代替プロテイン

培養シーフードを開発するShiok Meatsが資金調達、シンガポールに生産工場建設へ

 

培養シーフードを開発するシンガポールのShiok Meatsが、Woowa Bros(韓国)、CJ CheilJedang(韓国)、Vinh Hoan(ベトナム)からブリッジローンにより資金調達を実施した(調達額は非公開)。

プレスリリースによると、今回の調達でShiok Meatsの調達総額は約3000万ドル(約33億円)となる。

このラウンドには、既存投資家であるIRONGREY(韓国)、Big Idea Ventures(アメリカ/シンガポール)、Twynam Investments(オーストラリア)、Alexander Payne Living Trust(アメリカ)、Beyond Impact Advisors(欧州)、Boom Capital(アメリカ)、東洋製罐グループホールディングス(日本)、Mindshift Capital(UAE)なども参加した

Shiok Meatsはこれまでにシンガポールのスタートアップ企業を支援するベンチャーキャピタルStartup SGからの支援も受けている。

2023年までに培養シーフードをシンガポール市場に投入

出典:Shiok Meats

Shiok Meatsは2018年に設立された、細胞培養によりシーフードを開発するスタートアップ。

これまでに培養エビと培養ロブスターのプロトタイプを2019年、2020年に発表している。昨年発表した培養ロブスターのプロトタイプは世界初となる。

甲殻類から採取した細胞をバイオリアクターで培養して、本物と同じシーフード肉を生産している。昨年の報道では、今後はカニのプロトタイプも開発予定であるとしていた。

Shiok Meatsは調達した資金を、シンガポールの生産工場建設にあてる。

「今後1年から1年半は重要です。調達した資金で、研究開発を進め、シンガポールに最先端の生産施設を建設します。

オペレーション、協業を拡大し、代替タンパク質業界の中で水平統合・垂直統合にも取り組んでいきます」(共同創業者・CEOのSandhya Sriram博士)

Shiok Meatsは2023年までにシンガポールでの市販化を目指している。

シーフードでも細胞農業が加熱

Shiok Meatsの共同創業者Sandhya Sriram博士 (左)とKa Yi Ling氏(右)

代替シーフードは代替肉より参入スピードで遅れをとっていたが、最近では代替シーフードも研究開発・資金調達のフェーズから、実証プラント建設・許認可取得のフェーズに移りつつある

培養サーモンを開発するWildtype(アメリカ)は試食ができる実証プラントの稼働をまもなく開始する。

培養魚を開発するAvant Meats(香港)はシンガポールに研究施設・実証プラントの建設を発表。同社はシンガポール経済開発庁(EDB)から支援を受けており、Shiok Meatsと並ぶ、シンガポールを立地に培養シーフードに取り組む企業となる。

BlueNalu(アメリカ)は年初に60億円を超える資金調達を実施し、年内に実証プラントの完成を目指している。

Finless Foods(アメリカ)は来年、アメリカのレストランで培養マグロの販売に向けて、承認申請を進めている。

加速の場となるシンガポール

シンガポールは都市国家であり、農業用地は国土のわずか1%。

同国の食料自給率は10%で、これまで食料の90%を輸入に頼っていた。しかし、現在は細胞から作る培養肉や、アグテックに取り組む企業に積極的に投資している。

現に、世界に先駆けて培養肉の販売を許可したのもシンガポールだ。

その背景には、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の食品サプライチェーンが遮断されたことが大きく関係する。

世界で初めて発売されたイート・ジャストの培養肉 出典:イート・ジャスト

農業用地が国土のわずか1%であるシンガポールは、フードテック・アグテックを次の成長産業と位置付け、2030年までに食料自給率を30%まで引き上げる新たな目標を打ち出している

こうした成長戦略に乗じて、シンガポールに拠点を構えることは、スタートアップ企業が加速するうえで重要な戦略となる。

培養シーフード以外でも、アニマルフリーな乳製品を開発するパーフェクトデイ、培養肉・植物卵を手掛けるイート・ジャストもシンガポールに生産工場建設を発表している。

Shiok Meatsが今回調達した金額は明らかにされていないが、クランチベースにあるデータと同社が公表している調達総額の差額から予想すると、約1000万ドル(約11億円)と考えられる。

 

