は卵の代替または削減を可能にし、手頃な価格でクリーンラベルを実現するソリューションです」とプレスリリースで述べた。
卵の機能性に着目した代替は日本でも進んでいる。
UMAMI UNITED JAPANはスクランブルエッグのような“見える卵”ではなく、ベーカリーやパンケーキ、ジェラートなどに求められる“機能”を代替する“見えない卵”の代替素材を開発している。
※本記事は、プレスリリースをもとに、Foovoの調査に基づいて独自に執筆したものです。出典が必要な情報については、記事内の該当部分にリンクを付与しています。
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アイキャッチ画像の出典:Revyve