参考記事

Shiok Meats Closes Bridge Funding Round, Plans R&D Facility for Cultivated Seafood

Shiok Meats raises bridge funding from notable strategic investors, as they build the first state-of-the-art production facility in Singapore

 

おすすめ記事

アイキャッチ画像の出典:Shiok Meats

 

関連記事

  1. ビヨンドミートが中国で豚ひき肉Beyond Porkを期間限定で…
  2. スイスの食品大手ジボダン、ビューラー、ミグロが共同で培養肉の実証…
  3. シンガポール発、Fattastic Technologiesのオ…
  4. イート・ジャスト(Eat Just)の培養肉が世界で初めてシンガ…
  5. ベゾス・アース・ファンド、ノースカロライナ州立大学に代替タンパク…
  6. ノルウェー研究評議会が5年間の細胞農業プロジェクトに出資、培養肉…
  7. 米Omeatがロサンゼルスで培養肉のパイロット工場を開設
  8. 英培養肉企業Higher Steaksが約43億円を調達、社名を…

おすすめ記事

Vowがシンガポールで培養ウズラ肉の販売認可を取得、今月レストランで限定提供

細胞性食品とも呼ばれる培養肉は、動物を犠牲にすることなく動物肉を生産でき、環境負…

イスラエル大手食品会社Tnuva、代替タンパク質特化のR&Dセンター設立へ

イスラエル大手食品会社Tnuva(ツヌバ)は代替タンパク質分野の取り組みを強化す…

Hyper-Robotics、「箱」の中でロボットがピザを作る完全自動化レストランをローンチ

イスラエルで完全自律型のロボットレストランを開発するHyper-Robotics…

イスラエルのSuperMeat、培養肉の生産コスト削減を発表-100gあたり約400円で商用化に一歩前進

イスラエルの培養肉企業スーパーミート(SuperMeat)は今月、アニマルフリー…

菌糸体で代替ステーキ肉を開発する英Adamo Foodsが約2.7億円を調達

菌糸体から代替肉を作るイギリスのスタートアップ企業Adamo Foodsは先月、…

イスラエルのYO-Eggが黄身と白身に分かれた代替卵を開発

代替卵に新たなトレンドが生まれつつある。アメリカのJUST Eggに代表…

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

最新記事

▼メルマガ登録はこちらから▼

フードテックの海外ニュースを週1回まとめてお届けしております。

 

ご登録いただいた方には、国内外の培養肉開発に取り組む企業101社をまとめたレポート(全23ページ)を無料でお配りしております(2022年3月更新版)。

 

最新のフードテックニュースを逃したくない方におすすめです。

 

 

▶メールマガジン登録はこちらから

▼聞き流しフードテックニュース▼

 

 

 

Foovo Deepのご案内

Foovoの記事作成方針に関しまして

精密発酵レポート・好評販売中

マイコプロテイン・菌糸体タンパク質レポート好評販売中

2025年・培養魚企業レポート販売開始

【FoovoBridge】日本のフードテックニュースを海外へ発信する英語サイト

フードテックを理解するのに役立つ書籍

夢の細胞農業 培養肉を創る

夢の細胞農業 培養肉を創る

羽生雄毅
1,707円(07/21 15:28時点)
Amazonの情報を掲載しています
培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

培養肉とは何か? (岩波ブックレット)

竹内 昌治, 日比野 愛子
572円(07/22 01:28時点)
発売日: 2022/12/06
Amazonの情報を掲載しています
フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

田中宏隆, 岡田亜希子, 瀬川明秀
1,782円(07/21 05:26時点)
発売日: 2020/07/23
Amazonの情報を掲載しています
マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

マッキンゼーが読み解く食と農の未来 (日本経済新聞出版)

アンドレ・アンドニアン, 川西剛史, 山田唯人
1,980円(07/21 21:32時点)
発売日: 2020/08/22
Amazonの情報を掲載しています
クリーンミート 培養肉が世界を変える

クリーンミート 培養肉が世界を変える

ポール・シャピロ
1,782円(07/21 13:31時点)
発売日: 2020/01/09
Amazonの情報を掲載しています
培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

培養肉の入門書: 趣味・興味・投資・事業の入り口に 培養肉シリーズ

石井金子
698円(07/22 00:37時点)
発売日: 2022/02/20
Amazonの情報を掲載しています
PAGE TOP